第52話 悪役令嬢は、風を細くする
図書館から戻った翌日、ヴェルシアナは庭の一角に用意された小さな木机を前にして、朝から妙な敗北感を覚えていた。
机の上に置かれているのは、白い羽根が一枚、薄い紙が一枚、それから少し離れた位置にある小さな銀色の輪だけだった。
どれも息を吹きかければ簡単に動いてしまうほど軽い。
それなのに今のヴェルシアナにとっては、大きな風を起こすよりも、こうした軽いものを必要なだけ動かす方がよほど難しい。
「先生。もう少し、魔術訓練らしいものはございませんか」
正面に立つヴィクトルは、細い眼鏡の位置を指先で直した。
「ございますよ」
「でしたら、そちらを――」
「これが終われば」
逃げ道を作る暇すらなかった。
少し離れた木陰にはミレーヌが控えており、そのさらに後ろには護衛もいる。当然ながら、誰一人としてヴェルシアナに助け舟を出す気配はない。
ヴィクトルは机の上の羽根へ視線を落とした。
「昨日、本を風で動かしたそうですね」
「動かしたというより、水路へ落ちそうだった本の軌道を少し変えただけです」
「その『少し変えただけ』が重要なのです」
ヴェルシアナは眉を上げる。
「重要なのですか?」
「今までのあなたなら、本そのものを真正面から吹き戻そうとしたでしょう。その結果、本だけでは済まず、周囲にあった紙や人の髪まで巻き込んでいた可能性が高い」
「……否定しづらいですね」
「少なく見積もって、です」
「先生」
「事実です」
相変わらず容赦がない。
ヴィクトルはそのまま、先日ヴァレンティス家で行った訓練についても話を移した。
「三人用の魔力回路では、隣へ魔力を流したとも聞きました」
「それについては、私自身もよく分かっておりません。同じことを今すぐしろと言われても、再現できる自信はありませんよ」
「それで構いません。今の段階では」
「構わないのですか?」
「一度起きた現象を、二度目も三度目も同じように行えるようになって初めて技術と呼べます。ただし、まだ再現できなくても、何が起きたのかを並べれば、あなたがどちらへ進み始めているのかは分かる」
そう言って、ヴィクトルは羽根の周囲を指先でなぞるように動かした。
「グランセル領では周囲の魔力の偏りを感じ取り、ヴァレンティス家では流れていた魔力を別の回路へ分けた。そして昨日は、本へ直接大きな力を加えず、その落下先にある空気の流れだけを僅かに変えた」
三つを続けて聞かされると、ヴェルシアナにもようやく共通点が見えてくる。
どれも、何もないところから大きな力を作って押しつけたわけではない。
すでに存在しているものを感じ取り、その流れの一部だけへ手を入れている。
「つまり、まず流れを見る訓練をするということでしょうか」
「半分だけ正解です。見るだけなら観測でしょう。あなたが覚えるべきなのは、見つけた流れへ必要な分だけ触れることです」
ヴィクトルは羽根を机の中央へ移した。
「あなたに必要なのは、足す訓練ではありません。減らす訓練です」
その言葉自体は、以前にも似た形で聞いたことがある。
けれど今は、単に魔力を弱くしろと言われているわけではないのだと分かる。
必要な場所へ、必要なだけ流し、余計なところには触れない。
大きな力を持っているからこそ、その使い方を狭くしていく。
「この羽根を、あちらの銀輪まで動かしてください」
羽根と輪の距離は、一メートルにも満たない。
普通に風を起こすだけなら、難しい距離ではない。
「ただし、隣の紙は動かさないこと」
案の定、条件が付いた。
羽根のすぐ横には薄い紙が置かれており、その間は指一本分ほどしか空いていない。
ヴェルシアナは机を見つめ、それからヴィクトルへ視線を戻した。
「最初から難しくありません?」
「だから練習するのです」
正論だけに腹立たしい。
ヴェルシアナは小さく息を吐き、机へ向き直った。
◇
一度目は、羽根と紙が仲良く一緒に飛んだ。
二度目は、なぜか羽根がほとんど動かず、紙だけが机の端まで滑っていった。
三度目になると、羽根は予想以上に高く舞い上がり、緩やかな弧を描いてヴィクトルの肩へ着地した。
庭に妙な沈黙が落ちた。
「……申し訳ありません」
ヴィクトルは肩へ乗った羽根を摘まみ、何も言わず机の中央へ戻した。
「今のはですね」
「説明しなくて結構です」
「はい」
少し離れた木陰で、ミレーヌが俯いた。
笑ったのかと思ってそちらを見ると、彼女は何事もなかったように水差しの位置を整えている。
たぶん笑った。
けれど問い詰めても認めないだろう。
ヴェルシアナはそれ以上気にせず、もう一度羽根へ意識を戻した。
これまで風魔法を使う時、意識はいつも対象そのものへ向いていた。
羽根を動かしたければ羽根へ風を当て、何かを止めたければ逆向きの力をぶつける。
力を扱うというより、対象を直接どうにかしようとしていたのだ。
しかし昨日、本が水路へ落ちそうになった時は違った。
本をこちらへ引き戻したわけではない。
その先にあった空気へ横からわずかに干渉し、落下する道筋だけを変えた。
ならば今回も、羽根そのものへ意識を集中させる必要はないのかもしれない。
庭は完全な無風ではない。
少し離れた木々の葉が揺れ、時折ヴェルシアナの銀髪も頬へ触れる。目には見えないだけで、机の上にも当然同じように空気が流れている。
その流れを無視して、新しい風を大きく作るから周囲まで巻き込む。
ヴェルシアナは指先へ集める魔力を小さくしながら、羽根の周囲へ届く分だけを意識した。
量を減らすことばかり考えると、自分の中にある魔力の大きさへ意識を取られてしまう。
だから今回は、「弱くする」のではなく、「広げない」と考える。
羽根へ向かう細い道を一本だけ作る。
指先から流れ出した魔力が空気へ混ざると、羽根の先端がわずかに震えた。
隣の紙は動いていない。
「そのままです」
ヴィクトルの声が落ちる。
ヴェルシアナは返事をせず、今できた細い流れだけへ意識を集中させた。
風をぶつけるのではなく、もともと動いている空気の一部へ自分の魔力を沿わせ、その向きをほんの少しだけ変える。
すると羽根が机の上を数センチ滑った。
今までとは明らかに違う。
大きく飛ばしたわけでもなく、紙を巻き込んでもいない。
その小さな成功に気を取られ、もう少し進めたいと思った瞬間、無意識に魔力を足してしまった。
細かった流れが一気に膨らみ、羽根は銀輪を越えて机の端から落ち、隣の紙も半分ほどめくれ上がった。
ヴェルシアナは床へ落ちた羽根を見つめる。
何が失敗だったのかは、自分でも分かった。
「今のは悪くありません」
ヴィクトルの言葉に、思わず顔を上げた。
「先生が褒めました」
「次も同じようにできれば、ですが」
やはりヴィクトルだった。
◇
休憩を挟みながら何度も繰り返すうちに、最初の頃のように羽根と紙をまとめて吹き飛ばすことは減っていった。
ただし、一度うまくいった感覚を再現しようとすると、その成功を追いかけるせいでかえって力が入り、気づけば魔力量まで増えている。
大きな風なら、一度掴んだ感覚を強く再現すればよかった。
細かな制御では、それが逆に失敗へつながる。
「魔力を出さないようにする方が疲れるなんて、少し納得がいきません」
休憩用の椅子へ座り、ミレーヌから水を受け取る。
「出す方が楽です」
「存じております」
間を置かず返されたので、ヴェルシアナは水を飲みながら彼女を見る。
「即答でしたね」
「これまで何度も拝見しておりますので」
「そうですか」
否定はできなかった。
少し離れたところでは、ヴィクトルが先ほどまでの結果を記録用紙へ書き留めている。
ヴェルシアナはその様子を眺めながら、ふと疑問を覚えた。
「先生」
「何でしょう」
「出力を抑える練習自体は、以前からしていましたよね」
「していました」
「では、今日していることとは何が違うのです?」
ヴィクトルの筆が止まる。
「以前のあなたは、大きく作った魔法を後から弱くしようとしていました」
ヴェルシアナはその言葉を頭の中で置き換える。
「今日は、最初から小さく作る?」
「そうです」
似ているようで、確かに違う。
これまでの自分は、まず大きな風を生み出し、それを後から抑えようとしていた。
けれど一枚の羽根を動かすのに、最初から大きな風を作る必要はない。
「あなたは魔力が足りないことで困るより、余計に出して困る可能性の方が高い。ならば最初から、目的に必要な幅だけを作るべきです」
ヴィクトルは近くに置かれていた裁縫用の糸を一本取り、机の上へ置いた。
「例えば、これくらい」
ヴェルシアナは糸を見る。
「細すぎません?」
「だから練習するのです」
ヴィクトルは糸の片端を指で押さえた。
「風を面として捉えるのではなく、線として捉えてください。幅を広げず、周囲を巻き込まず、必要なところだけを通す」
「線……」
その言葉には覚えがあった。
ヴァレンティス家の訓練装置で、隣の魔力回路へ流した時。
自分は太い力を押し込むのではなく、細いものを一本だけ通すような感覚を持っていた。
「同じことを風でも行うのですね」
「正確には、同じイメージを利用する、です。実際に風を糸の形へ固定する必要はありません。今は、あなた自身が余計に広げないための目印として使いなさい」
ヴェルシアナはしばらくその糸を見つめたあと、再び机の前へ戻った。
◇
午後になる頃には、庭を抜ける風の向きが朝とは変わっていた。
木立の間を通る風は柔らかく、机に置かれた羽根も時折その影響でわずかに揺れている。
初めのうちは、その自然の風が邪魔だと思っていた。
自分で起こしたものなのか、外から流れてきたものなのかが分かりづらく、条件が一定にならないからだ。
けれど何度も失敗しているうちに、ヴェルシアナの中で考え方が少しずつ変わっていった。
そもそも空気は、最初から動いている。
それを無視し、自分の風だけですべてを動かそうとするから、余計な力が必要になるのではないか。
「先生」
「はい」
「自然の風を止めてから動かす必要は、ないですよね」
ヴィクトルが眼鏡越しにこちらを見る。
「ようやくそこへ辿り着きましたか」
言い方には引っかかるが、答え自体は肯定だった。
「周囲の流れを感じ取れるなら、わざわざ逆らう必要はありません。利用できるものは使いなさい」
ヴェルシアナは羽根へ視線を戻した。
今は右から左へ弱い風が流れている。
銀輪は羽根の斜め前にあるため、真っ直ぐ風を当てれば自然の流れとぶつかる。
ならば、今ある風を少しだけ曲げればいい。
指先へ魔力を集める。
今度は「弱く」とは考えなかった。
必要な場所まで届く一本だけを作る。
細い糸のように、周囲へ広げず、自然の風へ沿わせていく。
その一部だけを斜めへ導くと、白い羽根が机の上をゆっくりと滑り始めた。
隣に置かれた紙は、ほとんど揺れていない。
ヴェルシアナは指先へ意識を集めたまま、羽根が進む先だけを追った。
最初は滑らかに進んでいたものの、銀輪へ近づくにつれて少しずつ勢いを失い、やがて途中で止まりかける。
以前なら、ここで反射的に魔力を足していただろう。
けれど今回は、それをしない。
流れを太くすれば、また隣の紙まで巻き込む。
必要なのは力を増やすことではなく、今ある細さのまま、途切れかけた道を少しだけ先へ伸ばすことだ。
ヴェルシアナは魔力の幅を変えないよう意識しながら、その先だけへ静かに送り込んだ。
すると止まりかけていた羽根が、再びゆっくりと動き始める。
自然の風に押される力と、ヴェルシアナがほんの僅かに変えた流れが重なり、羽根は銀輪へ向かって少しずつ距離を縮めていった。
あと少し。
ここで急げば、また失敗する。
ヴェルシアナは力を足したくなる感覚を抑え、細い流れの形だけを崩さないように保った。
やがて白い羽根の先端が銀輪の内側へ入り、そのまま残っていた勢いを失うように静かに止まった。
隣の紙は、最初の位置から動いていない。
ヴェルシアナ自身もしばらく動かなかった。
成功した。
そう口にした瞬間に、今掴んだばかりの感覚が逃げていきそうで、まず指先に残っているものを確かめたかった。
ヴィクトルが机へ近づき、羽根と紙を順番に確認してから、最後にヴェルシアナの手を見る。
「……今のは悪くありません」
朝と同じ言葉だった。
けれど今度は、ヴェルシアナも少しだけ笑った。
「次も同じようにできれば、ですよね」
「学習しましたね」
「先生のおかげで」
「その言葉だけ聞けば、非常に素直な生徒なのですが」
「心から申し上げておりますよ」
「では、もう少しそれらしい顔で言ってください」
言われて初めて、自分が少し眉を寄せたままだったことに気づく。
木陰から水を持って近づいてきたミレーヌの口元が僅かに緩んでいたが、今回は追及しなかった。
せっかく掴んだ感覚を、余計なことで散らしたくない。
ヴィクトルは机の上に置かれていた細い糸と、輪の中に収まった羽根を見比べた。
「今の扱い方は、今後も他の風魔法とは分けて練習した方がよいでしょう」
「分けて?」
「感覚を呼び戻すためにも、名前があった方が便利です」
ヴェルシアナは机の上の糸を見る。
今日初めて、自分の風が「どれだけ大きくできるか」ではなく、「どこまで細くできるか」という形で成功した。
必要な場所まで細く通し、余計なものには触れない。
「風の糸、でしょうか」
「分かりやすくはありますね」
「先生が糸を置いたからでは?」
「私は名称まで指定していません」
妙なところだけ責任を避ける。
ヴェルシアナはもう一度、細い糸へ視線を落とした。
「では――風糸。《ふうし》」
口にしてみると、不思議と先ほどの感覚に合っていた。
ヴィクトルも少し考えたあとで頷く。
「悪くありません」
「今日は二度も『悪くありません』をいただきましたね」
「それを褒め言葉だと理解できるようになったのなら、多少の進歩です」
そう言った直後、ヴィクトルは銀輪の中にあった羽根を元の位置へ戻した。
「では、もう一度」
「終わりではないのですか?」
「一度できただけでしょう」
言われると思った。
そこからさらに十回。
完全に成功したのは四回だった。
羽根が途中で止まったこともあれば、銀輪を僅かに越えたこともあり、一度だけ隣の紙の端を揺らしてしまった。
それでも朝とは明らかに違う。
最初は偶然に近かった細い流れが、少しずつ自分の意思で作れるものへ変わり始めている。
最後の一回を終える頃には、腕よりも頭の奥が重く感じられた。
「今日はここまでです」
ようやく終了を告げられ、ヴェルシアナは長く息を吐いた。
「大きな風を出した時より疲れました」
「当然でしょう。普段使っていない部分を使ったのですから」
ヴィクトルは記録用紙をまとめながら、少しだけ間を置いた。
「ですが、この方向で間違いありません」
その一言に、ヴェルシアナは自然と姿勢を正した。
「私、魔力量を減らせるようになればよいのだと思っていました」
「それも必要です。しかし、あなたの場合は減らすだけでは足りません」
「では?」
「多く持っているものを、必要な場所へ必要なだけ流すことです」
ヴィクトルは机の羽根を指した。
「今日、あなたが動かしたのは羽根だけではありません。羽根が通るための流れそのものです」
その言葉を聞き、ヴェルシアナは少し黙った。
昨日の本も。
ヴァレンティス家の魔力回路も。
今日の羽根も。
自分が直接どうにかしたのは、対象そのものではなかった。
その周囲にある流れへ触れ、行き先だけを変えている。
強い風をぶつければ、羽根を動かすこと自体はもっと簡単だっただろう。
けれど、それでは隣の紙まで巻き込む。
一つだけ動かしたいのなら、一つだけが動く道を作ればいい。
その考え方は、不思議と魔法以外にも覚えがあった。
誰かが困っているからといって、その人ができることまで奪う必要はない。
全部を自分でどうにかしようとすれば、良かれと思ってしたことでも、別の何かまで巻き込んでしまうことがある。
必要な場所へ、必要なだけ手を入れる。
簡単そうに聞こえるのに、実際にやるとなるとひどく難しい。
「……難しいですね」
ヴェルシアナが呟くと、ヴィクトルは記録用紙から顔を上げた。
「だから覚える価値があります」
珍しく、嫌味のない答えだった。
◇
夕方。
自室へ戻ったヴェルシアナは、机の上に置かれた一枚の紙を見つめていた。
今日だけで十分に疲れている。
ヴィクトルからも、自主練習をするなら数回までにしておくよう言われていた。
だから、ほんの一度だけ確かめる。
窓から入り込んだ夕方の風が、紙の端を僅かに震わせている。
ヴェルシアナは昼間の感覚を思い出しながら、その流れの中へ自分の魔力を一本だけ通した。
新しく風を作るのではなく、今ある風へ沿わせる。
広げず、必要な場所だけへ届かせる。
紙の端が、ゆっくりと持ち上がった。
隣に置かれていた別の紙は動いていない。
そこまで確認したところで、ヴェルシアナはすぐに魔力を止めた。
「……できた」
小さく漏れた声を、ちょうど紅茶を運んできたミレーヌが拾った。
「成功なさいましたか?」
「一応は。ただ、まだ安定していません。今日も失敗の方が多かったですし」
「昨日の本も、同じことだったのでしょうか」
「たぶん。昨日は無意識でしたけれど」
「では、今日はそれをご自分でなさったのですね」
ミレーヌはそれ以上褒めなかった。
代わりに、机の上へ積まれていた書類のうち一枚を取り上げる。
「それでしたら、こちらは守っていただけそうですね」
「何からです?」
「お嬢様の風からです」
ヴェルシアナはしばらく黙った。
「……以前、一度飛ばしましたよね」
「三枚ほどでございました」
「そこまで正確に覚えているのですね」
「お傍におりますので」
昨日と同じ言葉を、今度はほんの少し笑いながら言われた。
ヴェルシアナは反論するのを諦め、紅茶へ手を伸ばした。
窓の外では、夕方の風が庭木の葉を揺らしている。
以前なら、風はただ起こすものだと思っていた。
自分が生み出し、自分の力で動かし、自分の思う方向へ押し通すもの。
けれど今は、その中に細かな道があるような気がする。
まだ本当に見えているわけではない。
少し集中を崩せば途切れ、焦って力を足せばすぐに太くなってしまう。
それでも、一本だけなら。
必要なところまで通せることがある。
大きな力を持っていることと、それを上手く使えることは、きっと同じではない。
今までの自分は、持っている量に頼りすぎていた。
けれど今日、初めて知った。
強くすることで届くものだけではなく、細くするからこそ届くものもある。
――風糸。
まだ細く、少し指先の意識を乱せば簡単に途切れてしまう一本。
それでも確かに、ヴェルシアナの風には、今までになかった新しい形が生まれていた。




