本当の気持ちを教えて欲しい
「なるほど……如月さんが告白したんですね」
俺は夢春と一緒にベンチに座ると彼女に如月が俺に告白したことを話した。
正直どうすれば良いのか分からなかった。勿論断ることは決まっている。ただどう断れば良いのかが分からなかった。
「それで空風さんは如月さんの告白をどうするつもりなんですか?」
「……俺は断るつもりだ」
「……断ってしまうのですか? 如月さんはとても良い人ですよ。顔も可愛いですし性格だって凄く優しいじゃないですか」
俺が如月の告白を断るのは彼女に魅力がなかったからではない。
彼女の可愛らしい顔も優しい性格も俺はどっちも好きだ。
でも俺は如月よりもやっぱり夢春のことが好きなんだ。
如月に告白されてもその気持ちだけは変わらない。
側にいる彼女を見て自分の心が惹かれているのが分かるのだ。
だからこそ悲しかった。俺が如月に告白されたと聞いても動揺しなかったことが悲しくて不安だった。
「俺は好きな人がいるんだ。だから如月とは付き合えない」
「好きな人がいるのですね」
夢春は俺の言葉を聞いて空を見上げる。いや空を見上げるというよりは上を見ながら何を話すべきか考えているようだった。
話したいことがあってその為に言葉を選んでいるそんな風に感じられた。
「空風さん……こんなことを言うと冷たい女だと思われるかも知れませんが私は空風さんは如月さんと付き合うべきだと思います」
「なんで……そんなことを言うんだよ」
「空風さんは優しい人です。真面目な人です。好きな人がいるから他の人とは付き合えないという気持ちも分かります。でも空風さんの好きな人が貴方の事を好きかどうかは分からないじゃないですか」
「それは……そうだけど」
「恋愛っていうのは互いに好きな人同士が付き合う。それが理想だとは思います。でもやっぱりそれは理想なんだと思います。理想は簡単には実現しません。如月さんは貴方のことを好きだと言ったんですよね。でしたら如月さんのこともちゃんと見てあげるべきなんじゃないでしょうか」
きっとそれは正論だ。夢春の言っていることは現実的で正しいのかもしれない。
でもその言葉を夢春の口から聞きたくはなかった。好きな人の口から聞きたくはなかった。
「如月さんのことは嫌いですか?」
「如月のことは好きだよ。優しい人だしお祭りに行った時も可愛いと思った」
「でしたらお似合いじゃないですか」
「でも俺は……」
俺はお前のことが好きなんだ。そう言いたいのに勇気が出せなかった。
今さらに俺は如月に悪いことをしてきたのだと気がついた。
好きなんて言葉、簡単に言えると思っていた。でもその言葉を口にするのがこれほどに怖くて恐ろしいことだったなんて。
「貴方のことが好きかどうかも分からない人より貴方のことを好きだと言ってくれる人と付き合うべきですよ! その人のことは諦めて如月さんと付き合っちゃえばいいんです」
「なんでそんなこと言えるんだよ……」
夢春は俺に如月と付き合うように言ってくる。それがたまらなく嫌だった。
彼女なりに俺のことを思って言っているのだろう。
夢春は俺が夢春の事を好きなのを知らない。だから友人として如月と俺を付き合うようにすることは当たり前の事だ。
そう悪いのは俺なのだ。未だに告白することが出来ていない俺なんだ。
「確かに冷たいことを言っているかも知れません。でも如月さんの事を考えても空風さんの事を考えても二人は付き合うべきだと思います」
「それをお前に言われると辛いんだよ」
「……空風さん」
「……夢春。お前言ったよな。俺のことを好きかどうかも分からない人より好きでいてくれる人と付き合うべきだって」
「はい……」
「だったら教えてくれよ。ソイツが俺のことを好きなのかどうか」
「いや……それを私に聞かれてもーー」
「好きだ……夢春」
「……え?」
「俺が好きなのは如月じゃない夢春なんだ。だから教えてくれお前は俺の事をどう思ってるんだ」
本当はもっと良い雰囲気で告白するべきなんだろうと思う。
でも俺の気持ちを知らないでずっと如月と付き合うように言ってくるのが耐えられなくて俺はこの場所で自分の気持ちを伝えた。




