罰ゲーム
「ここが客室だ、好きに使ってくれて良い」
「メチャクチャ綺麗だな」
「当然だろう?
ノデュス家の屋敷なのだから当然だ」
洗練されながらも数多の装飾がなされ
家具のどれもが工芸品のような仕上がり。
屋敷の主人が使っていると言われても
不思議ではない程に豪華だ。
「食事は19時を予定してる。
それまでは自由にしていると良い!
なんなら、父さんの仕上げた宝石でも
見せてやろうか??」
「ありがたい申し出だが遠慮しておこう。
私の騎士はつい先程雇ったばかりでな?
鍛えておきたいのだ」
「そ、そうか…
ならば、俺も同行しよう」
驚いた顔をしたと思えば
直ぐに不敵な顔を浮かべるラモラ。
面白い奴だ。
「ラモ吉、
何処か広くて人が来ない場所はあるか?」
「それなら修練場が良いだろう!
ついて来い、サレス」
スキップしながら前を行くラモ吉。
何か良いことでもあったのだろうか?
鼻歌まで口ずさんで楽しそうにしている。
暫く屋敷の中を歩いていると
3人のメイド達に囲まれているラウルが見えた。
頬を突かれたり思いっきり抱きしめられたり
何やら偉く気に入られている様に見える。
暫くして距離が近くなると
此方に気付いて私のところに戻ってきた。
「魔女様、ただいま」
「おかえり、ラウル。
何していたんだ?」
「お姉ちゃん達に急に絡まれた!
『カワイイ〜♡』とか『ゲッヘッヘ』って
言ってたけど、これって人助け??」
「うーん、まあ見方によってそうかな」
此方を見つめるメイド達は
泣きながらハンカチを咥えている。
取り敢えず一礼して
随分と先行しているラモ吉を追った。
「ここが修練場だ!
昔は陛下と父さんが良く使っていたらしい」
「へーか?」
「王様の事だよ」
「それでは
どこからでも掛かってくると良い!」
剣を抜いて構えるラモ吉。
「…別に型と掛かり稽古やるだけだから
真剣は使わないぞ??」
「そ、そうか?
よし、では木剣を持ってくるので少し待て」
「いや、その必要は無い。
ベンKとラウルの戦いを見てる間に
1つ使える魔法を増やしておいたんだ」
手元に木刀をイメージして
複数の魔力を練り込んでいく。
見る見る内にサレスの手の内で
木刀が形作られた。
「な、無詠唱で物質の生成!?」
「これ、魔女様の剣と同じ形だ」
出来た一本をラウルに手渡して
続けて左右の手に一本ずつ生成した。
「ラモ吉も使うか?
両刃剣とは随分勝手が違うが」
「…あっ、あぁ。
ハリボテじゃない、本物の樫の木だ」
俺の作った木刀を叩いたり触ったりして
感触を確かめるラモ吉の目は大きく開かれていた。
木刀を見るのは初めてなのだろう。
「うん、重さも想像した通りだ。
では、ラモ吉からやろう」
「…もしかして、君が相手するのか?
男の僕を??」
「あぁ、そうだが?」
ニヤつくラモ吉。
「いいだろう、ただし1つ条件がある」
「条件?」
人差し指を立て自信満々の顔を浮かべているが
何か面白い事でも浮かんだのだろうか?
「俺が君に勝ったら今日の夜から朝まで
俺の枕になって貰おう!!」
稽古に勝ち負けもクソも無いと思うのだが…
「そんなに私の膝枕が良かったのか?」
顔を赤らめるラモ吉。
また深呼吸をしてから強気な態度に戻った。
「全然違うぜ!!
あの体勢だと足が段々と痺れてくるだろう?
ただそれだけ、罰ゲームてわけさ」
「私が勝ったら?」
「え、サレスさんが勝ったら、ですか??」
交換条件を出されたのが意外だったのか
急に敬語になるラモ吉。
「す、好きな条件を言うが良い!
金でも宝石でも好きな物をやろう」
「じゃ、私に負けたら屋敷の外を50周走り込みだ」
「はぁっ!!?
50周!?!?」
「罰ゲームだと自分で言ったろう?」
青ざめたかと思うと
深呼吸して微笑むラモ吉。
あれが彼の落ち着く時のルーティンらしい。
「互いにおでこに1発貰ったら負けとしよう」
「良いだろう!!!
では、行くぞサレス!!!
はあああああああ」
隙だらけの大振りを打ってくるラモ吉。
稽古なので
1番インパクトが乗る瞬間に受けてやる。
ガコッと大きな音を立て木刀同士がぶつかり合う。
打ってきたはずのラモ吉は反動で腕が痺れたのか
木刀を離してしまった。
「打ち込みってこんなに響くもんなのか!?
というかなんで君は平気そうなんだ??」
「慣れてるから」
「その男装は見かけ倒しというわけじゃ
無さそうだな…ってぇ…よし!!
まだまだ行くぞぉ!!」
今度は連撃で木刀を打ってくるラモラ。
右に、左に、右に…
「脇が空いてるし、さっきより
スピードが落ちてるぞ??」
「わ、分かってるさ!!
たぁっ!!」
一瞬力が入るがやはり腕が痺れるのか
すぐに抜けていってしまう。
「そんなんじゃいつまで経っても
私の膝枕にはありつけないぞー?」
「う、あああああああ!!!」
雄叫びを上げ肩で息をしながら
全霊を込めた連撃を繰り出してくるラモ吉。
「剣など初めて振ったのだろう?
そろそろ頃合いだ」
「え…?…アグッ…!!?」
渾身の一撃を弾き
上体を崩したラモ吉のガラ空きおでこに
コツンと木刀を当てた。
「ゼェ…ハァ…ゼェ…ハァ…
つ、強すぎるだろ…ハァ…」
「お疲れ。
慣れない事によくぞ真面目に取り組んだな!」
頭を撫でてやるとラモラは
微かに頬の赤みを増し
目を輝かせた。
「サレス…!」
「少し休んだら外周だ♪」
「ゔぁ…」
どういう音なんだ、それは。
「次、ラウル」
「うん、やっと慣れてきた」
俺がラモ吉と戯れている内に
素振りをしていたらしく
おでこから汗が流れていた。
「遠慮は要らない
全力で打ってきなさい!」
「うん!
魔女様…行くよ!」
「え、消えた!?
何かの魔法か??!」
ラモ吉の言ってる事は間違っている。
クラウチングスタートの様に地面を蹴って
俺の真後ろに飛んで来ただけだ。
背後からの首を狙っての鋭い突きを
木刀で重心を乗せていなす。
「!!
ぜんぜん手応えがなかった!!
これも魔法?」
「ただちょっと逸らしただけだよ」
「いつのまにあんなところに!?
また消えた!??」
今度は視界の盲点からの打ち込みや
足元を狙っての横薙ぎ、
下腹部を狙ってのカウンターと
工夫を凝らして弱点を突いてくる。
「木で出来た剣なのに
火花が散ってる…!?」
四方八方から高速で飛んでくるラウルの
打ち込むを受ける度に摩擦で火花が散る。
暫くして絶え間なく続いていた攻撃が途絶え
ラウルの気配が消えた。
どうやら俺の頭上にいる。
「…!!」
風を切る木刀の音が今までと違う。
この一撃で決めたいらしい。
「やはり筋が良いな、ラウルは」
「な!?
バカ、なんで剣を捨てるんだ?!?!」
俺は剣を捨てると
左肩目掛けて飛んで来たラウルの突きを僅かに躱し
そのままの木刀に右回転の力を加えた。
「え…?!?!」
「何だ!?
何が起きたんだ!!?」
ラウルの姿勢が空中で崩れて
落ちてきたところをお姫様だっこでキャッチ。
と同時に木刀が地面に刺さった。
「れ、レベルが違いすぎる…!!」
「一歩も動かせられなかった…」
「まだまだ君は強くなれるんだ?
そう落ち込む事はない」
ベンKの戦い方から随分と学んでいる。
ラウルにはどうやらかなりの剣才があるようだ。
「…クソっ…」
俯いて土を掴むラモ吉。
「まだ走りにいってなかったのか?」
「…行ってきます」
「ラウルは少し休憩したらもう一回な」
「分かった!」
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「板長、板長はおらんか!?」
「はい、こちらに」
「ウチで一番良い皿は作れるな!!?」
「え、ええ。
勿論作れますが…
『レディール家の魔女めには
豚の餌を喰わせてやる!』と
仰っていませんでしたか??」
「バカ!!
あれは世界一強い令嬢だ!!
我がノデュス家の総力を以てして
彼女の腹を満たすのだ!!!
良いな!!??」
「ええええ!?
か、かしこまりました!!!!
それはそうと、何故泣かれているのですか…?」
「今から屋敷の周りを50周してくるから
ディナーに間に合うのか
かなり怪しいのさ…よよよ…」
「は、はぁ…?」
我がノデュス家の皿は
凝り性のお父様が満足する品ばかりだ。
食べた者はたちまち口元を緩ませる。
「見たかった…サレスの笑顔…」
…いや、まだ間に合わないというわけでは無い。
全速前進で駆け抜ければ間に合うやも。
「絶対に見てやる!!
君の笑顔を!!
はぁああああああ!!」
「いってらっしゃいませ…?
あんな熱意のあるラモラ様は初めて見たな…」
やってやるさ!!!
俺は夕陽の下、屋敷の周りを走り出した。
————————
よくよく考えると反逆のルルーシュって
悪役令嬢モノの先駆けですよね。
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