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キモデブと、琥珀色の守護天使  作者: あるふぁ


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34話 暴露された秘蔵本

暴露された秘蔵本


「俺の部屋に、綾瀬さんがいるのが不思議な光景に見えるな……」


 カズヤは壁に背を預け、自分の日常に迷い込んだ異分子——あまりにも美しすぎる少女の姿を眺めて呟いた。


「わたしも不思議に思いますよ。わたし、小さな時から男子のお友達っていませんでしたから……」


「そうなの? すごくモテそうだけどな……」


「家が厳しいということもありましたし、周りの女子のお友達が『ああいう下心丸出しの男子はダメだよ』って。当時はよく分かりませんでしたけれど、それで良かったのかもしれませんね」


「初めて入る男子の部屋が、俺みたいなやつの部屋というのは……なんだか申し訳ないな」


「そうですか? わたしは、ドキドキわくわくしていますよ。えへへ」


 レナは楽しげにベッドの上でゴロゴロと転がったり、カズヤの毛布にくるまってみたりと、その感触を全身で確かめていた。


 すると、ふいに彼女の動きがピタリと止まった。


「相沢くん、相沢くん……ああいう女の子がお好みなのですか?」


 レナの視線の先——


 中学校の頃、引きこもり生活の慰めに購入したアイドルの写真集が、丁寧に整理された本の一番上に鎮座していた。表紙には、眩しい笑顔を浮かべるスレンダーな美少女が映し出されている。


(……待て、なんでそれが一番上に!? これは……掃除した業者というか、綾瀬さんの家の使用人さんの嫌がらせなのか……!?)


 カズヤは血の気が引くのを感じた。よりによって、今をときめくお嬢様に、過去の淡い憧れを白日の下に晒されるとは。


「それは……その、昔のやつで……!」


「ふぅん……。やっぱり、こういう細くて、可愛らしい子が……タイプなのですね?」


 レナはベッドから身を乗り出し、じっと写真集と自分の体を交互に見比べ始めた。その瞳の奥には、好奇心だけではない、少しだけ複雑で鋭い光が宿っているように見えた。



掛け布団の中の独白


「え、あ……う、うん。まあ……可愛いと思うよ」


 カズヤは冷や汗をかきながら、正直に答えるしかなかった。嘘をついて誤魔化せるような空気ではなかったからだ。


「ふうん……そう、なのですか……」


 レナの表情が、あからさまに曇った。琥珀色の瞳がじわりと湿り、その写真集の少女を敵視するような、あるいは自分に自信を失ったような、複雑な不満の色が浮かぶ。


「髪型……綾瀬さんと同じだね。雰囲気も、こう……清楚で可愛らしいところが同じだし……」


 カズヤが慌てて共通点を挙げてフォローを入れると、レナの表情は劇的に変化した。

 にぱぁ、と花が咲いたような満面の笑みが浮かんだかと思うと、猛烈な羞恥心に襲われたのか、カズヤの掛け布団の中に勢いよく潜り込んでしまった。


「……ということは……ですよ。わたしのことも……お好みなのですか……? ひゃぁ……っ」


 布団の膨らみが、もこもこと震えている。くぐもった声は、期待と照れが混ざり合って震えていた。


「え、それはもちろん……。これだけ毎日一緒にいて、可愛いと思ってないわけないだろ」


「……ふぇっ……あわわぁ……うぅぅー……はぅ……」


 布団の中から、言葉にならない可愛らしいうめき声が漏れ聞こえてくる。

 レナは布団の中で激しく身悶えしているようで、シーツが擦れる音と彼女の吐息だけが部屋に響いた。カズヤは、自分のベッドを占領して悶絶している美少女をどう扱っていいものか分からず、ただ赤面したまま立ち尽くしていた。



お揃いのパジャマと贅沢な予感


 レナの家のリビングに戻ってくると、彼女は時計をちらりと見て、弾むような声で言った。


「そろそろお風呂の準備ができる時間ですよ。お一人で大丈夫ですか?」


 カズヤは内心、冷や汗をかいていた。レナはあまりにも距離感が近く、そして無防備すぎる。その上、時折突拍子もない提案を平然と口にするのだ。


「お風呂の用意って……俺の家の方のか?」


「いいえ、この家のお風呂です。それにパジャマの準備もしてありますよ。……ふふ、実はわたしとお揃いなのですよ♪」


(うぅーん……ここまで至れり尽くせりだと、もう俺の家、必要ないんじゃないか? でも、いつ彼女が心変わりして一人にされるか分からないし、帰る場所がなくなるのはやっぱり不安だよな……)


 カズヤは複雑な心境を抱えつつも、彼女の厚意を無下にはできなかった。


「あ、ありがとな。……でも、俺が先でいいのか? お湯の汚れとか、女の子なら気にするだろ?」


「わたしは気にしませんって。ちょっと片付けたいことがあるので、相沢くんはお先にどうぞ」


 レナに背中を押されるようにして二階へ向かうと、そこには脱衣所とは思えないほど広く、清潔な空間が広がっていた。ホテルのような大きな洗面台に、見たこともないフカフカのタオルが積み上げられている。


 カズヤは、用意されていたパジャマを手に取った。上質なシルクのような手触り。これが彼女とお揃いなのだと思うと、着る前から心拍数が跳ね上がるのを感じた。


 服を脱ぎ、浴室の重厚な扉を開けると、そこには夜景が見える広い浴槽が待っていた。


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