25話 羽根ペンさん、今それ?
『無才王女、魔王城に嫁入りする。 ~未来視の力が開花したので魔族領をお助けします!~』カドカワBOOKS様より発売中!
よろしくお願いいたします。
少し緊張の緩んだカトリーヌが、不甲斐なさにため息をつく。
「はあ……夫婦らしい振る舞いが全然出来なかったわ。せっかく王子の方から訪ねて来て下さったのに」
そうつぶやいて扉をしめようとするカトリーヌの表情は暗かった。
(もしかして、このまま王子の足が遠のいたりして……。優しい方ですけれど、男女の仲は繊細で複雑なのよぉ~って洗濯メイドのお姉さんも言っていたもの)
それは困る。だって自分は王子を……、とまで考えて、頭を振る。
恋しいだなんて、会ってすぐにそんな気持ちになるはずがない。
自分はゼウトス王国の王太子妃として、内実ともに認めらないといけないのだ。だから、婚姻後の初めての夜に何もないことに、不安を覚えているのだ。それだけだ。と思うことにした。
そのとき、うつむくカトリーヌの目の前に、例の羽根ペンが飛んできた。そして突然、カトリーヌの鼻先をふぁさふぁさとくすぐりだす。
「ちょ、なにす、ふ、ふあ、ふあ……はくしょん!」
結構な音量でくしゃみをしてしまった。
王子に聞こえたかしら、と焦って確認すると、王子は廊下の先で振り向いてカトリーヌを見ていた。
「わ、私にはくしゃみなんて聞こえなかったですけど! おやすみなさいっ!」
咄嗟のことに無理な言い訳をして、大声でごまかす。
すると、王子は一瞬顔をくしゃりとさせて、何事かを口の中でつぶやいた。
何を言ったのかは聞き取れなかった。あるいは、カトリーヌに聞かせるつもりのない言葉だったのかもしれない。
結局、婚姻後初めての夜は、くしゃみで終わることになりそうだった。
肩を落とすカトリーヌの前に、くしゃみを起こさせた犯人である羽根ペンが、『王子もあんたも、世話が焼けるぜ』と紙に書きつけて持ってきていた。
良いことをしたと言いたいらしい。カトリーヌがにらみつけると、『でも脈は十分あるぜ』ともペンはつづった。
理由を聞くと、王子が笑って呟いた言葉が鍵だという。
カトリーヌには聞き取れなかったその言葉が、羽根ペンには分かったようだった。
教えてほしい、とカトリーヌがたのんでも、羽根ペンは偉そうにひらひらと飛んだり、鉤爪のペン先でカトリーヌの腕や頭に止まるばかり。
やっと書かれた言葉は『いずれ分かる』の一言だ。
「むう、じゃあもう良いです。羽根ペンさんなんて知りません」
ペンとのやり取りに疲れたカトリーヌは、呆れた顔を作ってそう言った。
ペンをそのままにして、ふかふかの寝台に潜り込む。
もう自棄である。
するとすぐに鉛のように重い疲れが全身にのしかかってきた。
長旅に加えて、今日は山歩きまでした。城についてからも緊張し通しだった。忘れていた疲れが一気にやってきたのだ。
枕に頭をあずけると、鼻から吸う息と一緒に眠気が入ってきて、あっという間に眠りに落ちた。
今回短めになってしまいましたので26話も同日更新です。→→→





