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身代わりのあなたに花束を  作者: 凛蓮月@記憶をなくした孤独な妻発売!
第三章/母の幸せのために【side セリーナ】

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62.愛されるのは私だけ【side チェルシー】※イライラ注意※


 シェリーの事がバレて、離縁された。

 ありえない。私だけを愛しているって言ってくれたのに。


 私は生まれた時からずっとお姉様の事が嫌いだった。

 全てを完璧にこなし、人当たりもよくてお姉様の周りには人が沢山いた。

 私は幼い頃少し身体が弱くて、社交に出遅れてしまった。

 けれど、お姉様はそんな私を引っ張っていってくれた。

 それがどれだけ惨めだったか分かる?


 だから私はお姉様の全てを奪いたかった。

 別に本当に欲しかったわけじゃない。

 両親やお兄様は筆頭で身体が弱い事を利用して関心を奪ってやった。


「チェルシーは身体が弱いんだ」

「妹に優しくしてあげなさい」


 泣きつくだけで孤独に追いやる事ができてスッとしたわ。

 でも、お姉様は公爵令息と婚約した。

 許せない。そんな高位貴族と結婚するなんて許せない。

 じゃあ私は王子様を狙うわ。

 サディは簡単に落ちた。

 高位貴族のくせに、ちょっと下位貴族みたいに砕けた振る舞いをするだけで「面白い、気に入った」ってバカみたい。

 お姉様の婚約者もちょっと色仕掛けしただけでコロッと落ちた。

 上目遣いで涙目で見つめるだけで鼻息荒くするのだもの。みんな溜まってるのね。

 サディの周りも、みんなチョロい。面白いくらいにみーんな私の虜になった。


 でも、お姉様は相変わらずマイペースで私に見向きもしなかった。

 仲良くなりたい人はみんなお姉様を賞賛した。

 私の方が価値があるわよね?

 高位貴族令息はみんな私が好きと言っているわよ?


 ウィルも私を好きという目で見てくるくせに、結婚はお姉様と考えていた。

 だから、何かトゲを残したくて「最後の思い出に」とつまみ食いしたのだ。

 美しい思い出になれば、あの頃を思い出していつまでも余韻に浸れるから。

 サディと結婚しても、ウィルは公爵令息だからいつでも会えるし、お姉様が知らないところで旦那と……なんて考えただけで顔が緩んできちゃう。


 と、思ったのに、まさかその一回で妊娠するなんて思いもしなかった。

 だからどうしようってモニカに相談したら、いい考えがあるって。

 聞いたらちょっと怖かったけれど、面白そうだから乗っちゃった。


 結婚式当日、お姉様は本当に来なかった。

 モニカやるじゃない、と思いながら演技をする。

 みんな騙されちゃって、途中で笑わないようにずっと下を向いていた。それでも堪えきれず肩が震えたけれど、むしろそれは身代わりになろうとする健気さを表現できたから良かったわ。


 サディには事情を話してなかったからちょっと怒られた。結婚するな、嫌だと言われたけれど仕方がないのと涙目で言ったら、お互いに結婚しても心は一つだ、と言ってくれたわ。おまけにせめて純潔だけは、って言うから本当にチョロい。

 結婚しても会いたいと言われたから秘密裏に会う事になった。こういう関係も燃えるかも……


 既に妊娠していたから初夜をする意味は無かったけれど、初夜で妊娠したという事にしないと私が不貞を疑われるからと一度だけ応じてあげた。

 もちろん、少ししてから妊娠を告げた後は全部拒否したけどね。

 仮にも後継者を妊娠したのだし、もっとちやほやされるかと思ったけれど、案外そうでもなかった。

 ウィルの母親が私を大事にしてくれてないのはすぐに分かったし。

 両親も孫なのだから御見舞も沢山来てくれると思っていたのに、ちっとも来ない。


 その理由は、お兄様のお嫁さんが領地に追いやったからだ。


「セシリアは結婚式当日に駆け落ちするような人ではありません。よく調べもしないのに簡単に騙されて……それでも貴族ですか?」


 お姉様は身勝手に駆け落ちしたのだから除籍して捜索しないって言ったらそうなったらしい。

 肝心な時に役立たずー!

 まあ、いいか。後継者を生んだら安泰よね、と思ったのに、生まれて来たのは黒い髪の女の子。

 まるでお姉様みたいで気持ち悪い。

 ウィルも顔が引き攣っていた。

 顔立ちも平凡すぎる。一瞬にして興味を失った。


 次は私似の子がいいわ。でも、平凡な顔立ちのウィルじゃ見た目も平凡になりがちよね。

 私の可愛らしさを受け継ぐなら、やっぱり父親も見た目に拘らなきゃ。

 そんな訳で、ちょうどいいのがサディだった。

 でもサディは国の王子様。未来の王様だ。

 どうしても結婚して後継者を作らなきゃいけないらしく、私の後に当てつけみたいにして結婚していた。妻を愛さないようにモニカに泣きついて、候補には地味なブリジットを宛てがった。

 サディも私を愛していて、結婚式の時もずっと私を見つめていたわ。まるで本当に結婚するのは私と、と言っているみたいに。

 だからブリジットを抱くのは本当に嫌だったけれど、仕方なく我慢した。

 ブリジットは私の身代わりだ。

 一夜で妊娠したのは神様からの計らいね。

 私の娘と同い年になったのはモヤモヤするけれど、私だけを愛しているのは変わらないものね。


 モニカに橋渡しをしてもらって、サディと逢瀬を重ねた。

 そうしているうちに妊娠した。サディの子だ。

 喜んで報告しに行ったら、ブリジットが妊娠したとサディは喜んでいた。


 は?


 もう作らないって言ったのに?

 私と逢瀬を繰り返して、私だけを愛していると言ったのに?

 また子を作ったの?

 王子が生まれたからもうしないって言ってたのに?


 どういう事か聞いたら、後継者の予備がいるからと周りに言われて仕方なくらしい。


「酷いわ。私を裏切ったのね! 私も……サディとの赤ちゃんがいるのに……!」


 お腹に手を当てて言ったら、サディは顔を真っ青にしていた。


「嘘……だろう?」

「嘘じゃないわ!」

「ウィル……ウィルとの子だろう? そうだよな? な? 公爵家もまだ後継者がいないから、チェルシーもしていたんだろう? お互い様じゃないか」

「してないわ! 私に似てない子を生んでから、してない! サディのバカ!」


 酷い、酷い、許せない。私はサディを愛しているのに、簡単に裏切るなんて!


「ブリジットにバラしてやるわ! 王様にも、お妃様にも、みーんな、みーんな、貴族中にバラしてやる!」


 勢いよく出ようとして抱き止められた。


「すまない、チェルシー。今のは演技だ。俺の子を身篭ってくれて嬉しいよ」


 ほらね、やっぱりサディは私を愛しているのよ。


「だが、しばらくは会わないでおこう」

「どうして?」

「ウィルとしていないチェルシーが身篭った事がアークライト公爵家にバレてはマズい。だから本当に嫌だがウィルともするんだ」


 サディは声を震わせている。

 私が他の男に抱かれるのがそんなに悲しいのかしら。

 でも冷静になってみれば確かにそう。

 特にウィルのお母様にバレたら追い出されちゃうかも。


「でも、それならそれでサディの妾になれるんじゃない?」

「いや、ブリジットが許さないだろう。彼女の実家も敵に回せないから今のままがいい。愛人関係になるにはお互いのパートナーの同意が必要だ。ウィルから取れるかい?」


 そうしたらウィルに私たちの関係がバレちゃうから仕方なく了承した。

 帰って早速ウィルともして、時間を置いてから妊娠の報告をした。

 久しぶりだったせいか喜んでいたわ。

 サディに会えない日は寂しかったけれど、我慢したわ。

 そうして生まれたのは私にそっくりな可愛い女の子。欲を言えば男の子が良かったけれど、また次に生めばいい。

 ウィルが私をチェリーって呼んでたから、シェリーにした。

 可愛い可愛い我が子。

 愛している人との子がこんなにも可愛いなんて思わなかった。


 黒髪の子は妹が生まれたのを嬉しそうに見ていた。


 私はこの子の名前を覚えていない。


ラストエピソード前に、チェルシーのお話を2話投稿します。

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