曖昧な気持ち
「そっか……今日夢春休みなんだ」
学校の昼休み。俺たちはいつものように屋上でお昼ごはんを食べながら桜野に夢春が休んでいることを伝える。
俺の誕生日から一週間、夢春は風邪をひいたらしく今日は学校を休んでいた。
桜野が休んだ時もそうだけどやっぱり誰か一人でも欠けると少しだけ寂しいと感じる。
そんな感情が顔に出ていたのかも知れない如月が少し心配そうに俺を見る。
「夢春ちゃんのこと心配?」
「いやまあ別に心配ってわけじゃないけど、ただの風邪なわけだし……でも何ていうか夢春がいないと寂しいなって」
夢春と一緒に接していた時間が長かったからだろうか。
不思議と今日は夢春のことばかりを考えていた。
正直最初はよく分からない奴だと思っていた。何なら鬱陶しいとも思っていた。
一人でラノベや漫画を読んで一人でのんびりするのに邪魔だと思っていた。
でも今は夢春がいなくて寂しいと夢春ともっと話したいと思っている。
「あのさ……こういうのを聞くのはどうかと思うんだけど夢春ちゃんがいないし今しかないと思ったから聞くね?」
「ん……なんだよ?」
「空風くんって夢春ちゃんのこと好きなの?」
「恋愛って意味だよな? それなら別に好きってわけじゃないけど」
そう言いながらも本当に俺は友達として夢春が好きなのか分からなくなっていた。
最初の頃は間違いなく友人として好きであり恋愛感情はなかった。
でも今はどうなんだろう。誕生日会を行って、いや行う前から少しずつ俺は夢春に惹かれていたのかも知れない。
でも本当にこの気持ちが恋なのか分からない。まだ自分の好きって感情に自信が持てない。
更に言ってしまえば夢春自体が俺の事が好きなのなどうか分からない。
アイツはよく俺のことを好きだとは言うがそれが恋愛感情ではなく友達として言っているのは明らかだ。
故に俺が仮に好きになっていたとしてそれは一方的な片思いなわけでそれを考えると今のこの気持ちについて考えるだけ無駄だとも思った。
「しかし女子って恋バナ好きだよな。如月は誰か好きな人とかいるのか?」
「えっ? あ……その……私は……」
そこまで言って如月は顔を真っ赤にして俯いた。
そんな如月を見て言いにくいことを聞いてしまったと反省する。
「すまん……今のは俺が悪かった。仮に好きな人がいたとしても言いにくいよな?」
「だ、大丈夫だよ。元はと言えば私が夢春ちゃんのこと好きなのか聞いたのが悪いんだし……でもいつも空風くんって夢春ちゃんと話してるし仲良さそうだから気になっちゃって」
「アイツは誰とでも仲良くできるからな。お前だって夢春とよく話してるだろ」
「それはそうなんだけど……」
「大体俺と夢春が仲良かったとしてそんなに気にすることか?」
「……好きな人が他の女の子と話してたらそりゃ気にするよ」
「如月?」
如月が小さな声で何かを呟いていたがそれがあまりにも小さすぎて聞き取ることが出来なかった。
だからもう一度聞き返すと如月は何故か慌てながら口を開いた。
「その……今日演劇部が休みだからまた前みたいに一緒にパフェとかどうかなって」
「あー今日は夢春の見舞いに行くつもりなんだ。だから悪い」
「あ……そうなんだ。夢春ちゃんのこと心配だもんね」
「まあな。良かったら一緒にお見舞いに行くか?」
「ううん、さすがに二人で行くのは向こうも気を遣っちゃうだろうし辞めとくよ」
「……分かった」
別に夢春なら如月が来ても喜びそうだとは思ったがそれはあくまで俺の考え。
如月も遠慮しているならばと俺一人で夢春の見舞いに行くことにしたのだった。




