秋祭りの誘い
「空風さん……最近涼しくなってきましたね」
「そうだな。夏は正直地獄みたいな暑さだったからな」
夏休みが終わって学校が始まった。学校が始まった頃は多くのクラスメイトが夏休みをこいしがったがそれもすぐに慣れて今ではみんな近々開催される学園祭に向けての会話で盛り上がっていた。
正直去年の学園祭は楽しくなかった。唯一楽しめたのは演劇ぐらいで他は基本一人で過ごしていた。
周りを見ればカップルやら友達同士で祭りを楽しんでいてその中で俺は一人ラノベを読んで過ごしていたことを思い出す。
今年の学園祭はどうなるのだろうか。夢春や嬉野は友達が多いしわざわざ俺とまわろうとは思わないだろう。
だからといって如月は演劇部だから一緒にまわってくれるか微妙なところではある。
一瞬愛梨と一緒に学園祭をまわることも考えたが流石に学園祭を兄妹で過ごすのは俺はともかく愛梨は嫌かもしれない。
愛梨だって家庭料理部やクラスの友達がいるだろうし。
まあ最悪、以前と同じように一人で過ごせば良いだけなのだが。
「ふふっ、皆さん学園祭の話ばかりされていますね」
夢春はクラスメイトたちの様子を見ながらそう言った。
「みんな学園祭が楽しみなんだろうな」
「空風さんは楽しみではないのですか?」
「俺はそんなに……一緒にまわる奴もいないしな」
「そうなのですね。でしたら学園祭一緒にまわりませんか?」
「い、いいのかよ。お前……俺以外にも友達いるだろ」
夢春は俺と違って沢山の友達がいる。だから俺と学園祭なんて一緒にまわらないだろうとそう思っていた。
なのに夢春はさも当然かのように学園祭を一緒にまわろうと言ってくる。
「実は何人かに学園祭一緒にまわらないかと誘われているんです」
「だったらそいつらと一緒に行くべきだろ」
「確かに空風さん以外の友達と一緒にまわるのも楽しいのかもしれません。でも一番一緒にいて安心するのは楽しいのは空風さんなんです。なので空風さんと一緒に過ごしたいと思ったのですがダメでしょうか?」
「い、いや……俺は全然構わないけど」
正直そこまで言われると断ることなんて出来やしない。
それに俺自身も一人で学園祭を過ごすのは少しだけ寂しいと思っていた。
なので俺としても断る理由がなかった。
「ありがとうございます! 学園祭一緒に楽しみましょうね!」
夢春は嬉しそうに笑う。ただ俺と一緒に学園祭をまわる。
それだけのことで彼女は喜んでくれるのだ。嬉しいのは俺だって同じなのに。
「あ! それとですね! 学園祭とは関係ないのですが今度の休日一緒に秋祭りに行きませんか?」
「秋祭り……?」
「少し遠いんですけどどうしても空風さんと一緒に行きたくて……勿論忙しいのであれば構いませんが……やっぱり忙しくても来て欲しいのですが」
「別に休日だし特に用事はないよ」
「そうですか! でしたら秋祭りも一緒ですね!」
夢春はそれを聞いて満足したのか上機嫌な様子で自分の席へと戻る。
そんな彼女と入れ替わるように今度は如月がおずおずとこちらに近づいてきた。
「あ……その……空風くん」
「どうした?」
「その……さっき夢春ちゃんと何を話してたの?」
「学園祭とか……休日に遊びに行く約束とかそんな感じだな」
「そうなんだ……学園祭。私も学園祭一緒にまわっていいかな?」
「それ自体は構わないけどお前演劇部だろ?」
学園祭ではクラスの出し物と部活の出し物の二つがある。
如月はクラスの出し物は勿論のこと学園祭の演劇にも出なければならない。
そう考えると一緒に学園祭を過ごす時間はないように思えた。
「それはそうなんだけど……演劇が終わった後少しだけ時間あるから一緒にちょっとだけでもいいから過ごしたいの」
「……分かった」
「あ、それとね。空風くん……学園祭の演劇見てくれる? 私今回ナレーションもやることになったから空風くんが見に来てくれると嬉しいんだけど」
「ナレーション。珍しいな人前に出るとか苦手じゃなかったか?」
「うん……苦手なんだけどそれでも私の言葉で伝えたいから」
「そっか今回の物語自信があるんだな……」
そこまで言って俺は気付いた。そういえば如月は脚本を書けないんじゃなかったのかと。
「脚本書けるようになったんだな」
「うん……伝えたい物語が出来たからね」
「そっかどんな物語なのか楽しみにしてるよ」
「空風くん……それと学園祭でまだ話すことがあって空風くんは後夜祭とか興味あるかな」
「後夜祭か……興味自体は特にって感じだが興味あるのか?」
学園祭は二日間行われる。そしてその二日目には後夜祭が行われ、一緒にキャンプファイアを眺めたりするのだ。
「良かったら一緒に眺めたいなって」
「分かった。一緒に見よう……みんなでゆったり火を眺めるのも悪くない」
「みんな……か」
「みんなと言えば一応桜野も誘っておくか」
「桜野ちゃんは私から誘っておくよ。多分来てくれると思うよ」
「桜野だって友達が多いからな。わざわざ俺たちと一緒にまわるかは分からないが」
「それでも来るよ。きっと桜野ちゃんも空風くんのこと好きだと思うから」
「それって友達としてってことだよな」
「どうだろうね。それじゃ私、自分の席戻るね。そろそろ授業が始まりそうだし」
如月はそう言うと自分の席へと戻っていった。




