アノ男性の息子
「はい、あ~ん♡どう?美味しい?」
「「「美味しいです♡」」」
陽太ライスを口に運ばれ美味しいと言ってくれるご令嬢たち。
「いい加減にしろ!誰彼構わず優しくしてお前は自分がどれだけ『はしたない』事をしているか分かっているのか!?」
そして怒鳴り付ける男。
その後ろでは、ごめんなさいと手を合わせる生徒会役員の女の子。
あの子は桜子さんが紹介したいと言っていた子で一番最初に学園デートをした子だ。
種付け相手が決まっていると言っていた子だったな。
「ふん。あんな風に媚びを売って何が楽しいんだ。男の価値はどれだけ女を従わせるかで決まるっていうのに」
あ~、始まったよ。女の子を下に見るやつ。
でもどうしたと言うのか?
もしかしたらあの子の種付け相手がこの男なのか?確かに外見は似ている(この世界の男性なんて皆太っていて偉そうなのだ)が。
そして俺が処女を奪ったとか思っているのだろうか?ありえる。
しかし言っておきたい!
俺は誰にも手を出していないと!
学園内を歩いたりランチをしただけ。
桜子さんと麗虎さんからも多額の種付け料を頂いてしまっている。
この学園で他の子に無料で、という訳にも行かなくなった。
もしそういう事になる時は桜子さんを通して依頼するようだ。
異世界のギルドを思い浮かべれば分かりやすいか。
えっ?もう依頼が来てるの?
昨日の今日で早くない?しかもいいお値段だよね?学生が一人で決められないくらいだよ?
社交界では噂になってるの?
スミレさんも桜子さんもお腹大きくなってきてるからか。
決まっていた種付け相手はキャンセルした?
絶対にそれだよね?
この男性が怒ってるのって。分からない?
…聞くしかないのか。
まずは自己紹介だよな。
でも嫌だなぁ、怒っている相手に自己紹介だよ。俺はついこの前まで教室の隅っこで、消しゴムのカスをこねていた男だぞ。
でも行くしかない。
胸のバッチも一つ増えて四つコンプリートしてしまった今、彼女たちが向けてくれた真っ直ぐな光に泥を塗るような、卑屈な態度はもう見せたくない。
「はじめまして陽太です。陽太って呼…」
「おい、そこの女。喉が渇いた、飲み物を買ってこい。光栄に思えよ?」
はぁ!?
ちょっ待てよ!
陰キャがまだ言ってる途中でしょうが!
それに、その子は種付け相手でしょ?
そこの女呼びは無いだろ!
「はい」と生徒会役員の子は学食の券売機へと向かってしまう。
「俺も飲みたいから一緒に行くよ」
「おい、何を媚びている! 女なんて顎で使えばいいものを…そんな端金にもならない優しさに、何の価値があるんだ!」
この男は自分のような男に跪き、従うのが女の義務だと信じているのだろう。
俺は優しさだけが取り柄みたいな所があるからな、こんな状況で彼女を一人で行かせるなんて出来ない。
それにこれはちょっとした嫌がらせだ!あそこは外のテラス席、この寒空の下で待つがいい。
そんなに寒くはないけど、ああいう男は暖房の効いた部屋で快適に過ごしたいだろ?
「ごめんなさい陽太さん。あの人が学園にまで乗り込んで来てしまって。もう分かっているとは思いますが、あの人が種付け相手でして…」
「いいの、いいの。後は俺が話すから。紅茶でいいよな?トレイは俺が持つから」
ここが俺の通う学園ならゲテモノ缶飲料をご馳走してやる所だがしかたがない。
テラス席に戻れば彼は腕を組んで仁王立ちで待っていた。
律儀にここで待っているなんて本当はいいやつなんじゃないか?
「馬鹿かお前は!女なんてのは、我々男のために動いてこそ価値があるんだ。それを男であるお前が手伝うなど…そんな、はしたないい真似、俺様が許さないと言っている!」
彼は俺の胸ぐらを掴もうとしたのか手を伸ばし詰め寄って来た。
だが俺は避けるどころか、逆に彼の手に自分の手をそっと重ねた。
「手が冷えてるよ。ずっとここで待ってたのか?寂しかったんだね」
「なっ…!?誰が寂しいなどと…っ!」
「ごめんね、待たせて。はい、これ。有名店の新作スイーツと紅茶。さっきその子が君が甘いものが好きって言ってたから。中で一緒に食べよう」
喧嘩腰の相手に喧嘩腰で行っても仕方がない。ここは俺のフィールドで、優しさで戦おう。
「それで、君は誰なの?」
「俺様の名前はアラン。亜細亜の嵐と書いて亜嵐だ!俺様のパパは日本一の男児出生率を誇るあの男だ!」
なんか凄い人の息子が来ちゃったな。




