↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
32/54

綺麗な光景

「空風さん凄いですね! とても綺麗ですよ!」


ショッピングモールの外。そこでは無数の店が並んでおりそのお店一つ一つにきらびやかなイルミネーションが施させれている。

真っ暗な夜の中で青色や白色の幻想的な光がキラキラと降り注ぐ。

そんな中で夢春は楽しそうにその光景を綺麗だと言ってはしゃいでいる。


でも俺は不思議とその光景を見ても綺麗だとは思わなかった。

だってその沢山の輝きは所詮引き立て役に過ぎない。

本当に綺麗なのはその光の中で立っている夢春だ。夢春が一番綺麗に思えたのだ。


「なんでも冬になるともっとイルミネーションの光が増えて綺麗になるらしい」


「そうなのですか! それは是非とも冬も一緒に行きたいですね!」


「そうだな。また二人で行こう」


「はい! 約束ですよ! また二人で行きましょう」


夢春は無邪気な笑顔でそう呟いた。本当にこうして一緒にいると恋人同士でデートしているみたいだった。

確かにこれはデートなのかもしれない。でも俺と夢春は恋人同士ではなかった。


もし仮に冬にこうやってまた一緒に夢春とこのイルミネーションを見に来たとしてその時の俺たちはまだ友達のままなんだろうか。

それとも恋人になってしまうのだろうか。それともそもそもそんな約束すら忘れてしまうんだろうか。


「空風さん……どうして私が空風さんに嘘告をしたのか分かりますか」


夢春はキラキラしたイルミネーションを眺めながらふと呟いた。

正直それに関しては分からなかった。夢春のことについては分からないことだらけだ。

だから俺は正直に首を横に振るう。


「分からない。なんでお前は俺に嘘告白をしたんだ?」


「貴方なら一緒に探してくれると思ったんです。その探し物は誰もが持っていてでも私だけが持っていなかったんです。なのでそれを探したくて貴方に告白したんです。恋人という強固な関係を結べばずっと側に居てくれると思ったので」


「何を……? いやそもそも一緒にってお前沢山友達いるだろ。探し物があるなら俺じゃなくたっていいんじゃないのか?」


「ふふっ、確かに私は友達が多いです。でも私はやっぱり独りなんです。みんなと話をしている時、些細な雑談でそれを感じるんです。ドラマが面白かったとみんなで笑う時に漫画で感動したとみんなで話し合う時に……その度に私は独りになるんです」


そこでようやく彼女が探している物が何なのか理解した。

彼女はずっとそれを求めて俺と一緒にいたのだ。

そして俺も出来ることなら彼女と一緒にそれを見つけてやりたいと思った。


「でも空風さんなら一緒に居てくれると思ったんです。空風さんは一人だから私と同じ寂しい人間だからずっと側に居てくれるとそう思ったんです」


「でももう俺には友達が出来た。どこかの誰かさんのおかげでな」


「全くです。だから結構不安なんですよ。貴方も私を独りにするんじゃないかって……」


夢春はずっと孤独だった。みんなと会話をしながらずっと一人だった。

だから一人ぼっちの俺を見て彼なら側に居てくれるんじゃないかと期待する気持ちも理解出来た。


「それに最近はちょっとそれ以外にも空風さんと一緒に居たいって気持ちがあるんですよ。空風さんは優しいですし一緒にいると……安心するので」


夢春は少し照れくさそうに目を逸らす。恥ずかしいのは俺だって同じでまともに夢春を見ることが出来なかった。


「その……空風さん……頼みごとをしてもいいですか?」


「別にいいけど」


「では……手を延ばして下さい」


言われた通り手を伸ばす。すると夢春も同じように手を延ばして互いの手が引っ付く、そしてそのまま夢春は俺の手に指を絡めた。


「さ、さっきから何をしているんだ。ていうかそれがお前の頼みごとなのか?」


「違いますよ。これは単に逃がさない為です。逃げられると寂しいので……とにかく同じように手を握って下さい」


「あ、ああ」


夢春に言われて自分も同じように指を絡めて手を握る。

正直最初は頼みごとが何なのかと気になっていたが今はドキドキしていてそれどころではない。


「……空風さん。ドキドキしてますか?」


「してるに決まってるだろ」


「ふふっ、私もです。……空風さん私の頼み事聞いてくれますか?」


夢春はさっきまでの爽やかな声ではなく真剣な表情と声色でそう言った。

だから俺もドキドキする気持ちをなるべく抑えて彼女と真剣に向き合った。

夢春はそれを確認すると静かに口を開いた。


「私と一緒に夢中になれるものを見つけてくれませんか?」


それが彼女の頼み事。夢春はずっと夢中になれるものを見つけるために頑張ってきた。

彼女はそれを断られないかと不安そうな表情をする。

でもそんな表情をする必要なんてないのだ。俺は元から夢春のために夢中になれるものを探そうと思っていたのだから。


「ああ、約束する。一緒に探そうお前の夢中になれるものを」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。