伝えたい想い
「どうしてこうなっちゃうんだろう」
私、如月秋は部屋の勉強机に顔を埋める。夏祭りの夜、花火を眺めながら私は空風くんに告白した。
ちゃんと好きって気持ちを伝えた。だけどその告白を彼は受け取ってくれなかった。
拒絶されたのなら諦めもつく……いや諦めは付かないけど納得しようと頑張ろうと思う。
でも私の気持ちは彼にとって嘘になり、拒絶すらしてくれなかった。
「……電話が来てる」
しばらく勉強机でぼんやりとしているとスマホが鳴っていることに気付いた。
私は電話に出ると夏雪ちゃんの声が聞こえた。
「どうだった。夏祭りは……ちゃんと空風に告白したか?」
夏雪ちゃんとは演劇部で一緒になってからはよく話をする。
今回も空風くんに告白することを事前に伝えていた。
恐らくこの電話も私が空風くんとちゃんと恋人になれたのか気になって掛けてきたのだろう。
「告白はしたよ……でも」
「振られたのか?」
「振られてない。でもなんか私の告白は嘘告ってことになっちゃった」
私は一度だって嘘告をしていない。私の告白は全て本当の告白だった。
でも空風くんは何故かそれを嘘にして私の好きを無かったことにする。
「空風にも事情があるんだろう。また告白すればいいさ」
「それはそうなんだけど……問題はそうじゃなくてまた告白してもまた嘘告白にされないか心配で……他に好きって気持ちを伝えられる手段があればいいんだけど」
告白すること自体も勇気がいるし大変なことだけど問題なのは告白しても嘘告白だと言われてしまうことだった。
これでは何度告白しようと同じことだ。何かしら他にこの想いを伝える方法があればいいんだけど。
「それなら私たちにぴったりの方法があるじゃないか」
「ぴったりの方法……?」
「私たちは演劇部なんだ。演劇で想いを伝えればいい……幸い脚本を書くのは恋をしている本人なんだし」
演劇で想いを伝える。確かにまだ脚本は書いていない……というよりは書けていない。
それはずっと恋のことで空風くんのことで頭が一杯だったから。
でもそれならばその恋を物語にすればいい。私の気持ちを演劇にして伝えれば良いのだ。
「あのね……それなら私、演劇部の脚本もだけどナレーションもやりたい私の言葉で彼に想いを伝えたいから」
「そうか……分かった。私は部長だからな何とかしよう」
「ありがとう。ごめんね……色々と手伝って貰っちゃって」
「別にいいよ。恋をする女の子を放ってはおけないからな。それじゃあ切るぞ、私もお祭りに出掛けて疲れたからな」
「うん」
私の言葉を聞いて夏雪ちゃんは電話を切る。今回の好きは伝わらなかった。嘘にされてしまった。
でもだからって諦めていいわけじゃない。いやそもそも諦めきれるわけがないのだ。諦めきれないから恋なんだ。
私はノートに自分の物語を書いた。少し前までは物語を書こうとしても文章が浮かばなかったのに今では不思議なほどに物語を書くことが出来た。
それはきっと自分の好きを物語にしているからだ。私の恋を物語にしているからだ。
「私、決めたよ。今度の学園祭……そこでもう一度空風くんに告白する。今度は嘘なんて言わせないから」
私はそう覚悟を決めると一日掛けて演劇の物語を完成させるのだった。




