新入生がやってきました
桜の花びらが舞い散る中、この学園に足を踏み入れるのは、これまでの常識を捨て去ろうとする若者たち。
入学式の行われる体育館には目を輝かせた女子生徒たちが…いや、目をギラつかせた猛獣が居た。
すでにどの男子と自由恋愛をしようかと獲物を狙っているようだった。
男子生徒は、まだまだお腹が出ていたり、尊大な態度が抜けきらない人も多いが、その顔には、変わりたい!という必死さがある。ように見える。
彼らは、俺の指導(地獄のトレーニングと徹底したマナー教育)を潜り抜ければ、自分たちも、愛される存在になれると信じているのだろう。
喧騒の中、一際明るく幼い声が響いた!
「陽太お兄ちゃん!私、やったよ!本当に合格できたんだから!」
人混みを縫って駆け寄り、抱き付いてきたのは、俺を兄のように慕う優ちゃんだった。
この超高倍率の試験を突破し、見事に制服に袖を通した彼女の瞳は、希望にキラキラと輝いている。
「よかったね、優ちゃん。俺は信じてたよ。ここでの生活は楽じゃないけど、優ちゃんなら大丈夫だ」
そう言って彼女の頭を優しく撫でる。
その『いつもの優しさ』が、周囲の女子生徒たちの間にピリついた緊張感を走らせたようだが気にしない。
これが当たり前だ。
でも、あれ?
「優ちゃん?何だか大人っぽくなった?」
幼い感じの親しみやすさはそのままで、どこか大人びた表情を見せてくる優ちゃん。
「ふふん、気づいた?私、あの会見の麗虎さんに憧れてるの!陽太お兄ちゃんの隣で支えてる麗虎さんみたいになりたいの!」
優ちゃんもまた、誰かの隣に立ちたいという自覚に芽生えたのか。
麗虎さんの妹分、麗虎さん…妹分とか嫌がりそうだよな。
俺はステージに立ち、新入生たちを見渡す。
「入学おめでとうございます!今日から君たちには、これまでの『当たり前』を捨ててもらいます。男は守られ、女を支配するという歪な形ではなく、お互いを高め合う関係を築くために。…準備はいいですか?」
「「「「「「はい!」」」」」」
その言葉を合図に、世界を変える為の学園生活が幕を開けた。
俺は、自分を信じて集まってくれた生徒たちのために、この優しさを武器にして、新時代のリーダーとして歩み始めた…
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俺はステージを降り、新入生の列に並ぶ。
「…あはは、そうだったね。俺もまだこの学園の生徒なんだよ」
俺は照れくさそうに笑いながら、優ちゃん、そして戸惑う新入生たちの前で、改めてリーダーではなく同じ学園の仲間として地面に立った。
優しさを教える側がいないから、俺が教える事となっている。
だが俺は先生と呼ばれるつもりは無い。
アラン君の師匠になったつもりも無い。
ただ一緒に楽しみたいだけ。
自分が背中で見せるしかない。
そう決心したんだ。
俺は、入学式早々、学園の常識を覆す最初の授業を宣言する。
「さっそくだけど、まずはクラス分けも兼ねた、男女混合ランニングをしよう!」
俺の提案に、どよめきが起こる。
これまでの世界では、男性が走る姿を晒すことなどあり得ず、ましてや女性と並んで汗を流すなど、男性のすることではないとされていたからだ。




