僕は再び真人間になった。
一
泣いた。
これ以上ないくらいに泣いた。
親も、兄弟も、親戚も、友達も、先生も、知り合いも、みんな死んだ。
郵便受けに入っていた、一枚の紙切れに印刷された文字列に、僕は不安が絶望に変わったことを確信した。
僕は一人、暗い部屋の中に取り残されていた。
叔父に初めて連れて来られたときの高揚感は消え失せていた。
広い空間は無駄に僕の孤独を深めた。無機質な照明には、何の温かみもなかった。
チャイムが鳴る。
これで何度目だろうか?
生活の気配のする、関東地方在住の持ち主の家だ。
きっと何かを期待しているのだ。
関東地方に籍を置きながらも奇跡的に生き延びた希望とやらを探しているのだ。
だが、僕は出なかった。
「おーーい!!!あっきー!!!あっきーーー!出てきてよぉぉぉ!!!私だよぉぉぉ!!!」
聞き覚えのある声がした。
直後、僕は直感した。あぁ、彼女だけだ。
彼女だけしか、もう僕の知り合いはいないのだ。
そうやって僕は重くなった口に全力を込めて言った。
名無しの誰かに、大声を出した。
「きよりー!!!ちょっと待ってろ!!!開けるから!!!」
それから僕は徐々に僕を取り戻して行った。
何もないはずの僕に、何かが満ちた。
そして、僕は知った。
今まで感じたことのなかった心の色を。
行間
『死亡通知書』
僕を絶望に陥れた紙切れだ。特に意味はない。
『新しいくらしの見つけ方』
厄災孤児の救済法が成立した後に一挙に配られたパンフレットだった。
四人一組のシェアハウスに子供達を押し込み、学校に通わせるというだけの内容だったが、孤独な僕らに、この措置は非常にいい効果をもたらすと期待されていた。
『神の道標』
僕が叔父さんから借りていた家を出る前に押しかけた宗教家が僕に押し付けたものだ。
例の関東での爆発の前に、子供達が列をなして大阪へと歩みを進めたという奇跡が起こったらしい。
一部の学者は集団ヒステリーが起こした奇跡だと言っていたが、このおじさまは違った。
これは全て神の導きなのだそうだ。
だが、布教する相手が悪かったな。
こんなに酷い目にあった直後の僕に神様が信じられるわけがないじゃないか。
僕は机に置かれたゴミを眺めていた。
シェアハウスにはなんとか入居の手続きはできた。
あの悲劇は今では関東大厄災と呼ばれ、歴史の一ページに刻まれることとなったらしい。
人口は四分の三にまで減ったそうだ。
しかし、そんな逆境の中でも、未だに僕は息をして地面に足をつけ、普通の高校へ普通に通えている。




