どちらでお買い求めに?
春を告げるのは、花や鳥だけではない。
通勤中、毎朝見かけるおじさんが、赤いニット帽を脱いだ――春は無帽なのか……
暖かくなるにつれ、人だけでなく、鳥も獣も冬の毛を脱ぎ捨てる。
けれど、ここ数年、夏でもニット帽を被っている若者を見かける。
半袖の白いTシャツにニット帽。
たぶん冬の帽子とは素材が違うのだろうが、見た目は一緒だ。
あれはどういうファッションなのだろう。
私は、人は好きなファッションを好きに着ればいいとは思っている。
が、時には思わず二度見してしまうほどインパクトのある帽子に出会う事がある。
以前、成田空港で見た欧米系の男性は、ベトナムの伝統的な円錐形の帽子(日本の竹製の笠だったのかもしれない)を被って、堂々と前から歩いて来た。
私の頭の上にはてなマークが並んだ。
なぜ建物の中で?
なぜその帽子?
周囲の疑問などどこ吹く風。むしろ誇らしげな歩き方に、頭の上のそれがまるで冒険のアイテムショップで最初に買った『装備品』のようにさえ思えてきた。
勇者よ――思わず道を譲った。
二人目は、札幌の地下鉄で見た女性。
毛足の短いファー生地のヒョウ柄のスーツに、頭には同じ生地の帽子。
こちらも前から歩いてきた。
いや。あまり見つめては失礼だ。
あらぬ方に視線を向けて、目の端で女性を見ていると、横を歩いていた娘がそっとささやいた。
「お母さん、女豹がいる」
……くっ、不意討ちとは卑怯なり。
そうは言っても、帽子は自己表現だけでなく、実用性も大事である。
なんと言っても、年々暑くなる気候から身を守るために帽子や日傘は必須で、自転車に乗る人は、やはり帽子だろう。
今日、すれ違った自転車の女性は、真新しいベージュの帽子を被っていた。
――ああ! そこはやっぱり赤じゃないと!
心の中で、盛大に突っ込みを入れる。
その人の帽子のシルエットは、完全にパディ◯トンのものだった。
惜しい。




