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第14話 プレドゥミルソル遺跡2

明かり取りの小窓が作る影のコントラスト。

奥から鋭い、文字通りの鷹の目がこちらの動きを牽制する。


「シーフガルダですね

この辺りの荒地に住む怪鳥です

物陰からの奇襲で狩りをします」

眼鏡を直しながら語った少女はヤーマン組の参謀、ヨルド。

茶色い髪を後ろに束ねている。




数刻前…


【遺跡入り口、テント内】

「私は4年前に生物、特に魔獣に関する知識を買われてヤーマン組に参加しました」

いたって真面目と言った無表情に彼女の自己紹介が始まった。


「でも、いつの間にか情報収集や戦略立案、資金管理、受注する依頼の方針まで…

とにかく頭を使う仕事全般をやらされてます…」

自然と愚痴になり、段々と表情を曇らせるヨルド。


「ヤーマン組は皆アホなんです

だって私まだ17ですよ?

おかしいですよ」

彼女は最後を罵倒で締めた。




現在…


【プレドゥミルソル遺跡第1層】

「この鳥は脚の筋力が発達していて、魔術で瞬間的に跳躍します

飛翔能力は殆どありません

また、警戒心が強いので集団で居れば襲われる心配は要らないので無視しましょう」

ヤーマン組の面々は周辺の討伐依頼をこなすのが本職と語っていた。

彼らからすればシーフガルダは倒すに値しないのだろう。 



キリキリキリ…


明るく染め上げた短髪が目を引く青年が壁のタイルの隙間に細い器具を差し込み、小刻みに手を動かしている。


彼の名はキーロ。

彼は事あるごとにこちらを睨み付けてくる。




数刻前…


【遺跡入り口、テント内】

色白で金髪の少年がテントに入るなり、ドカッと椅子に座り僕の顔を睨んだ。

「俺はキーロだ

言っとくが俺はよろしくするつもりなんてないからな?」

キーロは威嚇するように、語気強く言い放った。

僕何かしたっけ?


「勘違いすんなよ?

お前がどうこうじゃねぇよ

いや、そうとも言いきれないか…」

彼は腕を組み表情を歪ませ、言葉を詰まらせた。


「命懸けの探索です

隠し事はなるべくなしにしましょう

こちらも配慮出来るところは努力しますよ?」

うんうん悩む彼に、宥めるように声をかけた。


「ああ…まあ…考慮なんて出来ねぇよ」

ん?なんだろう…


「お前…背ぇたけぇじゃん…」

ん?


「チビの気持ちなんてわかる訳無いよな?

一番ムカつくのはコイツだよ」

彼はテントの隅で本を読むヨルドを親指で指し示した。

ヨルドは全くの無反応だ。

「コイツ俺より5個も年下の女だぜ?

何で俺より背が高いんだよ!?

おかしいだろ!」

キーロの白い肌がみるみる赤みを帯びていく…

ヨルドを含めヤーマン組の面々は気にしていない様子。

ひょっとしていつも通りの彼なのか?


「あ、私よりも年上!」

ミリアが指折り数えてから声を上げた。


「あ゛あ゛!?

喧嘩売ってんのか!?」

キーロが毛を逆立て、ミリアを一喝した。


「お前も!俺の事少年とか呼んだら仕事なんて無視して帰るからな!?」

僕を指差し、そう残すと、彼はテントを出ていった。




現在…

【プレドゥミルソル遺跡第1層】


カチリ…パタンッ


キーロが器具を操作していたタイルが手前に開き、壁の中に隠されたボウガンが姿を現した。

彼は慣れた様子で装填された矢を外す。


「さ、ここの罠はこれで最後だ

先に進もうぜ」


キーロは率先して先頭を歩く。

彼は罠の音にいち早く気付くよう、鼓膜を魔術で制御している。

ヤーマン組の彼に対する信頼も厚いようだ。

後ろを行く面々の表情が言葉以上の説得力を持って証明している。



「ミリア、ここからが本番だよ」

僕は暗闇へと続く階段の前でそう切り出した。

「地下は外の光が届かない

フロアも狭くなるから自然と強い魔獣ばかりになる」

ミリアに視線を向けると、胸を張って応えた。

「わかってますよ!

遺跡に入る前、ヨルドさんに教わりましたから!

瞳孔を操作して…」

目を閉じて集中力を高めるミリア。


「うん、大丈夫そうだね

でも、階段降りてからで良いからね」


フサ…


階段を降りると床一面、背の低い草が生い茂っていた。


「な、なんですか?

これ…」

ミリアが戸惑いの声を上げる。


「魔獣の中には自分達の住みやすい環境を魔術で整えちゃう種類も多いですよ」

ヨルドがしたり顔で解説を入れる。

暗い遺跡内で色まではわからないが、瞳孔が開ききった目は床を覆う植物をはっきりと映した。


「何が出てくるかわからないから俺の前に出るなよ?」

悪態をつきながらもキーロは率先して前に出た。


しばらく歩いて探索を続けていると、キーロが何かに気付き、口を開いた。

「扉が開かないのは鍵じゃないかもな…

罠も動作しなくなってる

魔獣が無理やり生やした植物のせいだな、こりゃ」

ミリアが後ろからキーロの肩をツンツンとつついた。

「それよりキーロ君!

こういうとこってさぁ…

お宝?隠された財宝?

あったりするの?」

「あ゛ぁ゛?」

キーロは額に血管を浮かべ振り返った。

「てめぇ年下だろ!」

「ひっあ、ご、ごめんね!」

ミリアが両手をあわせて謝罪した。

が、片目を閉じて舌を出して…

反省してないなぁ…

「反省してねぇだろ!」

キーロの怒りはごもっともだね。


これ以上はキーロがかわいそうだ。

「ミリア、遺跡には聖遺物以外の宝物なんかは置かれていないよ」

諌めるように声をかけた。


「ん?あれ?

なんですか?」

ミリアが指差す先、ぼんやりとした丸い光がフラフラと漂っていた。

目をこらすと…

「猿…?」


「目を閉じろ!」

低く轟くような声が後方から放たれた。

それと同時に声の主が瓶に入った黒い粉を宙に向けて振り撒いた。

粉は空中で静止し、視界を遮る。

次の瞬間、猿の居た方から強い光が放たれた。

落雷のように一瞬、辺りの緑を鮮やかに照らす。

しかし、放たれた煙幕が壁となり、僕たちの目が潰されることはなかった。




数刻前…


【遺跡入り口、テント内】


「ダグバナと言う」

厳つい顔の巨漢が椅子の上で必死に身体を小さく見せようと縮こまっている。


「あ、よ、よろしくお願いします…」

間が持たず握手を求め手を伸ばした。

が、ダグバナは手を一瞥して目を背けてしまった。


テント内に沈黙が流れる。

「ダグバナさん無口だし、シャイなんで

待ってても無駄ですよ」

ヨルドが本に目を落としたままフォローを入れた。


「あ、そ、そうですか…」

おずおずと手を引いた。




現在…


【プレドゥミルソル遺跡第2層】


空中で静止していた黒い粉は自らの意思を持っているかのように、ダグバナの手の瓶に吸い込まれていった。

それと同時、ヤーマン組組長が猿に一気に詰め寄り巨大な斧を振り下ろした。


ギャィッ!


短い断末魔を上げ、猿の尻尾の淡い光が闇に溶けた。


「さっきの猿はルミネイプ

この辺りの暗い洞窟で良く見る魔獣です

怪我は無いですか?」

解説を加えてくれたヨルドを始め、ヤーマン組の面々は動じていない。


「いたた…お尻をぶつけました…」

ミリアが腰元をパタパタとはたきながら立ち上がった。


「…大丈夫そうですね」

どうやらヨルドの中でミリアの立ち位置が固まってきたみたいだ。




そして…

キーロが蔦の絡まった扉に耳をあて、トントンと叩く。

中の様子を音で探っているのだろう。

「見つけた…

この扉が開けば次の層に行けるぜ?」

キーロが振り向いてサムズアップする。


トスン…トスン…


重い足音が響く。


「あそこ…なんか大きな鹿が居ますね…」

声を殺して囁いたミリアの視線の先には片角だけで1メートル以上有りそうな巨大な鹿が佇んでいた。


「あれはフォレストエルク

草食ですが怒らせると危険です

キーロさん、早く扉を開けて下さい」


「チ…」

キーロは何か言いたげな顔で扉の攻略を急いだ。




コツン…


第3層に足を踏み入れた。

先ほどと全く違う硬質な氷のような床。

「さ、寒いですね…」

ミリアが自らの肩を擦る。


もしかしたら第3層の主は氷を操る魔獣なのかもしれない…

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。

感謝してもしきれない思いです。


もし本作をお読みになった結果、ほんの少しでも「面白い」「続きが気になる」「良い暇潰しになった」等、思っていただけましたら、

ページ下部にある星マークからの評価、感想、ブックマーク等いただけますと、とんでもなく励みになります。


ではでは、今後ともよろしくお願いいたします。

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