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一緒に勉強しませんか?

「空風さんもうすぐ中間テストですしどこかで一緒に勉強しませんか?」


休み時間。俺が英語の教科書を読んでいると夢春が声を掛けてきた。

誕生日の話ならば聞くつもりはなかったが勉強となれば話は別だ。

俺は教科書を捲りながら視線を夢春の方へと移す。


「一緒に勉強か……悪くないな」


「おや? いつもなら一人でやるとか言いそうなのに随分と素直なんですね。もしかして私に惚れちゃいましたか?」


「なんでそうなる。単純に勉強するなら二人でやった方が成績が上がると思ったからだ」


もっともそれだけが理由ではない。俺は正直なところ夢春と勉強をしたいと思っていた。

それは何も夢春が好きだからとかそういった青春的な動機ではなく単純に夢春の成績が良いからだ。


夢春の去年の期末テストの順位は確か一桁でかなり頭が良い。

そんな夢春に教われば自分の成績も上がるのではないかと思ったのだ。


「そういえば空風さんの成績ってどんな感じなんですか? 私は去年の期末で五番目ぐらいの成績でしたけど」


「俺は二十番台だよ。それなりに勉強は頑張ってるんだけどな……お前には及ばない」


「二十番台でも凄いですよ!」


「それをお前に言われてもなぁ」


勿論自分の成績が良い方だということは自覚している。

だが成績なんて何かのきっかけですぐに下がったりするものだ。

だから油断せずに叶うことならば更に上の成績になれるように勉強を頑張りたかった。


「二人でお勉強! やっぱりまずはお菓子を食べて雑談とかしたいですね」


「勉強しろよ! というかお前何処で勉強するか決めてるのか?」


「空風さんの家で勉強したいです。空風さんの部屋とか見てみたいですし」


「俺の部屋か……」


確かに俺の部屋ならお菓子を食べたりしても問題はないが。

愛梨も別に反対するような奴じゃないとは思うが一応確認だけはしておいた方がいいか。

アイツもテスト前で勉強しているだろうし邪魔になる可能性もあるからな。


「ダメでしょうか……?」


しばらく考えていると夢春が不安そうに俺の方を見る。

それに対して俺は首を横に振って笑った。


「多分大丈夫だ。一応今日にでも妹に迷惑になるかどうかだけ聞いてみる」


「はい! 妹の愛梨さんでしたっけ? もし愛梨さんがダメだと言ったら私の家で勉強しましょう!」


「……そうだな」


俺は落ち着いて返事をする。しかしよく考えると夢春と二人きりで勉強か。

別に夢春の事が恋愛として好きというわけではない。

でも夢春が誰もが認める美人であり明るくて可愛いのは事実だ。

だからというわけではないが、やっぱり夢春と勉強することは少しだけ緊張した。


ーーー


「というわけで友達と勉強することになった……」


「別に良いんじゃない。うるさくしなければ特に反対する理由はないわ」


リビングのテーブルで愛梨は中間テストの勉強をしながら呟いた。

流石に断られるとは思ってはいなかったけど愛梨がそこまで抵抗をしていないという事実にホッとする。


友達が出来て少しだけ昔の自分に戻れた気がしている。

いや昔以上に自分が少しだけ明るくなれた気がするのだ。


勿論今だって誕生日は祝えないし恋愛には良い感情は抱いていない。

でも夢春たちのおかげで楽しい日々を過ごせているのは事実だった。


「誕生日……か」


夢春は言っていた。折角の誕生日なのに祝わないのは寂しいことだと。

それは事実だ。みんなで祝えばきっと楽しいに決まってる。

そう頭では分かっている。でも俺はあの時の事が忘れられない。


忘れられない以上。祝われても楽しむことは出来ない。

悲しんでいる姿なんてアイツらに見せたくはないのだ。


「兄さん……ここの問題分からないんだけど教えてくれない?」


「ああ……」


俺は愛梨の側に座ると彼女に問題を教える。流石に二年生なので一年の問題は簡単に教えることができた。

それに対して愛梨はありがとうと短く感謝を口にすると言いにくそうな表情で俺を見た。


「……ところで兄さんは本当に良いの?」


「……良いのって何が?」


「誕生日祝わなくて本当に良いの?」


夢春だけではなく愛梨にまで誕生日のことを言われる。

去年も愛梨は俺に誕生日を祝おうと言ってきた。

だけども俺はそれを断った。その日の誕生日は一人で過ごした。寂しい誕生日だった。


でも俺は寂しい誕生日でも良かった。何もない日の方が誕生日だと思わない方があの頃の記憶を思い出さずに済んだから。

でも俺が良くても愛梨は嫌なのだろう。悲しそうな顔で俺を見る。


「私は兄さんの誕生日を祝いたいわ。大きなケーキを買ってプレゼントだってしてあげたい。家族の誕生日を祝いたい……そう思うのはいけないことなの」


「それでも俺は誕生日を祝おうと思えない。アイツに振られた日を祝えない」


「分かったわ。ごめんなさい辛いことを聞いてしまって……勉強一緒に頑張りましょうね」


俺は愛梨の言葉に頷くと彼女と一緒に勉強をして過ごした。

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