運動の後は食事だよ
激しい?ランニングの後は、学園の広大な食堂でのランチタイムだ。
しかし、そこに並んでいるのは、かつての彼らが家畜の餌とまで蔑んでいた、徹底したヘルシーメニューだった。
医療関係に強い朱雀財閥が監修したダイエットメニュー。
テーブルに並ぶのは、色鮮やかだが脂っ気ゼロの鶏胸肉の低温調理、山盛りのブロッコリーと半熟卵、そして特製の低糖質プロテインドリンク。
「な、なんだこれは!肉といえば脂身が滴った牛肉だろう!こんなパサパサした鶏肉なんて食べられるかよ!」
一人の太った男子生徒が、これまでの傲慢な常識を振りかざして吠えている。
それに便乗する数人の男子生徒。
しかし、その瞬間、彼らの周囲を取り囲む十人の女子生徒たちの視線が、一斉に氷点下まで下がった気がした。
「あら?陽太様と同じ身体になりたいって言ったのは、どこの誰だったかしら?」
リーダー格の女子生徒が、フォークで鶏肉を突き刺し、彼の目の前に突きつける。
「さあ、口を開けて。食べないなら、明日からの並走、もっとペースを上げるわよ?」
「ひぃっ…!」
女子たちの圧倒的な圧力に屈した男子生徒が、情けなく口を開ける。
「…あ、あ~ん…」
「そう、いい子ね。噛めば噛むほど、筋肉の栄養になるのよ」
…憧れの女子からの『あ~ん』をされるというシチュエーションが、なんだか怖い。
最初は拒絶していた男子たちも、至近距離で見つめる女子たちの熱い視線と、耳元で囁かれる激(という名の脅し)に、次第に鼻の下を伸ばし始めた。
あそこのクラスは女子に任せればいいな。
俺の座るテーブルはといえば、他とは少し違う空気が流れていた。
「陽太お兄ちゃん、はい、これ。卵焼きには少しだけ出汁を利かせておいたよ。私の手作りなの。お口に合うかな?」
優が手作りのアレンジを加えた卵焼きを差し出してくる。
俺は「ありがとう、優ちゃん」と、彼女の仕事を当然と思わずに、心からの感謝を込めて受け取った。
これを『美味しそうに食べる姿』が、あそこで泣き言を言っている男子生徒たちにとって何よりの教育になればいいけど。
食堂のあちこちで繰り広げられる、スパルタな女子と甘やかされつつ飼い慣らされる男子。
男子の顔には(ツラい…脂っこいラーメンが食べたい…でも、こんなに綺麗な子たちが僕の健康を必死に考えてくれてるんだ…なんか悪くないかも…)なんて思っていそうだ。
女子の顔には(この男を絶対に痩せさせて、あの会見の時の陽太様みたいな『至宝』に仕上げてみせる!私がプロデュースするんだから!)とかかな?
「「「「ごちそうさまでした!」」」」




