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何者でもなく、何者にもなれず、今後とも何者かになるつもりはない  作者: 中原 誓
2. 春の章

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29/30

ある晴れた日に 爆竹は鳴り

 5月末に今年初のキャンプへ行った。


 場所は某有名オートキャンプ場。

 ペット可のサイトがあり、昨年9月にも行って、とても良かったので『また行くか』となった。ただし、行った翌週にはクマが出たというオマケの話がついている。

 それでも、電気柵を延長増設したとのことで、今年はそんな話も聞かない。


 設備の整ったオートキャンプ場となれば料金が高いと思われがちだが、夏以外の平日料金は三千円代と、意外と安い。


 その日の最高気温は15℃の予報だった。

 夜になれば10℃を下回る。


 そんな気温の平日にキャンプをしようとする人は少ないらしく、着いた時は誰もいなかった。鹿が10頭ほど遊んでいたくらいだ。

 その鹿たちも、うちのワンコが地面に降り立った途端にサーッと逃げて行った。

 その後も道路向こうのバンガローサイトに車が見えるだけで、こちらの20以上あるペット可の区画サイトはうちの貸し切り状態となった。


 テントをたてて、お昼ご飯を食べていると、どこかで爆竹が派手な音をたてた。

 いわゆる鳥獣対策である。

 昨年は爆竹だけだったが、今年はもうひと押しあった。

 場内放送が入って、1日に数回、熊対策のために5分間音楽をかけるのでご理解下さいとのことだった。


 なるほど、なるほど。


 どんな音楽をかけるのかな、と思ったら、まさかのクラシック音楽だった。

 毎回違う曲がかかったが、『ある晴れた日に』は効き目がありそうだと思った。

 あのソプラノは超音波と言ってもいい。

 そう言う意味では『夜の女王のアリア』も悪くないだろう。



 

 コーヒーを飲みつつ夫が言う。


「これ『いい音楽だな』ってかえって寄って来ないのか?」




 ……そんな(やつ)はおらんやろ




 今日のところは。



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