デートしようよ
昼休憩、俺は昨日と同じように屋上でお弁当を食べる。
今日も屋上には俺以外に夢春と桜野の姿があった。
だが今回はそれだけではない。更にもう一人黒髪ショートヘアーの女の子ーー如月が一緒にご飯を食べている。
お昼休みが始まってすぐ俺はいつものように一人で食事を取ろうとした所を夢春に捕まり、その後に桜野がこっちに駆け出して来て昨日と同じように三人で食べようとした所に如月が声を掛けてきたのだ。
自分もみんなと一緒に食べたいと。当然俺たちは大歓迎、俺たちは屋上で四人全員で食事をすることになった。
「あの……その……みんな……宜しくね」
「分かるぞ初対面の奴相手だと緊張するよな」
「私と如月さんは初対面ではないですよ。何度かお話もしていますので」
「私とは始めましてだね! 改めてよろしく!」
互いに挨拶を終えて雑談しながらお弁当を食べる。
正直如月は俺と同じ陰キャ側の人間なので会話に馴染めるか不安だったがそれは俺の思い過ごしだったようだ。
彼女は確かに緊張しやすい性格かも知れないが話すときはしっかりと話す。
最初こそは上手く話せなかったりもしていたが十分ほど経てば普通に会話できるようになっていた。
「ところでさ。今週の土曜日って何か予定ある?」
「いや特にないけど」
「だったらさ土曜日デート行かない?」
「デ、デート!? 二人ってそう言う関係だったの!?」
桜野の言葉に一人だけ事情を知らない如月が何故か動揺する。
それに対して夢春がニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「おや知らなかったのですね。二人は恋人同士、何なら婚約も既にしているとか」
「そんな……!」
「お前適当なこと言うなよ。俺はともかく桜野が傷つくだろ。あくまで恋愛漫画の参考にデートに行こうって話をしてるんだ」
「ラブコメ漫画の賞が近いんだよ! それでデートシーンを書かなくちゃいけないんだけど男とデートとかしたことなくて全然書けないんだよー」
「そ、そういうことなんだ……良かった」
ほっと一息吐いて如月は胸を撫で下ろした。
「いや……しかしデートか」
「さっき予定ないって言ったじゃんか」
「そりゃ言ったけどさ」
正直な所桜野とデートに行くのが嫌で了承を渋っているのではない。
デート自体が怖いから行くのを渋っているのだ。
勿論俺と桜野が互いにそういう感情がないのは分かっている。
でもデートっていうのは恋人同士が行うものだ。
だから恋愛が嫌いになってしまった今の俺にはちょっとだけ抵抗があった。
「いいじゃないですかデート! 二人で手を繋いだりキスをしたりするところちょっと見てみたいです」
「いやキスはしねぇからな?」
「しないのですか?」
「そういうのは本物の恋人が出来た時にとっておくものじゃないのか?」
「さ、流石にそういうのは……私たちは友達同士なわけだし」
キスという単語は流石に刺激が強かったのか桜野は頬を赤くしながら否定する。
普通に考えていくら恋愛漫画の為とはいえ友達同士でキスをするのは異常だ。精々が手を繋ぐまでだろうな。
「でしたらそこまで抵抗する必要はないのでは? 手なら既に昨日繋いでますし空風さんは女友達と買い物に行くぐらいの気分で良いと思いますよ」
「夢春……」
きっと夢春はこう言っているのだ。一緒にお出かけをするぐらいで緊張するなと恋人としてではなく友達として楽しめばいいと。
いやでも夢春のことだ。そんな深い意図はなく単純に俺がデートを渋る意味が分からなくてそう言っているだけかもしれないが。
「……分かったよ。実際その日は予定とかないしな」
「本当! 助かるよ!」
流石に予定がないと先に言ってしまった手前断るのは罪悪感がある。
それに俺としても彼女の漫画に協力したいのは本心だった。
その協力内容がデートなのはちょっと抵抗があるけど何も本当に恋人になるわけじゃない。
俺は彼女の誘いに了承しデートに行くことにしたのだった。




