男子高校生だし魔がさすこともあるんだよな
さて、いろいろあったが僕は勇士に全員分の朝飯を作らせ、とりあえず心身ともにボコボコにしてやった。
あいつ、物体召喚なんて高度な魔法使っても全然魔力が尽きる気配がなかったのでかなり手応えはあった。
実はこいつエリートなのだ。
ちなみにバカップルの方は
「みきちゃん、俺が守ってみせるよ!」
「きゃー、カッコイイ!」
とかやってたのでやる気が失せた。
むしろ追加攻撃を食らった気分だ。
「しゃ、しゃて、と」
勇士は首元にあるメディク系が登録された十字架のペンダントに触れた。
空気がふわりと揺れる。
すると、次の瞬間には元の綺麗な顔に戻った。
綺麗な顔だろ、コイツ、実は厨二病なんだぜ。
「お前、総理大臣に表彰されたところでいっこも変わんねぇよな、悪い意味で」
「悪い意味でってどういうことだよ?俺は気軽に勇者続けてるだけだよ」
「いや、そういうところだよ。ほら、テレビの首相もきっと心で泣いてるぞ?」
テレビには二期目を任された若い首相がニコニコしながら、国民の皆様へのお約束をのたまっていた。
また出てるよ、どんだけ人気なんだよ。
『私、水無月 深夜、全力を持って今期も務めさせていた抱きます。今期の重点は、魔法問題、外交問題、貿易…………』
「ふん、知るかよ、俺は好きなことやってただけだ。無駄に頭を撫でられた時は寒気がしたぜ」
そんなことがあったのか。意外とキモいなフレッシュ総理。
「あー、ちくしょう、嫌なこと思い出しちまった。明伸、気分転換に情報交換と行こうか?」
どうやら、トラウマを突いてしまったらしい。以後気をつけよう。
「ふむ。いいだろう。バカップルは自分たちのことしか見えていないようだし、構わんよ」
「用意はいいな?」
「いつでも来い!!!」
大丈夫です、喧嘩はしません。
ただ、また勇士は十字架に手をかけた。
お得意の演出だろう。
目を瞑んな、きめぇ。
「まずは僕のターン!!!三組の平岡さんは実は彼氏いると見せかけて今はフリーだ!綿密な俺の調査によると好物が綿菓子で、放課後はたまに駄菓子屋さんによるのが趣味だそうだ!」
「うぐっ!?あの手の届きそうで届かない系の平岡さんだと!?まさかの新事実は結構なパワーだぜ!!!それに放課後までに及ぶ濃密なストーキング、さすがは変態だぜ!」
「テメェ、さてはケンカを売ってるな!?ちなみにこれは全てガールズトークを小耳に挟んだだけだからな!」
「ドウドウ、落ち着け!次は俺のターン!六組大阪クラスの山本さんだ!あの子の好みのタイプは草食系メガネ男子というオタクの御用達だったぜ!今までの彼氏歴を調べてもみんな冴えないオタクばっかりだったのだ!明伸、お前も今狙いどきだぜ!彼女もフリーだ!!!」
「きっさま!!!山本さんをオタクハンターとは何事だ!僕たちメガネーずに取っては光輝く希望そのものなんだからな!」
「ふん、明伸、吠えていないで次の情報を渡したらどうだ!?」
「チィ、次は渡辺さんだ!あの子は実はフリーではなかったので勇士は狙うのをやめるのをおすすめするぜ!彼氏はなんとバスケ部の先輩でさらにキャプテン、勝ち目はねぇよ!」
「グワァァァ!!!?ちくしょう!!!いいかなって思ってたのにぃぃぃ」
「はっ、ざまぁみやがれクソ厨二病が!」
「言ってくれるぅ……。次の情報だ!赤崎さんだけどな」
「ちょっと待て」
「なんだよ?」
「きよりは無しだ」
「はぁ?クラスで一番可愛くておっとりしててこの上なく癒されるあの赤崎さんについて調べてはいけないというのか!?」
「確かにそうだが僕の幼なじみに手を出させん」
「ふん、お前が赤崎さんを好きだろうが俺には全く関係のないことだ!俺もちょうど気になっていたところだからな!」
「うぐぐ……」
確かにきよりを好きなのは勇士の自由かもしれない。
しかし……。
こんなイケメンエリートを相手にして勝てる気がしないのだ。
厨二病だけど。
「まぁ、いい、今回はやめておいてやる!そんで俺は最後だがお前は?」
「あ、あぁ。最後に一つ在るぞ」
「なんだ?」
「転校生の話だ。大阪方面のクラスで転校生が来るらしい。それもまさに天使のごとき美しさだそうだ。どうだ、冷やかしに観に行くか?」
「よし行こう、すぐ行こう」
きよりが気になってるんじゃなかったのか……?
まぁ、僕としてはライバルが減るだけ楽になるんだが。
僕たちは一気に机の上の朝食を平らげると階段を僕は駆け上り、勇士は瞬間移動を使い部屋に戻った。
そして僕たちは猛る龍の如く着替えを済ませて玄関にたどり着く。
「おせぇぞ明伸」
「うるせぇ、瞬間移動なんて反則だろ?」
僕は不平を零すが鼻で笑われた。ちくしょう才能があるからっていい気になりやがって。
というか瞬間移動だけで、何人分の魔力が吹き飛ぶと思ってんだよ。
これだからエリートは困る。
「んー、でも、お前の速度に合わせると学校につくのが遅くなっちまうな」
「おい、お前、何考えてんだ?まさか……」
「お前ごと瞬間移動すりゃ問題解決じゃん!」
待て、待ってくれ!?
瞬間移動は失敗すると体がバラけるんだぞ!?
二人分の質量なんて移動させたら一体どんな魔力がいるかもわかってんだろうな!?
「ちょ、おま、絶対やめろよ……」
「だいじょぶ、だいじょぶー」
勇士が僕の肩に触れて指を鳴らす。
目の前の景色が切り替わった。
まるでチャンネルを変えるように。
僕は恐怖から解放されて地面に崩れ落ちた。
教室の床の硬さが心地よい。
人間は地面に足をつけて歩くべき動物なのだ。
そうに決まってる……。
「お、おい勇士」
僕はそこでようやく気付いたことがある。
「なんだ?」
勇士はさも当然というように超然としているがどうやらそれには気づいていないようだった。
なので僕は、簡潔に告げる。
「荷物忘れてる」
「あっ……」




