第55話 悪役令嬢は、いつもと違う色を見る
翌朝。
ルシアンは、自室の衣装棚を前にして、いつもより長い時間そこに立っていた。
「ルシアン様?」
着替えを手伝う侍女が、不思議そうに声をかける。
「どうかなさいましたか?」
「……いえ」
返事をしながらも、ルシアンの視線は並べられた上着から離れなかった。
濃紺や深い緑、落ち着いた灰色。どれも見慣れているし、今までならその中から特に迷うこともなく一着を選んでいただろう。
ヴァレンティス家の男子用として仕立てられた服は、動きやすさを損なわない程度に装飾を抑え、色も比較的落ち着いたものが多い。兄のディルヴァンほど丈夫さを優先した作りではないが、それでも華美とは言い難かった。
昨日までなら、それで何の問題もなかった。
けれど今日は、なぜかいつもの色へ手が伸びない。
頭に残っているのは、昨日アルセリード邸で見たものだった。
オルティアが纏っていた淡い灰色。
リュネアの袖口に使われていた細かな刺繍。
エステルの柔らかな色合いの布地。
そして、その輪の中にいたヴェルシアナ。
彼女は誰かがすぐ隣へ座っても、髪へ触れても、袖へ手を伸ばしても、ほとんど気にしていなかった。
兄が近づいた時とは違った。
自分と話している時とも、まだ少し違う。
『……男性だから?』
昨日、馬車の中で口から漏れた言葉を思い出す。
もちろん、それだけですべて説明できるとは思っていない。
単に付き合いの長さが違うのかもしれないし、友人として積み重ねてきたものが違うだけかもしれない。それでも、男女の違いがまったく関係していないとも、今のルシアンには思えなかった。
ならば、ほんの少しだけなら確かめてみてもいいのではないか。
「もう少し、明るい色はありますか?」
侍女が瞬きをした。
「明るいお色、でございますか?」
「はい」
「もちろんございます。ただ……本日は、こちらをお召しになる予定でしたが」
侍女が示したのは濃紺の上着だった。
いつもの自分なら、特に不満はない。
今日も別に嫌いになったわけではなかった。
「予定を変えてはいけませんか?」
「いえ、そのようなことはございません」
侍女はすぐに首を横へ振り、衣装棚の奥へ手を伸ばした。
「でしたら、こちらはいかがでしょう」
取り出されたのは、薄い青灰色の上着だった。
明るすぎる青ではなく、朝の空へ薄雲を重ねたような静かな色をしている。襟元には同系色の糸で細かな蔓模様が刺繍され、袖口にも銀糸がわずかに使われていた。
男子用として仕立てられたものではある。
けれど普段ルシアンが選ぶ服より、明らかに柔らかな印象だった。
「こういうものも、あったのですね」
「以前、奥様がお選びになったものです。ルシアン様は濃いお色を選ばれることが多かったので、まだほとんどお召しになっておりません」
言われてみれば、仕立てた時に一度見た覚えがある。
ただ、その時は特に興味を持たなかった。
ルシアンは上着へ手を伸ばした。
布地も普段より少し柔らかい。
「これにします」
「かしこまりました」
侍女が上着を広げる。
着替えを終えて鏡の前へ立つと、確かにいつもとは少し違って見えた。
顔が変わったわけではない。
髪型も大きく変えたわけではない。
ただ、濃い色で囲まれていた時より、元々白い肌や淡い髪色が目立っている。
「……変ですか?」
思わず尋ねると、侍女はすぐに首を横へ振った。
「いいえ。とてもよくお似合いでございます」
「本当に?」
「はい。むしろルシアン様のお顔立ちですと、こうした淡いお色も大変映えるかと」
自分では、まだよく分からない。
けれど鏡に映った姿へ違和感はなかった。
少なくとも、思っていたより悪くない。
「髪も、少し変えますか?」
侍女が何気なく尋ねた。
ルシアンは鏡越しに彼女を見る。
「変える?」
「いつもより少し長く見えるよう、耳へかけず流すこともできます。ですが、本日はお出かけではございませんので――」
「それもお願いします」
侍女の動きが、一瞬だけ止まった。
「かしこまりました」
今度は先ほどより少しだけ、声に楽しそうな響きが混じっていた。
◇
「今日は珍しい色を着ているのね」
朝食の席で最初に気づいたのは、母だった。
ヴァレンティス辺境公爵夫人はティーカップを置き、向かい側に座った次男を見つめる。
「似合わないでしょうか」
「まさか」
答えは早かった。
「とても似合っているわ。そういう色も選べるように何着か作らせていたのに、あなたがちっとも着てくれなかっただけよ」
「そうでしたか」
「ええ」
母は少し楽しそうに目を細めた。
「何か心境の変化でもあった?」
ルシアンはパンへ伸ばしかけた手を止める。
「……特には」
「そう?」
「たまには違うものもよいかと思っただけです」
嘘ではない。
全部を話していないだけだ。
母はそれ以上追及しなかった。
「そう。それならよかったわ」
ただし、口元には妙に意味ありげな笑みが残っている。
ルシアンが気づかないふりをしていると、少し遅れてディルヴァンが食堂へ入ってきた。
「おはよ――」
途中で止まる。
兄の視線が、ルシアンの頭から足元まで一度移動した。
「何ですか」
「いや」
「何です?」
「今日、なんか違うな」
「服が違います」
「それは見れば分かる」
ディルヴァンは自分の席へ座りながら、もう一度弟を見る。
「そういうのも似合うじゃん」
あまりにも簡単に言われ、ルシアンの方が少し拍子抜けした。
「……そうですか」
「うん」
それだけだった。
兄はすぐに朝食へ意識を移している。
からかわれる可能性も少しは考えていたのだが、本当に何とも思っていないらしい。
ルシアンは自分の袖口へ目を落とした。
銀糸の刺繍が、朝の光を細く反射している。
昨日までは気にも留めなかった模様なのに、今日は少し綺麗に見えた。
◇
その日の午後。
ルシアンは、自分の考えが思っていたより早く試されることになった。
「今日、ヴェルシアナ来るぞ」
昼食を終えたあと、ディルヴァンがあまりにも普通にそう言ったからだ。
ルシアンは読んでいた本から顔を上げた。
「……今日ですか?」
「うん」
「聞いておりません」
「今言った」
「そういう意味ではありません」
ディルヴァンは首を傾げた。
「昨日、父上たちが話してたぞ。アルセリード家から昔の北部資料の写しを持ってくるって」
それなら聞いていなくても不思議ではない。
父同士の用事だ。
ヴェルシアナが必ず同行するわけでもない。
「ヴェルシアナも来るって今朝聞いた」
「……そうですか」
「何?」
「何でもありません」
ルシアンは再び本へ視線を落とした。
けれど、文字が先ほどまでほど頭に入ってこない。
偶然だ。
今日この服を選んだことと、ヴェルシアナが来ることには何の関係もない。
それでも、鏡に映っていた朝の自分が頭へ浮かぶ。
昨日より柔らかく見えるだろうか。
彼女は何か気づくだろうか。
「ルシアン」
「何です?」
「頁、ずっと同じだけど」
指摘されて、ようやく自分が一頁も進んでいないことに気づいた。
「考えながら読んでいるだけです」
「ふうん」
兄はそれ以上聞かなかった。
その「ふうん」が少し腹立たしかった。
◇
ヴェルシアナがヴァレンティス邸へ到着したのは、それから一時間ほど後だった。
父レオルディスとともに馬車を降り、屋敷へ案内される。
今日の目的は、図書館で見つけた古い資料と、アルセリード家に残されていた写本の一部を照合することらしい。
大人たちの話に自分が必要な場面はほとんどない。
ならば家で待っていてもよかったのだが、ディルヴァンから「前に見つけた訓練装置を少し変えた」と聞かされていたので、それを見に来た。
つまり、半分は遊びである。
こういう理由で外出することに、以前ほど罪悪感も覚えなくなってきた。
「ヴェルシアナ!」
玄関へ入ってすぐ、聞き慣れた声が飛んできた。
ディルヴァンだ。
「こんにちは、ディルヴァン様」
「来たな」
「来るとお伝えしていたでしょう?」
「本当に来たって意味」
「そうですか」
相変わらずだ。
レオルディスがヴァレンティス辺境公爵とともに奥へ向かうのを見送り、ヴェルシアナはディルヴァンの隣へいる少年へ目を向けた。
「こんにちは、ルシアン様」
「こんにちは、アルセリード嬢」
そこでヴェルシアナは、一度だけ瞬きをした。
何か違う。
顔は当然同じだし、髪型も大きく変わったわけではない。
けれど、いつもより全体の印象が柔らかい。
視線を下げ、すぐに理由へ気づいた。
「今日は、いつもと少し雰囲気が違いますね」
ルシアンの肩が、ごく僅かに動いた。
「分かりますか?」
「ええ。お召し物の色が明るいですね」
淡い青灰色。
細かな銀糸。
髪も普段より自然に頬の横へ流しているように見える。
ヴェルシアナは素直に思った。
似合う。
かなり。
元々中性的なくらい整った顔立ちなのだから、柔らかな色を合わせれば違和感が出るどころか、むしろ普段より顔立ちそのものがよく見える。
前世の自分なら、こういう顔を見ても「女性人気が出そうなキャラだな」くらいで終わっていただろう。
今、実際に目の前へ立たれても、その感想自体は大きく変わらない。
ただ、実物を見ると改めて思う。
顔が整いすぎていて、淡い色が普通に似合いすぎる。
「よくお似合いですよ」
ヴェルシアナはそのまま口にした。
ルシアンの目が少しだけ見開かれる。
「……本当ですか?」
「なぜ疑うのです?」
「いえ」
返事をしながらも、彼の視線はこちらから離れない。
「普段と違うので、少し気になっただけです」
「違っていても、似合うものは似合いますよ」
ヴェルシアナはもう一度上着を見る。
「その刺繍も綺麗ですね。近くで見てもよろしいですか?」
ルシアンが固まった。
「……はい」
許可が出たので、ヴェルシアナは一歩近づいた。
袖口にある銀糸を見る。
細い蔓のような模様が、生地と同じ青灰色の糸の上へ重ねられていた。
「細かいですね。リュネア様が見たら喜びそうです」
そう言って顔を上げる。
思ったより近かった。
けれどヴェルシアナは、特に下がらなかった。
前ほどルシアンそのものを警戒する必要がないと、少しずつ分かってきている。
温室では彼の判断を信用できた。
図書館では一緒に本を読み、自分が理由もなく彼を避けていたことについても、すでに向き合った。
そうして積み重ねたものがある以上、服を見るために一歩近づいた程度でいちいち構える方が、今ではかえって不自然だった。
「これは刺繍ですか? それとも織り込んでいるのでしょうか」
「刺繍だと思います」
「綺麗ですね」
「……ありがとうございます」
ルシアンの返事が少し遅かった。
「どうされました?」
「いえ」
そう答えた彼の表情は、なぜか少しだけ嬉しそうだった。
ヴェルシアナは深く考えず、元の位置へ戻る。
その様子を、ディルヴァンが横からじっと見ていた。
「何です?」
ヴェルシアナが尋ねる。
「いや」
「何か?」
「ルシアン、今日なんか機嫌いいなと思って」
「兄上」
「何だよ」
「余計なことを言わないでください」
「機嫌いいのはいいことだろ」
兄弟のやり取りを聞きながら、ヴェルシアナは首を傾げる。
確かに、ルシアンはいつもより少し表情が柔らかい気がした。
服が気に入っているのだろうか。
それなら悪いことではない。
◇
ディルヴァンが見せたかったという訓練装置は、以前使った魔力回路の簡易版だった。
三つあった回路を五つへ増やし、それぞれに違う色の石が置かれている。
「今度は、途中で流れ変えられるようにした」
「ご自分で?」
「設計は俺。作ったのは大人」
「そこをちゃんと分けて仰るのはよいですね」
「前なら俺が作ったって言ったと思ってる?」
「少しだけ」
「ひどいな」
「でも今は違うのでしょう?」
「まあな」
ディルヴァンは特に気にした様子もなく装置の説明を始めた。
今回の仕組みは、魔力を中央へ集めるのではなく、複数の道から正しい経路を選びながら進めるものらしい。
ディルヴァンは全体の動きを判断する。
ヴェルシアナは流れの偏りを見る。
ルシアンは石に刻まれた小さな印と順番を覚える。
前回と似ているようで、役割は少し違った。
訓練が始まると、ルシアンはすぐに服のことを忘れたようだった。
「次、右です」
「本当?」
「二つ前と同じ印があります。その次が青でした」
「じゃあこっちか」
「待ってください」
ヴェルシアナが止めると、二人が同時にこちらを見る。
「右へ行く前に、こちらの流れが少し強すぎます。このまま繋ぐと、青へ入る前に片方が溢れます」
「じゃあどうする?」
「少しだけこちらへ逃がします」
ヴェルシアナは指先を近づけた。
風糸と同じで、大きく押し返す必要はない。
流れの一部だけを細く分け、必要な量だけ別の回路へ逃がす。
魔力が細い道を通り、余分な分だけが隣の石へ移った。
「今です」
「よし」
ディルヴァンが次へ繋ぎ、ルシアンが順番を確認する。
三人の役割が噛み合うと、最後に中央の石が淡く光った。
「できた」
ディルヴァンが笑う。
「前より早かったな」
「回路が増えているのですから、単純には比べられないでしょう」
「でも失敗しなかった」
「それはそうですね」
ヴェルシアナも少しだけ笑った。
その時だった。
「アルセリード嬢」
「はい?」
「先ほどの魔力、前とは違いましたね」
ルシアンが回路を見ながら言った。
「分かりました?」
「前は別の流れへ移した時に、石が一度大きく光りました。今日はほとんど変わらなかったので」
ヴェルシアナは回路を見る。
確かに、以前なら別の道へ魔力を移した瞬間、余計に送りすぎて石の光まで強くなっていた。
今日はそれがない。
風糸を覚えてから、空気だけでなく魔力そのものを扱う時にも、少しずつ同じ感覚が使えるようになっているらしい。
「最近、必要な分だけ動かす練習をしているのです」
「だからですか」
「まだ失敗の方が多いですけれど」
「それでも、前とは違いました」
ルシアンはごく自然にそう言った。
ヴェルシアナは一瞬だけ彼を見た。
自分では気づかなかった変化を、こうして別の人から指摘されるのは少し不思議だ。
けれど嫌ではない。
「ありがとうございます」
「いえ」
ルシアンが微笑む。
その笑顔まで、今日はいつもより柔らかく見えた。
たぶん服の色のせいだろう。
「本当に、その色がお似合いですね」
ヴェルシアナが改めて言うと、今度こそルシアンが完全に動きを止めた。
「……二回目です」
「何がです?」
「似合うと仰るのが」
「二回言ってはいけませんでした?」
「いえ」
ルシアンは少しだけ視線を逸らした。
「嬉しいだけです」
あまりにも素直に言われたので、ヴェルシアナの方が少し意外だった。
「でしたら、よかったです」
それで話は終わった。
少なくとも、ヴェルシアナの中では。
◇
夕方。
アルセリード家の馬車を見送ったあと、ルシアンはしばらく玄関前に立っていた。
「帰ったぞ」
隣にいたディルヴァンが言う。
「見れば分かります」
「じゃあ何見てんの?」
「別に」
「今日ずっと変だな」
「兄上が気にしすぎです」
「そう?」
ディルヴァンはあっさり引いた。
「まあ、機嫌いいならいいけど」
それだけ言って、先に屋敷へ戻っていく。
ルシアンはもう一度だけ、馬車が消えた門の向こうへ視線を向けた。
今日、ヴェルシアナは自分が近づいてもほとんど距離を取らなかった。それどころか、袖の刺繍を見るためとはいえ、彼女の方から自然に一歩近づいてきた。
『よくお似合いですよ』
その言葉を思い返すと、胸の奥にはまだ小さな嬉しさが残っている。
服を変えたからなのか、髪をいつもより柔らかく整えたからなのか。それとも昨日考えたこととはまったく関係なく、これまで一緒に過ごしてきた時間の分だけ彼女の警戒が薄れていただけなのか、今のルシアンにはまだ判断できない。
けれど理由が何であれ、一つだけ確かなことがあった。
昨日より、近かった。
その事実だけは、何度思い返しても変わらない。
自室へ戻ったルシアンは扉を閉めると、朝にも立った鏡の前へ向かった。
そこに映っているのは、淡い青灰色の上着に細い銀糸の刺繍をあしらい、耳へかけず自然に髪を流した自分だった。
朝は、ヴェルシアナからどう見えるのかを考えて選んだ。
それは間違いない。
少しでも警戒されにくくなるならと思ったからこそ、普段なら手に取らない色を選び、髪型まで変えてみた。
けれど一日その格好で過ごしてから改めて鏡を見ると、朝とは少し違うものが目に入る。
濃い色を着ている時より顔周りが明るく見えるし、袖を少し動かせば銀糸が光を拾い、角度によって蔓模様の見え方まで変わる。
今までなら、そんなところまで服を眺めたことはなかった。
服は着るものであって、そこに何が刺繍されているのかをわざわざ見比べることもなければ、色によって自分の顔がどう見えるのかを考えたこともない。
ルシアンは袖口を指でなぞりながら、鏡の中の自分を見た。
「……悪くない」
ヴェルシアナに褒められたから、そう思っているだけなのかもしれない。
もし今日、彼女に似合わないと言われていたなら、今とは違う感想を持っていた可能性だってある。
それでも、明日になったらすぐいつもの濃紺へ戻したいとは思わなかった。
むしろ、今日のような色をもう一度着てもいいと思う。
それとは別に、もう一つだけ気になっていることもあった。
昨日見た令嬢たちの服には、今日の自分のものよりさらに細かな刺繍や、柔らかな飾りが使われていた。オルティアの服には布そのものの落ち着いた美しさがあり、リュネアの袖口には、小さなところまで目を引く意匠があった。
あれくらいなら、男子用の服にも取り入れられるのだろうか。
そして自分にも似合うのだろうか。
そこまで考えてから、ルシアンは鏡の中の自分と目が合った。
「……何を考えているんだろう」
思わず口元が少し緩んだ。
まだ何かを決めたわけではない。
女性の服を着たいと思ったわけでもなければ、自分の服装そのものを大きく変えたいと考えているわけでもない。
ただ、今まで選ばなかったものを一つ選んでみたら、思っていたよりずっと悪くなかった。
ヴェルシアナも似合うと言ってくれた。
そして、その言葉を抜きにしても、鏡の中の自分を嫌いではなかった。
それだけで今は十分だった。
昨日まで存在しなかった選択肢が、一つ増えた。
次に服を選ぶ時、その選択肢をもう一度手に取るかもしれないし、今度は別の色を試してみるかもしれない。
少なくともルシアンは、そう考えた自分を今度は否定しなかった。




