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その悪役令嬢、天下無双の武神になりて。  作者: 卑下流
第一章:サレス・レディールは死んだ。
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基本の3色




————数時間前————


元婚約者をフッた後、一泊させて貰い

ラモ吉が寝ていたので

そのままレディール家へと帰って来た。


途中、フルーゴナの街で暑苦しい騎士に

ラウルをレディール辺境伯の正式な養子にするよう

嘆願書を届けておいたので

まあ何らかのアクションが近日中にあるだろう。


わざわざ白耀騎士団を経由して

父に連絡しているのは、


屋敷には直結の連絡網を置かなかった事より

出来るだけサレスと距離を置こうとしていると

推測されるからだ。


この方が辺境伯の胸中も

幾何(いくばく)か楽だろうし。


しかし直結の連絡網というのは素晴らしいな。

我が屋敷にも是非とも欲しい。


「それでサレスお嬢様、あの少年は?」


「あちら、新しく私の弟になる騎士のラウル君です」


「えええぇ…

 その、ノデュス家との婚約の方は

 問題なく解消されたのですよね…?

 

 弟というのは何かの比喩でしょうか?」


「いや、あの子はマジで弟だよ」


フローゼは眼鏡を外した。

そして清潔な布でしっかりとレンズを拭き

もう一度掛けた。


「え、隠し子ですか」


「隠し子だよ」


「…」


「冗談だ、父の養子になる予定なので弟だ」


ようやく本当の事を打ち明けると

曇っていたフローゼの顔に穏やかさが戻った。


「もう、そのご冗談はあまり笑えませんよ?」


「ごめんごめん♪」


「……」


取り敢えず納得してくれたフローゼと共に

新しい弟の方を見る。


「前が見えない…」


「我が騎士よ?

 デクス程度のおっぱいに悩殺されていては

 私を守り切る事は出来んぞー?」


「僕、魔女様の騎士なんだけど…」


「騎士なら主だけでなく

 皆を守らなきゃな」


「それはそうかも…」


デクスとシニスに

綺麗にサンドイッチにされている。


デクスの豊満な胸に顔を埋めて

(られている気もする)無抵抗なラウル。


「そういうわけで

 皆の為にどっかの令嬢に

 性的に食べられてくるんだぞー?


 出来れば記憶魔法を使って

 映像として残しておいて♪」


「せーてきに食べる?」


「これはコラテラルダメージ…

 仕方のない事なんだな…」


どうやら早速

愉快な双子には気に入られたらしい。


「ウチでもやっていけそうだな」


「えええぇ…

 2人とも!!

 程々にしておきなさい。

 ラウル様が可哀そうよ」


「「畏まりました、フローゼ様」」


フローゼのいう事だけは素直に聞くのだが

2人にとってフローゼはどんな存在なのだろうか。


そうだ、フローゼと言えば。


「フローゼ、私に状態異常の

 魔法を教えてくれないか?」


「構いませんが…その、白魔法というのは

 一朝一夕では習得出来ませんが

 それでもよろしいですか?お嬢様」


「構わないとも!」


「しろまほー?」


胸に顔を埋めたままのラウルが

興味深そうに聞くと、


ラウルに抱きついている

シニスが得意げに答えた。


「魔法は基本的に赤・青・緑の3つだけで

 これらを組み合わせて

 より強力な魔法を練り込むのさ!」


デクスも続ける。


「ちなみに白魔法は基本の3色に加えて

 橙・黄・藍・紫の混色魔法も

 練り込まないといけない

 超高度な魔法だな」


なるほど、それは畢竟…


「全ての色の魔法に

 精通しなければならないという事か」


「左様です、お嬢様」


「魔女様って全部の魔法が使えるわけじゃ

 ないんだね、意外」


「まさか~!!

 普通白魔法ってのは

 魔法適正A以上の才能ある奴が


 生涯を掛けてようやく

 使えるかどうかって代物だぞ~?


 適正が最低クラスのEのサレス嬢では

 逆立ちしたって無理さ」


なるほど、サ(・)レ(・)ス(・)は魔法が使えなかったのか。


「私は色々とありまして

 白魔法のみ魔法を行使する事が出来ます」


「魔(・)法(・)だけに…色(・)々(・)ね…」


「デクス、頼めますか?」


「イエス、マム」


悲しそうな顔のラウルを置いて

俺の前で何かの詠唱を始めるデクス。


いつだかの盗賊がやっていた奴とは

内容が全然違っている。


詠唱が終わると、

彼女の綺麗な髪が微かに揺れ

周辺の空間が僅かに震えた。


「魔法学校にすら通っていない

 サレス嬢にはまず基本の3色から覚えてもらうな。


 まずは簡単な赤から」


デクスの手から炎が踊り出し

火の玉となって彼女の周りをフワフワと浮いている。


「ではサレス嬢、私に続け…」


「火の玉を出せば良いのか。

 …これで大丈夫か?」


俺はデクスが出したのと全く同じ大きさと色の

火の玉をいくつか想像して手のひらから打ち出した。


「な、無詠唱で!?

 それも最小限の魔力で…」


「ありえません!

 儀式も無しに人間の魔法適正は上がらない筈!!」


「サレス嬢、精神と時の部屋で

 修行でもして来たのかな~?」


「温泉には入ったよ?

 マッチョがいたところ」


サレスの肉体には初めから

今と同じだけの魔力が備わっていた。


肉体の内なる力に意識を集中すれば

簡単に使う事が出来たので、

魔力を使う力…魔法適正は

精神の影響を強く受けるのかもしれない。


サレス自身の魔法適正が低かったのは

彼女の精神が健やかでは無かったから

という可能性がある。


つまり、本来の適正は高かったのだ。


デクスは動揺を消し去ると

続けて水の塊を虚空に形作った。


「では次は青だ。

 やってみな、サレス嬢」


「ほい」


「信じられない…

 まるで神童…

 学校にも行っていない少女が独学で…」


先程と同じく

デクスの作った見本と全く同じモノを顕現させた。


「…できない」


手を前に突き出して念じていたラウルの手から

水や炎が繰り出される事は無かった。


「普通はそういう感じなんだよ~?

 我が騎士は詠唱の呪文を覚えるところからだな」


「魔女様の騎士だってば」


デクスは腕を組んで

誇らしげな笑みを浮かべた。


「やるな、サレス嬢。

 流石は私の一番弟子だな!

 師として鼻が高いな」


「弟子入りした覚えはないが

 ありがとう、師匠」


「では続いて基本の3色の中では

 最も難しい緑だ」


師匠の右手が淡く光ったかと思うと

地面から色彩豊かな花々が咲き乱れ、


暖かな風が俺の髪をクシャクシャと丸め

あっという間にアフロにされてしまった。


「緑は生命力や自然の力の顕現だ。

 これは流石に、増して無詠唱だなんて…」


「そい」


「!?!?!?」


これも赤・青の時と同じく

そっくりそのまま返して

デクスもアフロにしてやった。


足元には何故か

色とりどりのヒガンバナが咲いてしまった。


「私たちは今、

 歴史の目撃者と

 なっているのかもしれませんね…」


フローゼはいつになく

険しくも高揚とした表情で

眼鏡をくいっと上げた。


デクスは小さく笑うと

俺と彼女の髪型を緑魔法で元に戻した。


「マジで神話級の才覚じゃないか、サレス嬢」


「お褒め頂き恐悦至極です、師匠」


「もしかしたら…いや!

 今のお前なら白魔法を使えるかもな?

 

 サレス嬢、手元で今までの魔法を

 混ぜ合わせるイメージを浮かべな」


「なるほど…こうか?」


言われたままに赤・青・緑の3色の魔力を

手の中で混ぜ合わせていくと

次第に粘性のある黒い魔力へと変化して来た。


そして目の前の空間がぱっくりと

口を開いていた。


それを見ていたフローゼとシニス・デクスは

大慌てで俺を制止し始めた。


「ま、待てサレス嬢!!

 今すぐその魔力を発散させな!!!」


「やばいよ…やばいよ…」


「お嬢様!!」


確かに気持ちいいモノでもないが

そんなに危ないモノじゃないと

直感が告げている。


「ん?何か中に沈んでる…誰か、か??」


俺は黒い魔力を纏わせた両手を

歪んだ黒い空間の中へと突っ込んで

そこでまったりしていたソレを引っ張り出した。


「ダメだ、サレス嬢!?」


「なんか出た」


————


そんな紆余曲折を経て

召喚?した黒い髪に鮮血のような双眸の少年は

自らを『ファウスト』だと名乗った。













ホースマンは揃った…(言いたかっただけ)


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