傾国⑪
久本佳奈は学生最後の年、木村の次の主将に選ばれた。関東女子学生選手権では連覇ならず、敗者復活戦で辛くも全日本への出場権を手に入れる。
翌々月、母校の望叡学園高校で3週間の教育実習で香川に帰った。教育実習と全日本女子剣道選手権大会香川県予選を済ませると、慌ただしく上京し全日本女子学生選手権に臨む
準決勝戦、日村(恵蘭大学)に対して初太刀でドウに飛び込み先制すると、残り時間も悠々とやり過ごして勝利した。
決勝で対する田浦は九州チャンピオン。長身な割に剣先の扱いが器用な田浦と小柄で機敏な佳奈との対戦は活発な技のやり取りで進んでいく。
終盤、両社が機会と見て同時にメンに跳ぶ。旗は赤が2つに白1つ。やがて時間になり田浦の優勝が決定した。佳奈、惜しかった。執念は十分だったが、上背で一つ足りなかった。
9月、全日本女子剣道選手権大会が開催された。4度目の出場で初の入賞を狙う。また、今年から予選リーグは撤廃され、初めからトーナメント形式で争われる。
1回戦で福井の得能、2回戦で宮崎の真田、3回戦で東京の竹部をいずれも延長の末にコテを奪ってベスト8に進出。
この大会、準々決勝戦からは中央の1コートで一組ずつ試合をする。
「これなら見つけてくれるよね」
学生大会は出場選手が多すぎて目で追えないと文句を言っていた両親に向けて、口の中で得意気に呟いた。
迎えるは東京の木村裕子。昨年本庄大学を卒業した木村は警視庁に奉職し、いま佳奈の前に対峙している。
激戦区の東京都予選を勝ち上がっただけあって木村の地力は昨年のものとは違う。佳奈が先をとれずに苦し紛れにコテに出ようとする出頭をメンに抑えれる。その後も打つ手が見つかることなく制限時間を迎えた。
今年も本庄大学は関東学生優勝大会を制することができたが、全日本学生優勝大会の決勝でまたしても佐賀教育大学の前に屈した。佐賀教育大学は史上初の4連覇を達成した。
結局、佳奈は4年間で一度も日本一を獲ることができなかった。




