33話 ベッドの上の小さな侵入者
予期せぬ再会と、重なる運命
「自分の部屋が気になるな……。一応、家の中でもあそこだけは綺麗に片づけていたんだけど」
カズヤを支えていたレナの腕が、期待に弾けるようにピクンと反応した。
「相沢くんのお部屋ですか。ご一緒しても……?」
レナの可愛らしい顔がカズヤを見上げ、琥珀色の瞳をキラキラと輝かせている。
(女の子に自分の部屋を見られるのは……流石に恥ずかしいな。でも、断る理由もないし……)
「別に……いいけど。面白い物なんて、何ひとつないぞ」
「えへへ。男の子の部屋を見るのは初めてなので……ドキドキしますね。どちらですか? 相沢くんの、お部屋ですかぁ……♪」
レナの弾むような足取りに合わせ、カズヤは奥にある自室の扉を開けた。
そこは、リビングの惨状が嘘のように整頓されていた。必要最低限の家具と、趣味の数少ない本。そして、クローゼットの端に、丁寧に掛けられた一着の制服があった。
その時――。
「わぁ……っ!? その制服……わたしと、同じ高校ですよ!」
レナが驚愕の声を上げ、カズヤの制服を指さして立ち尽くした。
「えっ……。綾瀬さんも、あの高校だったのか?」
「はい! わたし、今の今まで気づきませんでした……。相沢くん、わたしの先輩だったのですね……!」
レナは感極まったように、吊るされた制服の袖をそっと撫でた。
命の恩人として出会った少年が、実は同じ学び舎に通う身近な存在だった。その偶然という名の運命に、レナの頬はかつてないほど赤く染まり、その瞳にはさらに深い情熱が宿り始めていた。
「え、そ、そうだったんだ……。俺は、ちょっと……今は不登校になっていてさ。年は同じだし、先輩じゃなくて同級生だと思うぞ……」
カズヤは気まずそうに視線を外した。輝かしいお嬢様と同じ学び舎に籍を置いているという事実が、今の自分にはあまりに不釣り合いに思えたからだ。
「そうなんですか……。わたし、相沢くんと一緒に登校したいです……。お弁当を一緒に食べたり、放課後に図書室に寄ったり……」
レナは夢見るような心地で、指を組んで胸元に当てた。
「……でも、俺は学校で……イジメを受けていて。一緒にいると、綾瀬さんにまで迷惑がかかるって……」
「んふふ。わたし、お友達は結構多いので心強いですよ。大丈夫です。それに、何かあればお父様もいますし……一切、ご心配なく」
レナは力強く言い切ると、今度は一転して、とろけるような甘い顔でカズヤを見つめてきた。その潤んだ瞳で見つめられると、カズヤはもう言葉を飲み込むしかなかった。
「……まあ、可愛い女子と一緒に登校してみたいな、っていう願望はあるけど……」
カズヤの本音がポロリとこぼれる。本当に彼女に泥を塗るようなことにならないのなら、そんな奇跡のような日常を送ってみたい。
「それでは、決定ですね♪」
レナは弾けるような笑顔を見せ、カズヤの手をぎゅっと握りしめた。
孤独だった不登校児の日常に、眩いばかりの光が差し込もうとしていた。
ベッドの上の小さな侵入者
「それでは決定ですね♪」
レナは弾けるような声で宣言すると、まるで自分の部屋のようにカズヤのベッドへと勢いよく飛び込んだ。
「わぁ……っ。相沢くんの良い匂いがします……♪」
彼女はシーツに顔を埋め、うつ伏せのままニコニコと幸せそうに微笑んだ。そのまま、喜びを隠しきれない様子で両足を後ろにパタパタと動かす。
その拍子に、可愛らしいワンピースの裾がふわりと捲れ上がった。
露わになったのは、まばゆいほどに色白で、形の整った綺麗な太もも。カズヤの視線は、吸い寄せられるようにその眩しい白さに釘付けになり、心臓の鼓動が耳元でうるさいほどに鳴り響いた。
「ちょ、ちょっと……綾瀬さん。俺の匂いなんて、臭いだけでしょ……」
カズヤは動揺を隠すように、少しだけ顔を背けて呟いた。
「そんなことありません。ちゃんとお風呂に入って洗っているじゃないですか。……落ち着く、とっても良い匂いですよ……?」
レナはシーツから顔を上げ、不思議そうに首を傾げてカズヤを見つめてきた。その瞳は純粋そのもので、自分の無防備な姿がどれほどカズヤを狼狽させているか、全く気づいていない様子だった。
「わたし、ここでならぐっすり眠れそうです。……ふふ、どうしましょう?」
彼女のあまりにも無垢な誘い文句に、カズヤの緊張は限界を迎えようとしていた。




