学園を辞めたいと相談される
ダイエット開始から一週間。
急激な環境の変化と、女子からの『愛のスパルタ』による精神的な磨耗がピークを迎えたようだ。
最近、学園を辞めたいと相談される事が多くなった。
これは何か考えないとマズいな。
◇◇◇◇
「みんな!一週間よく頑張ったね。今日は修行をお休みして、街へ出かけよう!女子とデートだ!デートだから甘い物も食べていいからね」
俺のその言葉を聞いて、辞めたいと漏らしていた男子たちの顔に、久々に血色が戻る。
「え?いいんですか、陽太先輩!?鶏肉以外を口にしてもいいんですか!?コーラもポテチも!?」
十一人一組になり、意気揚々と街へ繰り出す生徒たち。
陽太のクレープ店では。
男子が恐る恐る「…生クリームたっぷりのやつ、いいかな?トッピング全部乗せてもいい?」と隣の女子に聞くと、彼女は微笑んで頷いた。
「今日だけよ。…はい、あ~ん。一週間頑張ったご褒美なんだから♡」
「あ、あ~ん。くっう~、甘い!旨い!旨過ぎる!」
久しぶりの糖分が脳を突き抜け、男子たちは涙目でクレープを頬張っている。
それを優しい目で見つめる女子。
ちゃんとデートしてるな。
◇◇◇◇
夕暮れ時、学園の広大な敷地で始まったのは、最高級の牛肉と地元の新鮮な野菜を使ったバーベキュー大会。
真ん中にはキャンプファイアもある。
俺はエプロン姿でトングを握り、絶妙な焼き加減で肉を男子たちに配っていく。
「ほら、優ちゃんも食べて。これは脂身が少なくて美味しいよ」
「アラン君には、この特製ハーブで焼いたやつを」
さて、俺も食べよう。
「陽太先輩、俺…辞めるなんて言ってすみませんでした。こんなに楽しいのは初めてです!」
「いや、相談してくれたのは嬉しかったよ。ちゃんと先輩としてやれてるかな?」
「はい。痩せてきたからか、女子と歩いてても前ほど疲れなくて、本当は陽太先輩みたいにリードしたかったのですけど…」
入学時の『傲慢で太った写真』と今の少しスッキリした自分をスマホで比べ、彼らは自分の成長を実感しているようだ。
賑やかな笑い声が響く中、俺は悠斗と並んで火を眺めている。
「悠斗、皆いい顔してるよね。これでまた明日から頑張れるかな」
「ふふ、陽太。陽太は周りに気を使い過ぎだよ。それじゃ陽太が疲れちゃうよ。でも、その『飴と鞭』の使い分け、もはや教育者を超えて、何かの指導者のようだよね」
悠斗はそう言いながら、自分の口に焼けたばかりの肉を運ぶ。
向こうから優ちゃんが来て「陽太お兄ちゃん!次はマシュマロ焼こうよ!」と袖を引っぱる。
「よし!ビスケットを挟んでスモア風にしようか」
女子たちは、楽しそうに笑う男子たちを見て、「少しだけ可愛げが出てきたわね」と育てる喜びに目覚めているようだった。
「陽太先輩!俺、明日からのセクササイズ、もっと回数増やせそうです!」
「はは、無理しちゃダメだよ」
俺が笑って返すと、会場全体が温かな空気に包まれた。
優しさは時に厳しく、けれど最後には必ず包み込んであげる。
これで脱落者はゼロ。
学園の結束は、この夜、さらに強固なものへと変わった。




