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狐の嫁入り 四部〜簪の音〜  作者: 杉崎朱/日向茜


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簪の音 十六話:西京




「えっ!?お祭り!!あと二日もやるのー?!超嬉しいー!!良いわよね?!呪術士捕まえたんだから良いわよね?!」

「”じゅじゅちゅし”を捕まえたら次は監禁の為の設備が必要じゃろ?今、機関は”対魔法用”しか持っとらん。データがないからな?お前さん、太郎の所に行って協力してこい」

「それは私じゃなくて、逆におじいちゃんの仕事じゃないの?」

「じゅじゅちゅなんてワシャ知らん!!」

「私だって知らないわよ?!」



 イッセイの家の居間はお祝い事でもあるかのようにとても賑やかだった。


 呪術士を捕らえたのだ。

 あのあと、最上と神風を筆頭に呪術士を捕らえられた。

 イッセイの電磁砲を念の為に神風へと渡した。何かあったら撃てばしばらくは術が使えない。


 しかし、それも呪術士に学習をされたら意味がない。

 対魔法用の留置所では呪術士にどこまで通用するかわからない。


 そのため、イッセイたちの一向に最上から『協力依頼』が出されている。しかし



「誰が適任者かわからないよなぁ・・・」



 イッセイが呟いた。

「私がお役に立てないのだけは明確なんですけどねぇ!」

 全員分のお茶を持ってきたおばあちゃんが言った。



「おばあちゃんはそんな危険な所に行かなくていいの!!行くとしたら、お弁当持って行くくらいだわ!!」

「そうよ!おばあちゃんは行かなくて大丈夫だわ!私とかリリちゃんが持って行くから!」


 深夜だが、若者たちは元気だ。







「イッセイ、あの黒い結晶体はこちらで回収しなくて良かったのでしょうか?」


 機関への協力者は誰が行くべきかと考えていたイッセイに、稲荷が話かけた。

 黒い結晶体とは、以前呪術師がイッセイに電磁砲を撃たれた時に使ったであろう代物だ。呪物。イッセイからしたら得体が知れない。


「・・・機械仕掛けだったのが凄く腑に落ちなくて。以前、リリさんがこの世界に送られて・・・戻された時も、宝石の方な物を原動力として機械がついたピアスを付けられてたんだ。 魔法がかかった爆弾でね」

「なんて物騒な」

「そう、爆弾は時限式で、発動条件は”リリさんが、自分がこの無狐の世界の生まれだと気づく事”だったんだ。そうするとタイマーが作動して、時間が切れると爆発するって仕組みだったんだ。魔法とか、呪物とか呪術と機械の組み合わせってなんか腑に落ちなくて」


「・・・本来、魔法も呪術も単体でどうにかなりますからね。機械と共存する意味がないと言いますかなんと言いますか」

「そう、それ。術で完結できちゃうでしょ?それなのに機械を伴っているのがちょっと理解できなくてね。呪術師の持っていたあの黒い結晶体。さっき見た時、前回リリさんの磁場砲で壊したあのケースごと復活してた。それに、前回、瞬間移動した時には、電磁砲で撃ってたのに、”呪文で術を発動”させてた。つまり」


「呪文に反応したのは、機械。機械が術を発動させたって事ですよね?」


「呪術士本体が、術を使えなくなることが想定された緊急の飛び道具なのだろうけど・・・そもそもそれを想定していたのか・・・。なんかあまりにも設定というか前提がぐちゃぐちゃで・・・稲荷の世界でも魔法と機械が融合してたりするの?」


「してませんね」

「なんかチグハグなんだよなぁ・・・」


 釈然としない顔をしたイッセイ。稲荷にもなんとなくは分かりそうな感覚だが、うまい例えがない。考えて考えて・・・


「あっ!”ラーメン屋さんのメニューにグラタンがある”みたいな感じでしょうか?」

「ミスマッチ感で言うと、そうかもね。呪術士から引き離す事が何かの術の発動条件だとしたらまずい。一旦はこのままにしておくよ」


 もう考えるのが疲れたのか、イッセイは顰めっ面から気の抜けた珍しい表情をした。



「さぁさぁ!色々あったけど、呪術士さんは一旦お縄に掛かってますし、よくわからないけどイッセイの作った道具もお預けしてるんですから、今日は安心してみんな寝ましょうね!

 リリちゃんも今日は遅いし、お父さんも神風さんもお忙しいからウチで泊まって頂戴ね!」

「勿論よ!元々泊まる気できたんだもの!準備はバッチリだわ!」

 そう言って、お泊まりの道具が入った大きい鞄をおばあちゃんに見せつけた。


「あら、準備が良いこと・・・そりゃそうよね!お祭りは三日間あるんですもんね!」

「それを知ったのは私たって今日よ!!」

「良いの!!今回だけは許してあげるわ!だって明日と明後日のお祭りは私も行けるんだもの!!」

 キキは胸を張って嬉しそうに言う。興奮冷めやらぬ。この後寝るようには思えないほどのテンションの高さだ。




「・・・キキが、呪術士の見張りの協力の適任者でないことを祈ります」

「ワザと外してあげても良いけど・・・キキしか出来ない事だったらなぁ・・・」






・・・———





 ー翌朝ー



「あらイッセイ!おはよう!もっと寝てるかと思ったわ?早いのね?」

「おはようございます。リリさんも随分と——。あぁ、朝ごはんですか、ありがとうございます」

「今日の朝ごはんは鮭の”サイキョウ焼き”ですって!強そうよね!!」

「最強焼き・・・?あぁ、味噌につけたヤツか」

 

 朝早く、2階から降りてきたイッセイがリリと顔を合わせた。

「西京焼きですね!この世界にもあるんですね。頂けるなんて嬉しいです!」

 イッセイの後ろから階段を降りてきたのは稲荷。稲荷の世界では西京焼きがある模様。

「・・・だったら”サイキョウ焼き”って言うのは多分おばあちゃんの世界の料理ね。魚料理を前に調べたけど、味噌につけとく技法はどの料理本でも見たことないもの」

「なるほど・・・またさらに別の世界の西京焼きですか!楽しみですね」

「稲荷の世界とおばあちゃんの世界って一緒なんじゃないの?」

「似てる所はありますね。しかし、私の世界では”ラムネ”はありませんでしたから」

「じゃぁやっぱり違うのね?」



 リリと稲荷が雑談をしている。そんな中、イッセイの携帯電話が鳴った。



「朝早くからお電話ですか?夏休みのお出かけのお誘いでしょうか?」

「・・・そういえばイッセイ友達ちゃんといるの?!貴方夏休みは家か工場か仕事でお祭り会場にしかいないじゃない!?」

「まぁ、キキと稲荷の核探しを手伝うのに長期休暇はもってこいだから俺は別に良いんですけど・・・っげ」


 携帯電話の画面を見たイッセイの顔が変わった。

 稲荷とリリが画面を覗く。


「”セイタ”。例の従兄弟ね」

「あぁ!私が昨日魔法で眠らせてしまった、あの・・・」

「どうするの、イッセイ。彼、タイミング悪い人だって噂だけど、昨日の件もあるし・・・」

「ううーーーん・・・よし。出ません」



 イッセイがそう決めた瞬間だった。




———ガッチャ


———ドタドタ



———バタンッ!!!



「イッセイーーーーー!!なんで電話出ないんだよぉぉぉおおおーーーーー!!」


 家の玄関、廊下の扉を開けてセイタが乗り込んできた。





・・・———





「ばあちゃんの朝ごはん食べたの久しぶり・・・!!めっちゃ美味い!!」



 セイタが食卓で幸せを噛み締めた顔をして西京焼きを食べている。

「誰だ、あの孫を家に入れたヤツは!」

「おじいちゃん、それ孫に言うセリフじゃないわ」

「この間も思いましたけど、誰が合鍵を渡したんでしょうねぇ?」


 おじいちゃんが悪態をつき、リリが宥める。おばあちゃんは合鍵の行方を気にしている朝食。


「ばあちゃん!相変わらずこの鮭美味いね!」

「セイタ、それはそもそも稲荷の西京焼きだったんだ。ちゃんとお礼を——」

「まぁ、イッセイ。良いじゃないですか。セイタさんは久々に皆さんと食事をご一緒出来るんですから」

「稲荷、貴方”西京焼き”楽しみにしてたんでしょう?私の半分あげるわよ!」


 いつもより狭い食卓。テーブルとデザインの合わない椅子も追加されて全員で卓を囲む。


「孫!!何しに来よった?!この間イッセイから聞いたじゃろう?!今は客人が居るから狭いんじゃ!」

「じいちゃん良いじゃんよ?!この間迷惑かけちゃったみたいだからお詫びに来たんだよ!なんか俺、いきなり眠くなっちゃったみたいでこのデッカイ兄ちゃんに運んでもらったらしいじゃん?!」

「詫びに来た稲荷寿司の魚喰いながら何言っとる?!」

「あっ!?確かにっ?!」


 ———ヴヴヴヴン・・・ヴヴヴヴン・・・



 賑やかな朝食の最中、携帯電話の震える音が二台分響いた。



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