閑話 次があるなら、いつもの村を
公爵令嬢が村へ来る。
その知らせが届いた日のことを、ロイはよく覚えていた。
井戸端にいた女たちは話の途中で手を止め、倉庫の前で縄を束ねていた男たちは、誰からともなく顔を見合わせた。何か咎めを受けると決まったわけでも、税を増やすという知らせが届いたわけでもないのに、その日の村には、雨の前に空気が重くなる時とよく似た緊張が静かに広がっていった。
公爵家の人間が来る。
それだけで十分だった。
ロイはこの土地で生まれ、この土地で育った。父も祖父も似たような暮らしをしていたから、自分もおそらく、この村で年を取っていくのだろうと思っている。
アルセリード公爵の名は、もちろん知っている。
自分たちが誰の領地に住み、どこへ税を納め、誰の名の下で道や倉庫が管理されているのかくらいは、農夫のロイにも分かる。
けれど、それは「知っている」というより、地図の上に書かれた大きな文字を覚えているのに近かった。
名前は知っている。
命令も届く。
けれど顔は知らず、声を聞くこともない。
公爵家とは、自分たちの生活を囲む大きな壁のようなもので、その存在は確かでも、普段わざわざ見上げるようなものではなかった。
だから最初、皆が戸惑ったのだ。
「娘が来るらしい」
誰かが言った。
「公爵様の?」
「ああ。一人娘だと」
「いくつだ」
「五つだったか」
「……五つ?」
ロイも同じところで引っかかった。
五歳の子供が、この村へ来て何を見るというのだろう。
畑を眺めても、今年の作柄が去年と比べてどうなのかなど分からないだろうし、倉庫へ入ったところで、積まれた袋の数が多いのか少ないのか判断できるとも思えない。
貴族の子供に領地を見せる教育のようなものではないか、と誰かが言った。
それなら遊覧みたいなものか、と別の男が返した。
誰にも正しいところは分からなかった。
分からないからこそ、余計に気を遣った。
しかも噂だけは、村まで届いていた。
アルセリード公爵家の一人娘。
銀色の髪に、深い紅紫の瞳を持つ、美しい少女。
その一方で、気が強く、機嫌を損ねれば周囲の人間が困るとも聞く。
気に入らない相手が遠ざけられた、という話まであった。
どこまで本当なのか、ロイには分からない。
貴族の噂など、町を一つ越えるだけでも形を変える。まして子供の話なら、大人たちが面白がって余計な色を塗っていても不思議ではない。
それでも相手が公爵家なら、「どうせ噂だ」と笑って済ませる勇気はなかった。
そして当日。
村の道は、普段より綺麗に掃かれていた。
軒先に積まれていた道具は片づけられ、子供たちはむやみに走り回らないよう何度も言い聞かされ、大人たちはいつもより少しだけましな服を選んだ。
倉庫も、見える範囲は整えられた。
誰が命じたというより、皆が自然にそうした。
公爵令嬢が来るから。
今になって思えば、その時点ですでに、自分たちは「見せる村」を作り始めていたのだ。
◇
実際に見たヴェルシアナ・アルセリードは、噂の中よりずっと小さかった。
当然だ。
五歳なのだから。
けれど、馬車から降りた瞬間、最初に目へ飛び込んできた銀色のせいで、その当たり前を一瞬忘れた。
陽を受けた髪は白金にも似て、細い光を幾筋もまとっている。村ではまず見かけない色だったから、それだけでも視線を集めるには十分だった。
そして、顔を上げた少女の瞳は、その明るさとは反対に深い。
赤とも紫とも言い切れない色が、白い肌の中でひどく鮮やかに見えた。
美しい。
誰かが噂したことだけは、本当だったらしい。
ただ、ロイが最初に感じたのは、美しさより緊張だった。
五歳の子供であっても、公爵令嬢であることには変わりがない。
本人が幼くても、その背後にある家名までは幼くならない。
だから少女がこちらへ視線を向けるたび、村人たちの背筋は少しだけ伸びた。
ロイも例外ではない。
しかもヴェルシアナは、何かを見つけるたびに、よく考え込む顔をした。
黙って眉を僅かに寄せると、整いすぎた顔立ちのせいで、年齢以上に厳しく見える。
最初のうちは、その表情を見るたびに、何か不満を持たれたのではないかと身構えた。
けれど、やがて少し違うのだと気づいた。
少女が口にするのは、咎める言葉ではなく、問いだった。
「こちらの数字は、実際に数えたものですの?」
あるいは、
「去年と同じ書き方になっていますけれど、中身も同じなのですか?」
分からないことがあれば、知っているふりをしない。
説明を受けて、それでも分からなければもう一度尋ねる。
時には答えを聞いたあと、むしろ先ほどより難しい顔になった。
その様子を見て、ロイは妙な気持ちになった。
公爵令嬢というものは、何でも分かっている顔をするのだと思っていた。
少なくとも村人の前では、知らないと言わず、周りが「その通りでございます」と頷くようなことを口にする。
何となく、そういうものだと決めつけていた。
けれど目の前の少女は、何度か普通に言った。
分からないから、教えてほしい、と。
それは特別立派なことではないのかもしれない。
それでも、ロイの記憶には妙に残った。
そしてもう一つ、村中の人間が後になって何度も話題にしたことがある。
子供が怪我をした時のことだった。
何がきっかけだったのかまで、ロイにはよく見えなかった。
ただ、子供が転び、膝を傷つけたこと。
その子の母親が顔色を変えたこと。
そして母親が、我が子の傷より先にヴェルシアナへ謝ろうとしたことだけは、はっきり覚えている。
その瞬間、ロイ自身も「まずい」と思った。
何がまずいのかを、考えるより先に。
公爵令嬢の前で粗相があった。
だから謝らなければ。
その順番が、あまりにも自然に頭へ浮かんだ。
ところがヴェルシアナは、そうしなかった。
まず子供の方を見た。
そして、先に怪我を、と促した。
言われてしまえば当たり前のことだった。
転んだ子供がいるなら、その子を見る。
血が出ているなら、まず傷をどうにかする。
本来なら、誰に教わらなくても分かる順番である。
それなのに、公爵令嬢がそこにいるというだけで、その当たり前がひっくり返りかけた。
ロイには、少女の言葉そのものよりも、その時の表情の方が印象に残った。
怒ったわけではない。
満足したわけでもない。
ただ、一瞬、何かが分からないような顔をした。
母親を見て、怪我をした子を見て、周囲へ目を向ける。
深い紅紫の瞳が順番に人々を映しながら、そこにある何かを確かめようとしていた。
その視線を受けた時、ロイはなぜか少し落ち着かなかった。
怒鳴られるよりも。
機嫌を損ねられるよりも。
自分たちにとって当たり前だったことを、当たり前ではないものとして見られる方が、時には居心地が悪いらしい。
◇
公爵家の一行が去った翌日も、村はその話でもちきりだった。
珍しい客が来たのだから、当然といえば当然である。
ロイが倉庫の近くを通ると、昨日怪我をした子供の家族を知る男たちが話していた。
「大した傷じゃなかったらしいぞ」
「それならよかった」
「子供なんて転ぶもんだ」
「公爵令嬢の前じゃなきゃな」
その言葉に、数人が苦笑した。
「母親の方が青くなってたもんな」
「俺でもそうなる」
「俺もだ」
ロイも会話へ混ざった。
「でも、令嬢様は気にしてなかったな」
「気にしてないっていうか、何で母親が先に謝ってるんだって顔してなかったか?」
誰かが言う。
ロイは昨日の光景を思い出した。
「ああ。そんな感じだった」
「……あれはちょっと怖かったな」
「怒ってないのに?」
「だからだよ」
男は肩を竦めた。
「怒られたなら、謝れば終わるだろ。でも、あの子は何でそうなったのか考えてるみたいだった」
皆が少し黙った。
確かに、そう見えた。
何か失敗した人間を探しているのではなく、その場でなぜ皆がそう動いたのかを見ようとしているようだった。
もちろん五歳の子供が、そこまで考えていたのかは分からない。
村人側が勝手に意味を読み取っているだけかもしれない。
ただ、あの時の少女の顔は、少なくとも「自分が偉いから謝られて当然だ」と思っている顔には見えなかった。
「噂とは、ちょっと違ったな」
誰かが小声で言った。
その一言に、数人が何とも言えない顔をした。
「一日見ただけじゃ分からん」
年嵩の男が答える。
「そりゃそうだ」
「昔どうだったかも、俺たちは噂でしか知らんしな」
それもまた正しい。
昨日の姿が良かったからといって、聞いていた噂を全部嘘だったことにするのも違う。
五歳の子供一人を、一日で理解したつもりになる方がおかしい。
それでも。
昨日まで「アルセリード公爵令嬢」という名前の向こうにいたのは、噂から作られた少女だけだった。
今は、そこへ自分の目で見た姿が一つ加わっている。
分からないことを聞く子供。
怪我をした子を先に見ろと言った子供。
そして、自分たちの振る舞いを見て、少し困ったような顔をした子供。
それだけでも、噂だけを聞いていた頃とは違った。
その日の夕方。
小さな酒場では、今度は別の話が出ていた。
「倉庫の件、何か変わると思うか?」
「さあな」
「令嬢様、いろいろ聞いてたろ」
「聞いただけかもしれん」
「子供だぞ。あの子自身に何ができる」
誰かがそう言うと、何人かが頷いた。
ロイも、その意見に反対するつもりはなかった。
ヴェルシアナは五歳だ。
村を一度見たからといって、翌日から道が直るわけではないし、倉庫の事情がすべて変わるわけでもない。
そもそも彼女が何をどこまで理解したのかさえ、こちらには分からない。
期待を積み上げておいて、何も起きなかった時に勝手に失望するのも違うだろう。
「見学だっただけかもしれないしな」
一人が言った。
「貴族の子供に領地を覚えさせるための」
「そうだろうな」
「なら、あれで終わりか?」
その言葉で、少しだけ空気が止まった。
誰も答えを持っていない。
その時、隅に座っていた老人が、ゆっくり杯を置いた。
「それでも、見たんだろう」
低い声だった。
「何を?」
「ここをだ」
老人は酒場の外を顎で示した。
「畑も、道も、倉庫も。帳面だけ読んで帰ったわけじゃねえ」
「見たからって変わるとは限らんぞ」
「分かっとる」
老人は頷いた。
「でも、見なけりゃ分からんこともある」
それだけだった。
大げさな希望を語ったわけではない。
公爵令嬢が救ってくれるなどと誰も言わない。
けれど、ロイの胸にはその言葉が残った。
見なければ分からない。
なら。
昨日ヴェルシアナが見た村は、本当にこの村だったのだろうか。
ふと、そんな疑問が浮かぶ。
道は普段より綺麗に掃かれていた。
倉庫も、人目につくところは整えられていた。
子供は走り回らないよう叱られ、大人は普段より丁寧な言葉を使った。
そして怪我をした子供が出た時でさえ、その母親は子供より先に公爵令嬢へ謝った。
ヴェルシアナが見たのは、村そのものではなく。
公爵令嬢へ見せるために、村人たちが少し形を変えた村だったのではないか。
そこへ思い至った時、ロイは酒の味が少し変わったように感じた。
「何だ、難しい顔して」
隣の男に言われる。
「いや」
「令嬢様の真似か?」
「やめろ」
笑いが起きた。
ロイも笑ったが、先ほど浮かんだ疑問は消えなかった。
あの少女は、自分たちが見せたものの向こうに、どれだけ別のものがあると気づいただろう。
おそらく全部は分からなかった。
分かるはずもない。
けれど何度か、見れば見るほど知らないことが増えているような顔をしていた。
それだけは覚えていた。
◇
三日ほど経った頃。
仕事を終えたロイが村道を歩いていると、前方で子供たちが遊んでいた。
その中に、先日膝を傷つけた少女もいる。
まだ傷が完全に治ったわけではないだろうが、本人は気にしていないらしく、細い木の枝を手にして弟らしい子供を追いかけていた。
「また転ぶぞ」
声をかけると、少女が振り返った。
「転ばないもん」
「この前も転んだろ」
「今日は転ばない」
「そういうものか?」
「そういうもの」
随分自信があるらしい。
ロイが笑いながら通り過ぎようとすると、少女が後ろから追ってきた。
「ねえ」
「何だ?」
「銀のお姉ちゃん、また来る?」
一瞬、誰のことか分からなかった。
「銀のお姉ちゃん?」
「髪がきらきらの人」
「ああ」
ヴェルシアナか。
「知らないな」
「来ないの?」
「俺に聞いても分からん」
少女は少し残念そうな顔をした。
それから、握っていた手を開く。
掌に、小さな白い花があった。
道端にいくらでも咲いている花だった。
茎は少し曲がり、葉の一枚は子供の指に潰されている。
「また来たら、これ見せるの」
「それを?」
「うん。綺麗だから」
ロイは花を見る。
公爵家の庭なら、もっと立派な花などいくらでもあるだろう。
名のある薔薇も。
珍しい色の花も。
こんな道端の小さな花を、公爵令嬢がわざわざ見る理由などないかもしれない。
そう言いかけて、やめた。
少女は綺麗だと思った。
その気持ちに、値段も家柄も関係ない。
「次に来るまでには枯れるぞ」
「じゃあ、その時また取る」
「そうしろ」
少女は満足したように笑い、今度は走らず弟のところへ戻っていった。
少しだけ、言いつけを覚えているらしい。
ロイはその背中を見ながら、不意に思った。
もしあの公爵令嬢が再びここへ来たら、この花を本当に見てくれるだろうか。
以前なら、そんなことを考えもしなかった。
公爵家の人間へ村の子供が道端の花を見せるなど、想像の中にさえなかったからだ。
その夜。
妻が食卓で豆を選り分けている横で、ロイは昼間のことを思い出していた。
「何ぼんやりしてるの?」
「別に」
「公爵令嬢のこと?」
「何で分かる」
「この何日か、村じゅうその話ばかりじゃない」
妻は笑いながら、傷んだ豆を一つ端へ除けた。
「子供が、また来るかって聞いてきた」
「あら」
「来たら花を見せるんだと」
「いいじゃない」
「道端の花だぞ」
「だから?」
妻は手を止めずに返す。
「綺麗だと思ったなら、見せればいいでしょう」
「公爵令嬢だぞ」
「五歳の女の子でもあるんでしょう?」
ロイは何となく返事に詰まった。
妻の方が、子供を見る時には話が早いらしい。
「また来ると思うか?」
「さあ」
妻はしばらく豆を選び、それから何でもないことのように言った。
「でも、来るなら今度は掃除しすぎない方がいいんじゃない?」
「何でだ」
「何でって」
妻が顔を上げる。
「見に来たんでしょう?」
「たぶんな」
「だったら、いつもの村を見せないと意味がないじゃない」
指先から、ころりと豆が一つ器へ落ちた。
小さな音だった。
けれど、その一言が、ロイの中では妙に大きく響いた。
自分はずっと、公爵令嬢が村の何を見たのか考えていた。
けれど、見せる側の自分たちが普段と違う姿を作っていたことには、さっきまで気づいていなかった。
綺麗に掃いた道。
片づけた道具。
普段より丁寧な言葉。
走らないように言い聞かせた子供たち。
怪我より先に謝ろうとした大人。
それらを見せておいて、「本当の暮らしを分かってほしい」と思うのは、確かに勝手かもしれない。
「……次があればな」
ロイが言った。
「次があればね」
妻はそれだけ答え、また豆へ目を落とした。
◇
公爵令嬢が一日村へ来たからといって、暮らしが劇的に変わることはなかった。
朝になれば鐘が鳴り、人々は畑へ向かう。
倉庫では袋が運ばれ、傷んだ柵は直さなければならず、雨が降ればぬかるむ場所は相変わらずぬかるんだ。
子供たちは走り、叱られ、それでもまた走る。
暮らしというものは、一つの出来事に合わせて綺麗に頁をめくってくれるほど親切ではない。
それでも、ごく小さく変わったことはあった。
村人たちが、時折ヴェルシアナのことを話すようになった。
以前までのように、遠くから届いた噂だけではなく。
自分が見たことを。
銀色の髪は、本当に陽の下で光っていた。
紅紫の瞳は、近くで見るとやはり少し緊張する。
五歳とは思えないほど難しい質問をするくせに、分からない時には普通に聞き返す。
子供が怪我をすれば、先にその子を見ろと言った。
そのあと、周囲の大人を妙に考え込んだ目で見ていた。
話す人間によって、覚えているところは違う。
好意的に見る者もいる。
まだ警戒している者もいる。
「一日で人間が分かるか」と言う者もいた。
ロイも、それには同意した。
一日で分かるものではない。
昨日良いところを見たからといって、明日も同じだとは限らない。
噂がすべて嘘だと決める材料にもならない。
けれど以前は、「アルセリード公爵令嬢」という名前しか知らなかった。
その名の向こう側には、他人が運んできた話を継ぎ合わせた顔しかなかった。
今は違う。
自分の目で見た銀髪を知っている。
分からないことを尋ねる声を知っている。
大人たちが我が子より先に自分へ謝ろうとした時、戸惑ったように周囲を見た顔も知っている。
名前だったものに、ほんの少しだけ人の形がついた。
それだけだ。
けれど、それは小さくないのかもしれない。
そして、ふと思う。
おそらくあちらにとっても、自分たちは似たようなものだったのだろう。
領地の報告に並ぶ数字。
収穫量。
倉庫。
道。
村人の数。
書類の中では、それだけだったものに、昨日ほんの少しだけ顔がついた。
あの少女が何を持ち帰ったのか、ロイには分からない。
自分たちの顔まで覚えているとも思わない。
けれど、数字の向こうに人間がいることくらいは、あの紅紫の瞳に映ったかもしれない。
夕暮れ。
仕事を終えたロイが村道を歩く。
道端には、あの少女が摘んでいたものと同じ白い花が咲いていた。
夕陽を受けても豪華に輝くわけではなく、風が吹けば細い茎を簡単に揺らす、小さな花だった。
以前なら目にも留めなかっただろう。
ロイは歩みを止めず、ただ横目でそれを見る。
もし、銀の髪がもう一度この道を通る日が来るなら。
今度は、少しくらい普段の村を見せてもいいのかもしれない。
綺麗に掃ききれなかった道も。
古くなった柵も。
雨が降ると水の溜まる場所も。
うまくいかないことだけでなく、自分たちが工夫して何とかしていることも。
何もかもを隠さず見せた上で、それでもあの少女が知りたいと尋ねるのなら。
その時は、村の側も今より少しだけ、自分たちの言葉で答えられるかもしれない。
公爵令嬢が去ったあと、村に何か目に見えるものが残ったわけではない。
道が新しくなったわけでも、倉庫が変わったわけでもない。
ただ、一つだけ問いが残った。
――次に来た時、自分たちは何を見せるのだろう。
銀色の髪はとうに村の向こうへ消えている。
それでもその問いは、日が沈んだあとにも畑の輪郭だけを薄く残す残照のように、以前とは少し違う形で村を見せ続けていた。




