寂しそうな表情
「少し早すぎたよな」
俺はスマホで時間を確認しながら待ち合わせ場所でため息を吐いた。
今日は夢春と約束したデートの日。誘った手前遅れるわけにはいかないと張り切り過ぎたのか十分どころか二十分早く来てしまった。
いやまあ遅れるよりは良いんだろうけどデートを楽しみにしすぎて早く来てしまったみたいで凄く恥ずかしい。
とにかく時間を潰すのも含めて自販機でドリンクを買おうとした矢先。
驚きの感情が入ったどこか聞き慣れた声が聞こえた。
「空風さん!? もう待っていたんですね」
そこにいたのは夢春だった。彼女は金色の綺麗で長い髪を靡かせながら青色の瞳で俺を見つめている。
彼女は俺が予定より早い時間に来たことに驚いているみたいだったが予定より早いのは夢春だって同じだった。
「夢春こそ随分と早いな……まだ待ち合わせまで時間あっただろ?」
「それはその……楽しみだったのでつい早く来てしまいました。さては空風さんも楽しみで早く来ちゃった感じですか?」
「俺はどっちかって言うと責任感だ。自分から誘ったのに遅れるわけには行かないだろ」
それは事実だ。
でも夢春がデートを楽しみにしていたという事が分かったのは素直に嬉しかった。
「それよりもどうですか?」
「どうって……?」
「私の格好ですよ。似合ってますか?」
夢春の私服姿。白を基調にした夢春らしい清楚な格好をしている。
病気でパジャマ姿だった時を除けば普段は制服姿の夢春しか見ていないので私服姿は新鮮に写った。
「……綺麗だよ凄く似合ってる」
「ありがとうございます! 空風さんに褒めて貰えて嬉しいです! 空風さんも凄くカッコいいですよ」
「……そうか。ありがとうな」
互いに服装を褒め合っている。その状況が少し恥ずかしかった。
俺はすぐに誤魔化すように別の話題に変える。
「まだ映画を観るには早いしどこか行きたい店とかあるか?」
「そうですね。やっぱりショッピングモールに来たわけですしお菓子とか買いたいです」
俺たちはショッピングモール内の店をまわる。
お菓子屋に寄ったり服屋に寄ったりと色んな店を巡った。
夢春が買ったのはチョコレートのお菓子とクッキーだけ。
他にも沢山の店に行ったがお菓子以外は特に買うことは無かった。
でも夢春はそれだけでも楽しそうだった。いやそれは夢春だけじゃない俺だって楽しかった。
ただ一緒に店を見て下らない話をして一緒に歩くそれだけで幸せだったのだ。
「空風さん少しお腹が空きました。良かったらフードコートでゆっくりしません?」
「そうだな。俺もお腹減ったしな……それに今なら空いているみたいだし」
早めに来たとはいえ店を巡れば時間は経つ。気がつけば既にお昼過ぎになっていた。
俺たちはフードコートでそれぞれ食べ物を買って一緒に食べる。
俺は適当にハンバーグ定食を夢春は日替わり定食を買ってきたみたいだった。
「いつもはお弁当なので何だか新鮮ですね。学食で食事をしてるみたい」
「確かに学食っぽい雰囲気はあるな。お互い定食だしな」
「でも定食だと色んなおかずがあって楽しいですよ? 味に飽きが来ないといいますか……ところでこのコロッケ美味しいです! 空風さんも食べてみて下さい」
夢春は箸を使ってコロッケを俺のおかずに置いてくれる。
試しに一口食べてみると確かに甘くてホクホクで美味しかった。
「確かに美味いな。夢春も何か食べたいものあるか?」
「うーん……でしたらハンバーグを貰っちゃいましょうか」
夢春はハンバーグを器用に箸で分けるとそれを取って自分の皿に乗せる。
「ところで空風さんは何の映画を観るつもりなんですか?」
「一応……恋愛映画とか見ようかなって何でも凄い感動する映画らしいんだ」
夢春はラブコメ漫画を読んだりしていた。つまり恋愛系の作品に興味があるのではと思い恋愛映画を観ようと思ったのだ。
でもーー。
「……そうなんですね」
それを聞いた夢春の表情はどこか寂しそうでその表情は一瞬で消えていつもの明るい表情に戻ったけど。
俺はその表情が心に残った。




