中継が自分磨きを披露する場に
テレビ中継画面の向こう側で、ザハルが「俺の種を崇めろ!」と醜く叫ぶ声は、もはや誰の耳にも届いていなかった。
テレビ局には世界中の女性から「学園の他の男子の優しさも見たい!」という声で溢れている。
世界中の女性たちが求めたのは、学園の男子たちによる、革命的な愛のカタチだった。
ザハルの公開処刑の場になるはずだった特設ステージは、いつの間にか俺の教え子たちの自分磨きの成果を披露する、最高のプレゼン会場へと変貌していた。
かつての脱走常習犯だったあの男子は、引き締まった身体にエプロンを一枚だけ纏い、キッチンに立っている。
作るのは俺直伝のオムライスである『陽太ライス』。(低カロリーにアレンジしてあり、出汁の旨みが凝縮されていて旨い!)
女性のために一皿ずつ丁寧に盛り付け、「君の身体を作るものだから、心を込めて作ったよ」と。
その男の家庭的な姿に、世界中の女性が悶絶した。
別の男子は、女性と向かい合って座り、ただじっと彼女の話に耳を傾けます。時折、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ、優しく微笑み、絶妙なタイミングでその柔らかな髪を撫で、肩を抱き寄せる。
これまでの世界では、依頼書を出し、事務的に種を受け取り、受け取り次第、女性が去るのが当たり前だった。
しかし、学園の男子たちは『種を蒔くまでの時間』を贅沢に、そして甘美に使う。
手料理を振る舞い、優しく語りかけ、マッサージで指先一つで女性の心の結び目を解いていく。
「まだだよ。もっと君のことを知って、君が僕を欲しがってくれるまで、僕は待つから」
そう囁きながら、いつまでも結合を許さず、慈しむように愛撫を続ける男子たち。
(やり過ぎじゃないか?俺だってそんなにお預けはしないぞ?)
耐えきれなくなったのは、女性たちの方だった。
「もう、お願い♡…!早く、貴方の中のものを私にちょうだい!!」
かつては義務として嫌々受け入れていたはずの行為を、女性たちが自ら懇願し、男子たちをベッドに押し倒すという、前代未聞の事態が続出している。
中継マイクが拾うのは、かつての殺伐とした作業音ではなく、濃密な水音と、喉の奥から漏れる熱い吐息。
テレビの向こうの視聴者たちも「信じられない…あんなに、女に熱心に求められるなんて、あの男子たちは一体どんな魔法を使っているの…あ~ん、見ているだけで濡れちゃう~♡」
隣の部屋で、十人の女性から「触らないで」「アラン様たちの部屋に行かせて」と拒絶され続けたザハルは、ついに膝から崩れ落ちた。
彼の誇っていた十分の一という確率は、もはや無意味だった。
女性たちが求めているのは結果(男児を妊娠)だけではなく、プロセス(愛されている実感)なのだと、世界が証明してしまったのだ。
アラン君は、女性を抱き寄せながら、カメラ越しに父を見据える。
「父さん。これが俺の、そして俺の仲間たちの『心』です。力でねじ伏せる時代は、今この瞬間に終わりました。父さん、俺、父さんに褒められたかっただけなんだよ…」
テレビの向こう側では、中継が終わってもなお、数億人の女性たちが「今すぐ学園に入学したい!」と叫び、スマホのサーバーがパンクしていた。




