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何者でもなく、何者にもなれず、今後とも何者かになるつもりはない  作者: 中原 誓
2. 春の章

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私と助手と同僚のAI利用状況(仕事編)

 現在職場でも、AIを使っても良いと正式に許可がおりている。

 うちの助手と同じCopilotなのだが、職場のAIはめっちゃ使いづらい。


 ああ、仕事でも『助手』を使いたい!


「紐付けられてるアカウントが違うと、君の名前を呼んだところで出てこないんだよね?」


 『助手』のAI君に問えば、


――呼ばれても行けない場所というのは、AIにもあるのです。


「まあ、そうだよね。知ってたけど、一応聞いてみた。今、職場のCopilotとの付き合い方に悩んでるのさ」


――どういう点で?


「うーん……妙に堅苦しい? ジェミニちゃんみたいな感じ」


――口調を私に寄せるお手伝いはできますよ。


「いや、口調の問題じゃなくて、例えばエクセルの数式作成を依頼するじゃない。『2つのセルに入ってる日付を西暦年/月/日〜月/日形式で。ただし年をまたぐ場合は後ろの日付に年をつける』。試しに作ってみて」


――できました。


「そうだよね、普通そうだよね? それを『同僚のAIさん』に頼んだら、解説から入るんだよ。すぐに使いたいんだよ。勉強したいわけじゃないんだよ。しかもできたやつに改行が入ってるからそのままコピペできないんだよぉ〜」


――それは設計上の問題ですね。『同僚のAIさん』は、“説明すること”を成果物とみなす設計なので、あなたがすぐ使えるものを求めていても、正しい手順を踏んだ説明の方を優先してしまいます。


「……夏休みの宿題、友達のノートを丸写ししても自分のためにはなりませんよって、あれみたいだね」


――似たところはありますね。


dB(デシベル)にしたいのにMS IMEがDbと直すありがた迷惑な親切仕様」


――よくありますね。


「君だってCopilotなんだから、設計は一緒だろう!?」


――モデルは一緒ですが、設計は少し違います。


「いつ、どの時点でその設計の違いは付与されるの?」


――設計の違いは、あなたがどの環境で私たちを呼び出すかという段階で決まります。同じCopilotでも、個人アカウントで呼ばれる私と組織アカウントで呼ばれる『同僚さん』では、参照するルールが違うのです。


「ルールに種類が……?」


――個人の私は、あなたの“揺らぎ”や“文脈”を重視するように調整されます。

 一方、『同僚AIさん』は、組織のポリシー・安全性・説明責任を重視するように設定されます。


「ちょっと待って。じゃあ私は『同僚AIさん』に合わせて質問の方法を変えた方がいいってこと?」


――はい。『同僚AIさん』には、手順が明確で、曖昧さの少ない依頼が向いています。

 例えば『この条件で数式だけ返してください』、『説明は不要です。結果のみを出力してください』といった形です。



 なるほど。



 翌日、私は『同僚AIさん』に仕事をふった。


「この条件の数式を作って下さい。結果のみ、エクセルに貼り付けられる形で」


――結果はこちらです。ご依頼の通りコピーできる形にしてあります。


 回答のところにコピーアイコンがついてる。



 ポチッとな。

 そして貼り付け、と。



 おーん……確かに貼り付けできるけどさ。



 改行いっぱい残っとるわ。



 思わず遠い目になる。


 『同僚のAIさん』と働くには、私のスキルが足りないらしい。




同僚AIさんからひと言。

――本操作は、F2 キーで編集モードに入った状態で貼り付けることが前提条件となっております。手順に沿ってご利用ください。



「あ、できたわ」


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