表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/23

第11話 城塞都市アルネルド

コツコツッコツコツッ


右目の義眼に何か当たっている。

白黒の視界はチラチラと遮られる。


バサバサバサッ


上体を起こして辺りを見渡すと、頭をつついていた何者かが羽ばたいて飛び降りた。

…ニワトリ?

なんでこんなとこにニワトリ?

あれ?左腕が無い…


ズキンズキン


激しい頭痛が思考の邪魔をする。

この胃から込み上げる不快感…そして激しい喉の乾き…これは…


二日酔いだ…

外は快晴、明かり窓から朝日が射す。


◆ ◆ ◆


んふふーアインツさんが笑うとこ、初めて見たかも!


コンコン


ノック?アインツさんかな?

「はーい!」


扉を開けると立っていたのはククナだった。

「ククナさん、どうしたんですか?」

「あの…し、シスターが歓迎会をしてくれるってことで、その…ミリアさんと、あ、アインツさんも呼んで良いって言ってくれたんです

…ど、どうですか!?」

吃りつつ一息で切り出すククナ。

たぶん、人とちゃんと会話するのは久し振りだったんだと思う。

「もちろん行きます!

アインツさんにももう声掛けました?」

「いえ…なんか恥ずかしくなってしまって…」

ククナの頬に朱が差した。

「んふふ、笑ってましたもんね

珍しいんですよ、アインツさんが笑うの」

「そ、そうなんですね…」

ククナが恥ずかしそうに顔を伏せた。


「それじゃ私がアインツさんを連れていきますね!」

ククナが顔を上げほっと一息吐き出した。

「あ、ありがとうございます!

よろしくお願いします!」

ククナは深々と頭を下げ、宿屋から出ていった。


◆ ◆ ◆


部屋を出て隣の部屋、ミリアの部屋をノックした。

しかし、反応は無い。

居ないのか…寝てるのか…

激しい頭痛で考えがまとまらない…

ひとまず食堂で1杯水を貰おう。

その後は教会で昨日何があったか聞いてみよう。


食堂は朝食を取る宿泊客で賑わっていた。


◆ ◆ ◆


アインツさんも来てくれる…

ククル…弱いお母さんでごめん…

続ける理由が無くなってほっとしちゃったの…

今度こそあなたを、本当に失ったのに…

それなのに…アインツさんには感謝しか抱けない…

ごめん…ごめんね…


「ククナさん、戻りましたね

料理が出来るまで子供たちを見ていて下さる?」

教会に戻るとシスターたちが歓迎会の準備を進めていた。


◆ ◆ ◆


水を飲むと胃の不快感は少し落ち着いた。

もう一度ミリアの部屋の扉を叩くがやはり反応は無い…


「やっぱり居ないのか…」


考えたことが口から漏れた。


重い身体を引きずって教会に着いた。


庭で遊ぶ子供たち。

それを見守るシスターが見えたが、昨日の威厳がない。

窓から朝食の片付けをする若いシスターが見えた。


そうだ、思い出した。

昨晩はククナさんの歓迎会に参加したんだ。


◆ ◆ ◆


「お待ちしておりました

ククナさん、いらっしゃいましたよ」

出迎えてくれたのはシスターだった。

「お呼ばれしちゃいました!

あ!お酒!」

奥のテーブルには大皿の料理と何本もの酒瓶が並んでいた。

のみほうだい!

「ミリアさん!アインツさん!

こっちです!」

ククナさん、膝に子供乗せてる!

もう馴染んでるじゃん!


席に着くとすぐに注がれるお酒。

「料理もお酒もたくさんありますからね

2人とも遠慮しないで下さいね」

のみほうだい!


◆ ◆ ◆


ギィギィ


教会の床板が歩く度に軋んで音を立てる。


「どうぞ、お水です」

シスターが水を差し出してテーブルに着いた。

「その腕…」

水を1口飲んでから口を開く。

「はい…朝起きたら無くなってて…

シスターもわからないですよね…」

シスターは困った顔をして応えた。

「はい…残念ながら…

昨日の晩、ククナさんの歓迎会…

実は途中から記憶がないんです…」

シスターが今度は申し訳ないと言いたげな表情をした。

「僕もです…

久し振りに飲んだということもあるんですが…昨日は飲み過ぎてしまいました…」

記憶にあるのはククナさんにひたすら勧められて…

とにかく何杯も飲まされたな…


バンッ!


勢いよく扉が開くと、いかにもヤンチャそうな少年が飛び込んできた。


「シスターマー!お腹空いた!

ご飯はまだ?」

「あら…もうこんな時間…

今から作るから待っててね

アインツさんもご一緒しませんか?」

シスターが立ち上がり穏やかな顔をこちらに向ける。

「いえ…まだ食欲が…」


◆ ◆ ◆


教会に新しいシスターがきた。

でかくて機械の腕の人と髪が赤くておっぱいが大きい女の人。

その2人と一緒にきた。


あやしい…

きっとわるい奴の仲間だ…

ぼくは信用しないぞ…


歓迎会の料理も…たべ…たべ…

食べたい…


こういうときは目を閉じて…がまんだ!


「ねぇ君!1人で何してるの?

ほら、お肉!食べようよ!」

「わっ!」

おっぱい女がきた!


うう…なんか顔があつい…

引ったくるように肉を受け取り頬張った。

「うまぁ…」


「ねえねえ…これ鶏肉だよね?

庭にもニワトリが居たよね?」

な、なにをいってるんだ?

「昼間ね、餌をあげたら美味しそうにたべてて…

死んじゃったらかわいそうだよね…」

「え?」

え?チーボしんじゃうの?

「だからさ…お姉ちゃんと…

救出大作戦…しようよ」


ズズ…

鼻をすすって応えた。

「やる!」


◆ ◆ ◆


太陽が真上から射し、外も暖かくなってきた。


「そうそう、今朝からククナさんと子供たちがお世話してる雌鳥を見てないの…

何か心当たり無いですか?」

シスターは料理しながら背中越しに問いかけてきた。


雌鳥…

まさか部屋に居たニワトリ…

確かに鶏冠はなかったな…

「…今朝宿の部屋にニワトリが居ました…」


◆ ◆ ◆


ククナさんも仲間に引き入れたし、いよいよ作戦開始だ!

アインツさんは食肉用なら1羽だけ飼育してるのはおかしいなんて言ってたけど、チーボが死んでから気付いても遅いのに!


よしよし、作戦通りククナさんがアインツさんとシスターにお酒を勧めてる…


「お姉ちゃん!早くしてよ!」

「わー待って待って!」


◆ ◆ ◆


宿屋に戻ると食堂でミリアが机に突っ伏して目を閉じていた。


「ミリア…」

「アインツさんですか…?」

そのままの体勢で口だけ動かしてる…

「ミリア、ククナさん何処に居るか知らない?」

「…」

「え?寝た?」

「…」

ミリアは突っ伏したまま寝息を立て始めた。

「はぁ…」

ため息しか出ない…


部屋に入ると雌鳥がベッドの上ですやすやと眠っていた。

至るところに糞が落とされている。


「ふ、ふふ、ふふふ

こ、こう言うの…ひ、ひさしぶり…」

頭の中に響く吃った女の声。

「菌!」

「うんっ…ふ、ふふ…

あ、アインツも…よくっよくなっ…てる…」

「と、と言うことは!再契約してくれるの!?」

良かった…

いやでも菌が喜んでるってことは…気を遣わせてるってことだよね…

「う、うん!

よ、用があっ…あるときはっ…呼んでね…」

ほっとため息が出た。


雌鳥に目をやるとまだ眠っている。

僕は起こさないように優しく抱き上げた。

あ、まずいこれじゃあ扉を開けられない…


カチャリ…


そう思っているとゆっくり扉が開いた。


「あの…誰かとしゃべってました?」


ククナが部屋に入ってきた。

僕の義手を抱き抱えて…


◆ ◆ ◆


流石に飲み過ぎた…

ククナ…ありゃあ男を手玉に取ってきたタイプだね…

この私がこんなに気持ちよく飲まされるとは…

アインツも…こりゃダメそうだ、完全に潰れてる…


「んん…!

重い…!」


ククナが自分で潰したアインツをおぶろうとしている…

「宿へ運ぶ気かい?」

「はい…!

風邪引いちゃいますよ…!」

うーん…ここに寝かせといても良いと思うけど…

「その重そうな義手は外せないのかい?」

「義手?」


ククナが義手の付け根をあれこれいじりだした…


フッと一瞬意識が飛んだ次の瞬間にはククナはもう居なかった。

片腕の無いアインツを残して…


◆ ◆ ◆


義手を付け直し、ククナさんに雌鳥を渡すと教会に連れ帰るように頼んだ。


なんかもう、問い詰めるのも、あれこれ考えるのも面倒になってきた…


昼食時で混み合う食堂に戻ると、ミリアが見知らぬ男と話していた。

またナンパかな?

「ミリア、起きたんだ」

「あ、アインツさん!

今大事な話してるんで黙ってて下さい!」

こいつマジか…

「うん、だからね

ロアンも王都に戻ってると思うよ

俺ももう帰りたいよ…」

ミリアの兄の知り合いか?

口振りからして元討伐団か。

ロアンが警備兵に参加してたらその同僚の可能性もあるか。

どっちにしても…

「ミリア、どうする?

王都に戻る?」

「え…私は…」

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。

感謝してもしきれない思いです。


もし本作をお読みになった結果、ほんの少しでも「面白い」「続きが気になる」「良い暇潰しになった」等、思っていただけましたら、

ページ下部にある星マークからの評価、感想、ブックマーク等いただけますと、とんでもなく励みになります。


ではでは、今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ