元世界一からの宣戦布告
この世界では、太りすぎた男性にとって性行為は重労働であり、月に一度の搾精義務でさえ苦痛だ。
しかし、学園での指導で贅肉を削ぎ落とし、筋肉を纏った男子たちは、眠っていた本能が呼び覚まされたようだ。
性欲が薄かったはずの男子生徒も、今では一週間に一度、溢れるエネルギーを持て余すほどに。
『太り過ぎと性欲は比例(反比例?)する』という俺の仮説は、彼らの引き締まった下腹部が証明していた。
脂ぎった傲慢な顔つきは消え、女子たちを慈しむような優しい目をするようになった彼ら。
それは、溢れる体力が心に余裕を生んだ結果かもしれない。
実は、俺には学会にも報告していない秘密がある。
『痩せて体力をつけさえすれば、優しさは必要ない』という事。
しかし、あえて修行に過剰なまでのレディファーストを盛り込んだのには、深い理由がある。
体力がつけば、男は力で女を支配できてしまう。
だからこそ、その強大な力を振るう前に『優しさ』という鎖を、彼らの魂に深く刻み込む必要があったんだ!
女性が希少な種を拝んだ結果、虐げられているこの歪んだ社会。
男子たちに女性に尽くし、選ばれる喜びを叩き込むことで、俺は立場を同等にして、女性たちが心から愛され、守られる世界にしようとしていたんだ。
三ヶ月が経過する頃、学園の女子寮は静かな歓喜に包まれた。
全クラスメイト、全女子生徒への種付けが完了。
それは義務としての交わりではなく、デートを経て、語り合い、愛を確かめ合った末の結果だった。
そして月日は流れ、エコー検査で男児を妊娠したかどうかが判明した。
夕暮れの校庭で。
大きくなり始めたお腹を愛おしそうに撫でる女子と、その肩を抱き、歩幅を合わせて歩くスマートな男子たち。
かつての傲慢な男の姿はどこにもなかった。
俺は、そんな光景を校舎の屋上から眺めていた。
「これで、種は蒔かれた。あとは彼らが、この学園の外でもその『優しさ』を忘れないでいてくれるかどうかだね」
その日のニュースはどのチャンネルを見ても学園の事しか放送していなかった。
『速報!エコー検査の結果を発表!』
『男児出生率!五十パーセントの男性が居るとの情報!あの男性の息子!?』
『低い男子でも二十パーセント越え!』
『学園が再び注目される!』
そんな中、一通の赤い封筒が届いた。
差出人はこの世界の権力の象徴であり、世界トップの男児出生率という称号に胡坐をかいてきた男から。
それは、アラン君の実の父親からの手紙だった。
内容はアラン君を褒めるものでは無く。
学園を認めない!
そんな痩せっぽっちのガキが俺の息子のはずが無い!男の尊厳を汚すな!
というものだった。
◇◇◇◇
テレビに絶倫王ザハルとかいう男が映っている。
見るからに傲慢で我が儘。
プライドが高く他人を見下し、自分の都合の良いように考え行動し、他人の気持ちなど考えず、自分の意見や要求を押しそうな男。
さらに見た目も清潔感が無いオジサン。
前に桜子さんが生理的に無理と言ってたけどその通りだ。
凌辱系エロビデオの汚いオジサンをイメージすれば、それがザハルだ。
そんなザハルがテレビで吠える。
「どこぞの馬の骨かと思えば、捨てた女が勝手に産んだ我が息子が五十パーセントだと?ふざけるな!男児を産むのは、この俺のような『選ばれし強者』の特権だ!痩せっぽちのガキが、男の尊厳を汚しおって!」
なんだ?
息子に嫉妬してるのか?
「いいか、愚かな女どもよ!あの陽太とか言うガキが育てた、ひ弱な男どもに、何ができるというのだ!男の価値は重さ、そして蓄えた脂だ!あの学園の数字はすべて、あの陽太が裏で一人で工作したペテンに過ぎん!」
テレビ画面の中で、脂ぎった顔をテカらせながらザハルが吠えている。
「アランよ!貴様が本当に俺の血を継いでいるというのなら、逃げ隠れせずに出てこい!公開の場で、俺が用意した十人の女をどちらが先に、そしてより多くの男児を孕ませるか、白黒つけようじゃないか!負けたら、その腐った学園を解体し、貴様は一生俺の足拭きマットになれ!」
何を言ってるんだ?この男は。
支離滅裂とはこの事だろ。
学園のラウンジでその放送を見ていた生徒たちの間に、冷たい殺気が漂う。
「あんな豚に、僕たちの努力を『ペテン』呼ばわりされるなんて…」
「陽太さんの『優しさ』がわからないなんて、あの男、生きてる価値あるの?」
かつては傲慢だった男子生徒たちが、今や騎士のような鋭い眼差しで画面を睨みつけ、女子生徒たちも怒りをあらわす。
この為に学園にもテレビクルーが来ているのか。
俺はマイクを握…
おい!アラン君!?
「父さん。あなたは大きな勘違いをしています。俺や陽太先輩が凄いんじゃない。俺を信じて、俺を変えようと一緒に汗を流した彼女らが凄いんだ!…その挑戦、受けます。あなたのやり方が終わったことを証明します」
「ふん、工作無しの正当な出生率を俺が暴いてやるぞ!ふははは」
アラン君…
…俺様呼び辞めたのか。




