記者会見
千人を越えるの報道陣、そして各国の政府関係者が集まる巨大なホール。
白虎財閥の警護チームが道を切り開き、会場を進み、俺は壇上に上がった。
そこには四大財閥の母と娘が勢揃いしていた。
麗虎さんと麗虎さんのお母様以外、みんなお腹が大きくなっているのに、わざわざ来てくれて有り難い。
俺の斜め後ろ、誰よりも近く、誰よりも鋭い視線で周囲を威圧する麗虎さん。
彼女の服は、俺を際立たせるための漆黒のドレス。
俺が着ているのは今日の為に新調された高級スーツ、胸には四つのバッチが輝いている。
「え~、皆さん、初めまして…」
カシャカシャ♪パシャパシャ♪
俺の視界が真っ白に染まる。
千台のカメラが一斉に放つフラッシュのせいで何も見えない!
「陽太様、こちらに視線を!」
「こっちにも!」
「100%の受胎率というのも本当ですか?」
「男児出生率の秘訣を話されると聞きましたが?」
「秘密にして独占しようとは考えないのでしょうか?」
そして、質問の嵐。
全員の視線が俺に刺さる。
喉が震え、指先が震え、冷たくなり、用意していた言葉が思うように出ない。
…息が、できない。
そういえば俺、陰キャだった。
立ちすくみ、一歩後退しそうになった。
その時、俺の背中、ちょうど心臓の裏あたりが、そっと押される感覚。
斜め後ろに居たはずの麗虎さんが、静かに一歩踏み出して、隣で支えてくれる。
そして俺だけに聞こえる…ホワン♪ホワン♪という音。
えっ?
麗虎さんがスマホの幾何学模様を見せ耳元で囁く。
「大丈夫よ、陽太。陽太ならやれるわ!」
耳元で囁かれたのは、他の誰にも聞こえない催眠。
掛かる事は無い。
けれど絶対的な自信を貰えた気がする。
背中に触れる彼女の手の温かさが、宙に浮きそうになっていた俺の意識を地面へと繋ぎ止める。
そうだった。俺は、一人でここに立っているわけじゃない。
麗虎さんたちが見守ってくれている。
催眠アプリからクラスメイトの温かさを感じる。
そして産まれたばかりの子供たち…
「ふふっ、麗虎さん、助かったよ」
一度深呼吸をした。
震えていた肩から力が抜け、視界を塞いでいた白い光が、次第に記者の顔へと変わっていく。
背中の感触を愛おしむように一度だけ麗虎さんの方へわずかに顔を向け、頷いた。
それから真っ直ぐに会場、そしてレンズの向こう側を見た。
もう大丈夫。
「お待たせしました。俺は、誰かを支配するためにここに立った訳ではありません。ただ、隣にいる人を大切にしたい。その『当たり前』を、これから皆さんに伝えていきたいと思います」
俺は俺の『当たり前』を語っていく。




