表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キモデブと、琥珀色の守護天使  作者: あるふぁ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/47

11話 琥珀の猛進

琥珀の猛進


「……相沢くんはケガ人ですし、何よりわたしの命の恩人ですよ。それに、両親の許可もきちんといただきましたし、心配は無用ですっ」


 レナはこともなげに言い放ち、さらりとした琥珀色の髪を揺らした。その迷いのない言葉に、カズヤの思考は完全にフリーズする。


「はい? ……いや、いろいろと問題があるだろ。許可って、何をどう説明したんだよ……」


 カズヤの脳裏には、娘を救ったとはいえ、素性も知れない男の一人暮らし――それも古びた一軒家に、夏休み中泊まり込みで世話をしに行くことを「行ってらっしゃい」と笑顔で送り出す親の姿など、到底浮かばなかった。常識的に考えれば、即座に警察か弁護士が飛んできてもおかしくない事態だ。


「ふふ、正直にお話ししましたよ? 命を懸けて救ってくださった、とっても素敵で優しい方が一人で心細く入院されているのです、って。そうしたら、お父様もお母様も『それは恩返しをしなければね』と、快く背中を押してくださいました」


「……いや、それ絶対、別の意味での『恩返し』だろ。普通はお金とか、お礼の品とか……そういうことを言ってるんじゃないのか……別にそういうのを求めて助けたわけじゃないけど」


 静かな病室に、カズヤの驚愕と困惑の混じった声が虚しく響く。しかし、目の前の美少女は、その混乱ぶりさえも楽しむかのように、あるいは心からの喜びを表現するかのように、ただニコニコと眩しい太陽のような笑顔を向け続けていた。


「ですから、退院の日にはわたしがお迎えに上がりますね。相沢くんのお家、じいちゃん……お祖父様が遺してくださった大切なお家なのですよね? わたし、精一杯お掃除もお料理も頑張りますからっ」


(……これ、本気だ。本気で俺の家に来るつもりなのか……。いや、まさかな……俺と一緒に過ごそうと思う女の子、ましてや美少女なお嬢様が俺となんて……)


 カズヤは天井を仰ぎ、再びピー、ピーと鳴り続ける無機質な電子音に耳を澄ませた。生き延びた先に待っていたのは、孤独な静寂ではなく、琥珀色の嵐のようなお嬢様との、予測不能な共同生活になるのか!?



託された鍵


「うぅぅ……。そこまで……拒絶をされなくても……。ただ、わたしは少しでも相沢くんのお役に立ちたくて……」


 レナの琥珀色の瞳がみるみるうちに潤み、長い睫毛が細かく震え出した。今にも大粒の涙が零れ落ちそうなその痛々しい表情に、カズヤは心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受け、慌てて両手を振った。


「え、拒絶なんてしてないって! 違う、違うから。……分かったよ、綾瀬さんの好きにすればいい。ただ……俺、家事が全然できないからさ。家の中は散らかってるし、掃除するのも相当大変だと思うよ」


 その言葉を聞いた瞬間、レナの表情にパッと光が差し、湿った瞳が希望に輝いた。


「あの……相沢くんが病院に入院をされている間に、その、鍵を貸していただければ……。お掃除をして、もし特別な思い入れがなければ、少しだけお部屋をいじらせていただきたいです。もちろん、作業はわたしの信用できる者に任せますので!」


 レナはさらに身を乗り出し、切実な眼差しで訴えかけてくる。


 これまでの人生、カズヤは数え切れないほど裏切られてきた。大切な物を隠され、奪われ、親切なふりをして近づいてきた者に影で嘲笑われる。そんな、泥のように濁った経験ばかりが澱となって心に溜まっている。他人に鍵を預けるなど、本来の彼ならば正気の沙汰ではないはずだった。


 けれど、目の前で懸命に言葉を紡ぐ彼女になら、すべてを奪われてもいい。そう思わせる何かが、彼女の真っ直ぐな言葉には宿っていた。


(あの家は……優しいじいちゃんとの思い出はたくさんある。でも、それを見るたびに今の自分の情けなさを思い出して、申し訳なくなるんだ。模様替えをしてくれるなら、むしろ救われるのかもしれない……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ