第3話 儂は頑張ったけれど死じゃたよ~! (2)
朱色の夕陽が商店街の軒先を柔らかく染め上げ、香炉から立ち上る煙が風に揺れて細く伸びる。
布の擦れる音と人々のざわめきが混ざり合い、儂はその中で商いの才を存分に発揮していた。
ちょっとしたアイデアから始めたシステム販売は、思いのほか儲けを生み出しておった。
だが、世の常と言うべきか、儲けた途端に株式会社の社長となり、飲み屋の灯りに誘われて女遊びにうつつを抜かしている間に、経理担当が会社の金をこっそり横領してしまった……。
気づいた時には、会社は赤字で火の車──打つ手なしの状態だった。
結局、儂の会社は倒産し、借金を抱える羽目になったが、幼い子供たちがいたため逃げるわけにもいかず。
儂は再び商いの道を模索し始めた。
《《あの頃》》は昭和の終わりが近づき、日本中がバブル景気で沸き立っていた時代……。
街の隅々には新たな商機が転がり、赤と金の提灯が夜空に揺れて煌めいていた。
倒産の痛手を受けた儂は、自営での商いを控え、コツコツとできる仕事を探していた。
そんな折、従弟から声がかかった。
「ミチのあんちゃん、農協やスーパーの店頭販売をやってみんか?」と。
儂はその誘いに乗った。
この仕事が転機となり、令和の終わり近くまで生活の糧となって儲けさせてもらった。
だが、儂は少しドジを踏み、思っていたよりも早くこの世を去ることになった……。
まあ、異世界ファンタジーによくある話で、儂は神さまや女神さまではなく、《《仏さま》》の手違いで早死にしたのだ。
それでも、この経験は異世界転生後に役立ち、そこで商いをし、仲間たちと共にその日暮らしを楽しんでおる。




