一緒にご飯を食べる
「空風さん! ご飯を一緒に食べましょう!」
「いや普通に一人で食べるつもりだけど」
昼休み。俺は妹が作ってきたお弁当を食べようとしていると夢春が俺に話し掛けてきた。
確かに俺と夢春は友達になった。でも友達になったからっていきなり一緒に食べるのは何だか緊張する。
それに俺はともかく夢春には沢山の友達がいる。
当然陰キャの俺と食事をするより明るい友達と食事をした方が夢春の為にもなると思った。
「折角友達になれたのですし一緒に食べませんか?」
「食べない」
「どうしてですか?」
「いや……どうしてって言われてもなぁ」
素直に夢春と一緒に食べると緊張するからなんて言うのは恥ずかしいので言えるわけがない。
「そういうお前は俺なんかと一緒に食べていいのか?」
「むしろ何の問題が?」
「お前は俺と違って友達多いだろ。普通に他の友達と食べろよ」
「勿論他の友達とも食事をしたりしますよ。今日はあの友達とこの日はあの子とみたいに……色んな友達とご飯を食べています。そして今日は空風さんと一緒にご飯を食べたいので誘っているんです」
「お前の友達関係バイキング形式かよ」
「ふふっ、そうですよ。私こう見えて女友達が多いんです。今日はどのお友達と一緒にごはんを食べようかなんて考えながらお昼ごはんを食べる人を決めているんです」
そういえばお昼休み始まってすぐ夢春は他の女の子たちと何か話していたな。
そして女の子たちは何故か嬉しそうな声? みたいなのをあげて彼女を送り出したっけ。
「お前なんて言って友達との食事断ったんだ?」
「普通に空風さんと食事をするので今日は一緒に食べれませんと言っただけですよ。すると他の友達たちが頑張ってねって何故か応援してくれました。一緒にご飯を食べるだけなのにどうして応援をしてくれたのでしょうか」
「お前……それ勘違いされてるんじゃないのか?」
「何の勘違いでしょうか」
「いや……何でもない」
恋人と勘違いしてるんじゃないか。そう口に仕掛けて辞める。
そんなこと言ったら何かむしろ俺の方が自意識過剰に思われるかもしれない。
それに俺みたいな陰キャでは陽キャと言えるであろう彼女とは釣り合わない。
ゆえにその女子たちも何も本気で俺と夢春が付き合っているとは思っていないだろう。多分。
「というか俺はそもそも食べるとは言っていない」
「そんなに私と食べるのが嫌なのですか?」
しょんぼりとした表情でこちらを見てくる夢春。
でも俺には分かる。彼女はこんなことで落ち込むような人間ではないと。
「お前……嘘しょんぼりしてるだろ」
「バレましたか。でも落ち込んでいるのは本当ですよ。というか断るなら理由がないと納得できません」
「理由は……俺とお前じゃ一緒に食べるの変に思われるだろ。陰キャと陽キャだぞ」
「私は気にしませんよ。それに私だって空風さんと一緒に食べたい大きな理由があるんですよ」
「その理由とは……」
「私が一緒に食べたいと思ったからです! ゆえにその重大な理由に比べれば他人がどう考えているかなど粗末な事なんです」
何というか夢春は強い奴なんだなと思った。正直まだ夢春と一緒に食べるのは周りの目も気になるし緊張だってするけど。
彼女の様子ではどうやっても俺が一緒に食べるまで離れてくれそうにないので大人しく諦めることにする。
「分かったよ。一緒に食べよう」
「はい! それでは一緒にーー」
そう言って彼女が近くにあった椅子と机を引っ張ろうとしたその瞬間だった。
突然廊下の方からドタドタと走る音が聞こえてダンッと扉が勢い良く開かれる。
そして大きな声で黒髪ツインテールの女の子、桜野千鶴が叫び始めた。
「先輩! 一緒にご飯食べよう!」
「あの人は誰を呼んでいるのでしょうか」
「俺に聞くなよ」
明らかに周りの生徒は彼女にドン引きしている。
そんな中で桜野は俺たちの方を見ると笑顔を浮かべて手を振り始めた。
「先輩! いるなら返事してよ!」
「すみません……まさか私を呼んでいるとは思わなくてまさか私を先輩と慕ってくれていたのですね!」
コイツ……分かっていてやってるな。
「いや私が呼んでるのは夢春じゃなくてそこの空風先輩なんだけど」
「な、なに!? 俺を呼んでいたのか!」
「先輩途中から分かってたでしょ」
「分かってはいた。でも認めたくなかった。こんなヤバい奴に呼ばれているなんて」
「誰がヤバい奴だよ! 折角こんな美少女が声を掛けてるんだからちょっとは喜びなよ」
「いや……でもさ。嘘告白した女からの呼び出しとか普通に怖いだろ」
「桜野さんも嘘告白を?」
「……もって何?」
「私も昨日嘘告したんですよ! 奇遇ですね! 嘘告仲間ですね!」
「おー! 嘘告仲間だ!」
何故か二人で嘘告について盛り上がる。こいつらの倫理観が怖い。
「それはそうと折角だし一緒に食べよー!」
「いやそもそも俺とお前は友達でも何でも……」
「じゃあ今から友達ってことで!」
「……もうなんでもいいよ」
夢春が一緒に食べる以上そこに更に人が増えても特に何か問題があるわけではない。
あと一緒に食べるか食べないかの問答はもう夢春とやったのでそれをもう一回やる体力は残っていなかった。
俺としては一人でのんびりと食べたかったなと思いつつため息を吐いた。




