気付いた気持ち
「空風さん! 見てください! 凄い綺麗な景色ですよ!」
「確かに綺麗だ。やっぱこういう風景を見ると秋っていいなって気がする。暑くないし紅葉も綺麗だし」
俺と夢春は秋祭りの会場に来ていた。秋祭りの会場では既に紅葉の木々が生い茂っており、それがとても綺麗で暖かな景色を作り出していた。
クリスマスのイルミネーションのような人工的な輝きがあるのではない。
自然が作り上げた優しい景色が俺たちの目の前に広がっていたのだ。
そんな中で俺と夢春は歩きながら沢山の屋台を見てまわる。
食べ物屋さんにアクセサリーショップ、小物を売っている店や服や帽子などを売っている店もあった。
「この帽子とかどうですか? 似合いますか?」
派手な色のお世辞にもかっこいいとは言えない帽子を試着して俺に見せてくる夢春。
その帽子を被っている夢春は可愛いがその帽子は夢春とは致命的に似合っていなかった。
「いやあんまり似合ってない。というかお前もわざと着けてるだろ」
「ふふっ……バレましたか。じゃあ逆に似合う帽子はどれですか?」
「夢春に似合う帽子か……」
夢春自体綺麗だから派手な帽子よりも落ち着いた色の帽子を選んだ方が良いと思った。
沢山ある帽子から夢春に似合いそうな帽子を選んで夢春に渡す。
夢春はそれを着けて俺に見せてくる。似合っているかどうか聞いているのだろう。
「なかなか良いんじゃないか?」
「そうですか! でしたらこれ買いますね。うーんただどうせですし私のものだけではなく……」
夢春は何が考える素振りをして俺を見ると屋台に置かれている帽子を一つ手に取る。
夢春はこれも買うのだろうかと思っていると何故か彼女は俺に近づいてきて持っていた帽子をそっと俺の頭に乗せた。
「うん……結構似合ってますね! 空風さんが良ければですがこれも買おうと思っているのですが」
「……確かにサイズは合ってるし被り心地もいいな」
帽子を被り感触を確かめながらそう呟く。それを見て夢春は満足したのか俺から帽子を取るとその二つを購入しようとした。
「いや……俺の分は俺が払うよ。お前に買って貰うのもなんか悪いし」
「そうですか? それなら私が空風さんの帽子を買うので空風さんは私の帽子を買っては貰えないでしょうか」
「値段変わらねぇだろ……」
「それはそうですけど……その互いの帽子を買った方が何だかお互いにプレゼントしてるみたいで素敵じゃないですか。勿論その嫌なら無理にとは言いませんが」
「別に嫌とかじゃねぇけど」
ただ恥ずかしかった。それだけだ。値段が同じ帽子を互いに相手の為に買う。
別にそれに意味なんてない。これが互いに自分の帽子を買ったって結果的には同じ帽子が互いに手に渡るのだから何も変わらないはずだ。
なのに不思議とプレゼントとして買った方が恥ずかしいと思った。
「はい。空風さん……プレゼントです」
「お、おう……俺もプレゼント」
「ありがとうございます! とっても嬉しいですよ」
「俺も嬉しかった」
互いに自分の物を買ったって変わらないと思っていたのに、こうしてプレゼントされる方が何だか嬉しいと感じる。
正直恥ずかしい気持ちはあるものの。こうして互いに物を買ってプレゼントするのも悪くないなと思った。
ーーー
「空風さん……しばらくこのベンチで休みませんか?」
「大分と歩いたもんな。俺も疲れたし一緒に休むか」
二人で屋台を巡っていたら気がつけば夜になっていた。
夏の時はこの時間帯でもまだ明るかったけど秋になるとすっかり暗くなっている。
でもその割にはまだ人が沢山この場所に残っているような。
「空風さん……空を見てください」
「空……?」
そう呟いた時だった。真っ黒な空から沢山の花火が打ち上がる。
「花火……」
「ほら前の夏祭りの時、一緒に花火を見れなかったじゃないですか。それが何だか寂しくてだから今度は空風さんと一緒に見たいなぁと思って誘ったんです」
「そうなのか」
「綺麗ですよね! キラキラしてて! 空風さんと見れて良かったです」
「そうだな……俺も夢春と見れて良かった」
確かに花火は綺麗でキラキラしている。でも俺は気がつけばそんな花火よりも夢春の方を見ていた。
空に上がった花火を見るよりも花火を見ている夢春の方が何倍も綺麗だった。
結局俺は何時だって夢春に見惚れてしまう。いつも夢春の事を考えてしまう。夢春の事を綺麗だって思う。
俺は恋をしていた。でも認めたくはなかった。
だって俺にとって恋愛は怖いものだったから苦しいものだったから。
恋をしていると認めてしまえばまた元カノの悪夢を見てしまうような気がしてこの気持ちを誤魔化そうとしていた。
でももう認めるしかない。俺は夢春の事が好きなのだ。
もしかしたら夢春は俺の事を好きだと思っていないのかもしれない。
あくまで友達として好きなだけなのかもしれない。
でもこの気持ちをずっと抱えるのはやっぱり辛いちゃんと好きだと伝えたいと思った。
だから俺は花火を見ながら思った。
ーー夢春に告白しようと。




