その9 絶対主役の大荷物
★回帰解禁マザーズデイ・サムデイ!
第一話『ほうき星狙いのトリックスター』
その9 絶対主役の大荷物
teller:ハロルド=パンプキン
◆
――ああ、そうだ。
オレはずっと、星を見ていた。
手を伸ばしてた。夜空に焦がれてた。
ガキの頃から、ずっとだ。
そして、オレにとっての星の定義は広かった。果てしなかった。
昔一度だけ、旅の劇団の一座が『ノエル』の下級階層居住区域にふらりと寄ったことがある。
物珍しさに憧れて、セレスとロゼッタを引っ張って観に行った、あの舞台の煌めきを。
無償で演じられたにも関わらず、万人に全力の舞台を届けた彼らの煌めきを。
オレは今も、忘れられない。
憧れなんて単純な感情じゃなかった。
昔からきかん坊で悪ガキのオレは、あの舞台に心を奪われて。
同時に、元から膨らんでいた反骨心が一気に爆発した。
夜空の星々を見ている時の感想と同じだ。
あの輝かしい星々に抗いたい。
跳ね返してぶっ壊して、勝ってやりたい。
煌めく舞台。
煌めく星々。
それを見て、心が揺さぶられ――オレは、あの輝きに、勝ちたいと願った。
きっと、舞台を見たあの日から。
漠然と星に惹かれていたオレの生き方は、はっきり決まったんだと思う。
時に口にする、芝居がかった台詞回しも含めて――あの日、オレはオレを確立させた。
オレの生き方。オレの在り方。オレがずっと、胸に刻んで志すもの。
オレが、主役だ。
オレは、全てに勝ってやる。
ハロルド=パンプキンは、昔も今も、未来すらも。
最強無敵の主役であり続ける。
◆
「……何故、儂の元に来た。若人よ」
暗闇の中、シュタインのジイさんの姿だけが、うすぼんやりと見えていた。
オレたちは同化を経たからこそ、現実の時間の流れから隔絶された、こんなつまんねえ場所で対話ができるのかもしれない。
だから一応、この暗闇はオレの脳内ってとこだろう。
寝てる時に見る夢なんかより、意識がはっきりした空間だ。
「アンタに聞きてえことかあったもんでな」
「母なる者のことか?」
「ま、それもあるわな。……マザーってのはどこのどいつだ? そいつの、この世界をリセットしようなんざ戯言は本気か?」
オレの質疑に、シュタインのジイさんは静かに、どこまでも静かに答えた。
保たれすぎた平静に、少しだけ苛立ちを覚える。
「母なる者とは……この世界を見守る者だ。遠い遠い昔に、この世界『エヴリデイ・ハロウィーン』を創り上げた創造主の残留思念……それが我らがマザーの正体。マザーの思想は、世界を守ることに極めて特化しており……だからこそ、悪意に塗れた今の世に、マザーはたいそう嘆いておられる」
シュタインのジイさんが告げた真実とやらに、オレは皮肉のつもりで片眉を上げた。
「見守ってきた世界が気に食わねえ反抗期中だからリセットって? そりゃ、随分と愛が足りねえお母様だな?」
この挑発は、少しはシュタインのジイさんの心に届いたのか。
しわくちゃの顔の眉間に更に皺に寄せつつも、それでもジイさんは穏やかな声色のままに語る。
「それがマザーの決断なら、儂らは従うまでよ。……今のマザーは、あくまで残留思念。実体が無い存在だ。実体を構成する為のマザーの心は、世界のあちこちに散らばってしまっている。儂らは散らばったマザーの代わりに、愛しきマザーの願いを叶えるべく生み出され、生きてきた存在。……そして、再世後の世界を統治する使命を与えられた新人類だ」
シュタインのジイさんの語り。
シュタインのジイさんの正体。
明らかになった真実とやらを、世界の危機とやらを――オレはただ、笑い飛ばした。
だってそうだろ。
あまりにオレの思想と違う。
だからと言って感銘一つ受けやしない。
端的に言えば――くっっだらねえ。
訝しげにこちらを見るシュタインのジイさんに、オレは目線を返す。
まっすぐに見据えるように、堂々とした視線を決して逸らさず、オレ自身の在り方を崩さず――オレはオレの、在り方を語った。語り聞かせてやった。
「なあ、ジイさん。オレはな、戦車といい特製銃といい……オレが造った機械はみんな、オレの血肉って呼んでんだ。そいつらには魂が宿ってるって、オレは信じてる。……何でかわかるか?」
シュタインのジイさんからしてみりゃ突拍子もない質問に、ジイさんはますます顔をしかめる。
それにオレは、得意の不敵な笑みを返してやる。
アンタにゃわかんねえか、わかんねえだろ。
なら教えてやる。そのしわくちゃの脳に、刻みつけてやる。
「オレはよ。『死』ってのは、『停滞』と同義だと思ってんだ」
「停滞だと?」
「ああ。いくら肉体が、輪郭が、カタチがあろうと……何をされても反応がなかったら? 傷つき砕けても問題がなかったら? 生き物が心身を鍛える為の努力が、機械に施されるような改良がそいつになかったら?」
そんな。
そんな、つまんねえもんは、オレから見たらよ。
「……そんなのただの、死体と同じだ。進化がない日々に、オレは命も魂も感じない」
訝しげに黙り込むシュタインのジイさんに、オレは一歩、また一歩と近付く。
「じゃあ進化ってのは何か? っつー話だ」
話も続けさせてもらう。
もうちょい付き合ってもらうぜ、ジイさん。
「オレは、進化っつーのは失敗や挫折を引き連れてこそだと思ってる。その果てに、勝利を勝ち取ればなおよしだ。失敗を糧に未来に進み、強くなる。この繰り返しが、オレにとっての進化だ」
そして、オレは至近距離に来た。
オレにとっての、シュタインのジイさんにとっての至近距離に。
さあ、聞けよ。聞いて、響いて、ひれ伏せよ。
オレの生き様に、慄いちまえ。
「それが、オレの生き方だ。過去の失敗も挫折もまるごと引き連れて、日に日に強さを知って、今を生きる。そして未来に進んでいく。そうしてこの先出会う、全てに勝つ」
ひれ伏せ、ひれ伏せ。
誰であろうと。
「母なる者だあ? 知ったこっちゃねえよ。こちとら孤児だ。……だけどそんな過去も大事に引き連れて、オレは今まで誇らしく生きてきたんだよ」
そこまで言って、オレは。
勢い良く、シュタインのジイさん相手に中指を立てた。
「失敗も、辛いも苦しいも全部なかったことにしてやり直し? 冗談じゃねえ! オレの生き方バカにすんな!」
ふざけんな、ふざけんじゃねえ。
そんな侮辱、許さねえ。
「……生憎オレはきかん坊の暴れん坊でな。そりゃもう20年モノだぜ、筋金入りだ。夜空の星々にすら、中指立てて生きてきたんだよ。……アンタの信奉するお母様とやらにも同じだ。中指立ててケンカ売って、完全勝利を決めてやる」
母なる者。
知ったこっちゃねえ。知ったこっちゃねえんだよ。
少なくとも、オレとセレスとロゼッタにとっちゃ、エリーゼ姉ちゃんが母親だ。
んなもんは、人によって違うだろ。だからこその、命で歴史で世界だろ。
全人類の母、なんざ傲慢抜かすヤツには、抗うしかねえんだよ。特に、オレみたいなやつはよ。
「覚えときなジイさん。オレはハロルド=パンプキン。いずれマザーとやらに勝って、ついでに世界をそこそこ守ってやる男だ。……人それぞれの過去や人生の重みってやつすら知らねえやつに、負ける気はしねえんだよ」
シュタインのジイさんが、反論しようとでも口を開いたが、即座にその意を叩き潰す。
「……ジイさんよ。アンタは永く生きてきたんだろうがな。……わかるぜ。アンタはなーんも遺しちゃいねえ。からっぽだ。アンタは過去にすらなれねえよ。ただただお母様とやらの言いなりになってるうちはなぁ!!」
オレが、そう言い放った瞬間。
すう、と辺り一帯の空気が凍える感覚が肌を刺した。
びりびりとした圧が、ひりつくような殺意が、オレの肌をさあ剥がしてやろうと襲い来るような感覚。
殺意の主は、シュタインのジイさん。
――イイね。
枯れた老いぼれかと思ったが、大事なモンの為にブチ切れる気概くらいはあるみたいだ。
マザーだのリセットだの、シュタインのジイさんの言い分には一つも賛同できねえが。
なあ、ジイさんよ。
そういうとこは、気に入ったぜ。
暗闇の中、二丁のマシンガンを構える。
さすがはオレの脳内。
ご丁寧に武器も再現してくれるたあ、サービス良いね。
さすがに戦車はないみたいだが、いっつも戦車に頼りっきりじゃあ、あのイケ好かねえ堅物トロール にすら敵わねえってのは身に染みてる。かと言って、セレスにはこれからも負けねえけど。
さて、と。
さあ、アンタはどうくる? シュタインのジイさんよ。
戦車なしでもオレは強いぜ。
なにせ、接近戦にやたら長けた幼馴染二人に揉まれて育っちまったからな。
ジイさんが手をかざすと、暗闇の中に一瞬の光が灯る。
瞬きしたら、もうジイさんの準備は出来ていた。
ジイさんの手に握られているのは、棒状のもの。
棒術使いかと思ったが、漂う空気からうっすら魔力を感じる。
ああ、シュタインのジイさんが握っているのは杖か。魔法の媒介の役目を果たすもの。
魔法の使い手とサシで戦う機会は珍しい。
オレは自然と高揚し、マシンガンを意気揚々とぶっ放す。
案の定、対象を撃ち抜いた達成感はまるで感じられない。
乱射の勢いで生じた硝煙が晴れると、透明な球状のバリアに守られたジイさんの姿が見えた。
へえ、そういう魔法も使うのか。
おもしれえ。
諦めるどころか、オレは胸が弾む思いだった。
ふつふつと、血が湧き立つ感覚にどんどん心が昂っていく。
わりぃなジイさん。アンタがあまりにママママうるせえから、侮ってた。
アンタは、強い。
オレの心が疼くくらい。
アンタに勝ちたくて、全身がぶるりと震えるくらい。
ああ、勝ちてえな。
だったらゲン担ぎの時間だ。
己を奮い立たせる時だ。
さあ、名乗れ。
主役は、オレだ。
オレの名を知らしめろ。
それで、相対する好敵手を――。
――倒して勝って、フィナーレだ。
「――ようこそ、名高き母の使い!
我が名はハロルド=パンプキン!
全てに打ち克つ、絶対無敵の主人公!!
挑んでくるたあ、恐れ入った!
その勇気、ただブチのめすにゃ実に惜しい!
そんならこっちも死力尽くして――尊き強者を、完全勝利で魅せてやらあ!!」
ガキの頃に舞台の上の世界に憧れた気持ちのまんま、芝居がかった台詞をさらさらと口にする。
下級階層育ちだろうが、義賊生活のはぐれもんだろうが、そんなものは関係ねえ。
オレの心が折れない限り、オレはこの舞台の、オレの世界の真ん中で、主人公として生き抜いてやる。
――だけどわかる。誓える。
オレが折れる未来なんて、一生来ない。
二丁のマシンガンのうち一丁を、下方に突きつける。
シュタインのジイさんの足元じゃなく、ここが暗闇なんかじゃなかったら路面のド真ん中だろう場所に、引き金を引いた。
タイプライターのような連続した銃声が響き、銃弾の雨が闇に吸い込まれ――る、ようで。
暗闇に吸い込まれ損なった数発の銃弾は、撃ち込まれた反動で跳ねて、宙に弧を描き。
ジイさんに近付いたところで――銃弾は弾け、視界を支配するスモークを発生させた。
オレの特製改造弾だ。跳ね返るのが想定より遅い。強度もスモーク発生のタイミングも、まだ調整いるなこりゃ。
シュタインのジイさんが息を呑む音が聴こえる――途中でオレは駆け出し、スモークの中を臆せず駆け抜けて。
スモークに戸惑っているシュタインのジイさんの横っ面を、マシンガンの銃身で殴りつけた。
ガンッ、と重たい音が静かな暗闇に響く。
鈍器としてマシンガンを使われると思わなかったのか、あっさりよろけるジイさんに追撃を食らわせようとしたが――やっぱりこのジイさんは厄介なくらいに強いようで。
振り下ろしたマシンガンは、ジイさんの杖で受け流された。
「……やるねえジイさん。しぶといジジイは嫌いじゃねえよ?」
「二度も不意打ちは通用せんわ。老いぼれとは言え、あまり舐めてくれるなよ。小僧」
しばらく、銃身と杖で白熱した鍔迫り合いを続けていく。
シュタインのジイさんの杖さばきはなかなかのもんだ。
魔法をまともに撃ち込まれちゃいないのに、ジイさんは剣代わりに振るう杖オンリーで、己のペースを崩さなかった。
なるほど、なかなかにやるじゃねえか。
老いてるとは思えねえ身のこなしだ。
足払いでも仕掛けようとしたら、すぐに杖がこっちの急所を狙って突き出される。
接近戦じゃ、当たり前だが向こうに利がある。
ああ、ホント。イイな。
勝つ為の想像力を働かせるのが楽しくてたまらない。
勝ちたい。抗いたい。ぶっ飛ばしたい。
勝利への渇望。反骨心。
オレの根幹を満たすもの。
その欲がこれでもかと刺激されて、自然と笑っちまう。
シュタインのジイさんが、オレから数歩距離を取った隙に杖を一振りする。
一瞬で赤くなる視界に、炎の魔法が撃ち込まれたのだと理解する。
オレはさっと身を屈め、スライディングする形で魔法を避けつつ、本日何度目かのジイさんへの足払いを試みる。
両のマシンガンの銃口を、ジイさんの腹部に突きつけたまま。
シュタインのジイさんはジイさんで、オレの喉元を狙って杖を振り下ろそうとした。
さあ、どっちが先に仕留めるか。
最後まで楽しもうじゃねえか、このギリッギリの決闘を。
だけど。
杖の先がオレの喉を掠める寸前。
シュタインのジイさんは、今の今までオレと殺し合いしていたとは思えないほど、穏やかに微笑んだ。
少し眉を下げて、困ったような笑み。
さっきまでは歴戦の老戦士じみた殺気を迸らせていたのに――たった一瞬で、ジイさんは丸くなった。
優しく穏やかな、儚さすら感じる――ご隠居様の表情になったんだ。
「……すまぬな、若人。潮時だ」
そう言って、シュタインのジイさんは全身の力を抜き、杖を収める。
やるせなさそうな笑みを湛えたジイさんの胸の辺りから、色が失われていく。
服も、肌も、灰色に染まっていく。
――化石の色に、染まっていく。
「……限界が来たようだ。新人類として創られた筈だが……儂は、永く生きすぎてな。これが最後の仕事だったのだよ。……貴君を取り込む前に、己の心臓部のカーネーションに負荷をかけすぎた。……儂の負けだ。身体が動かん。今回化石になるのは、この街でも世界でもない。……儂だよ」
シュタインのジイさんの脚まで灰色に染まり、脚の感覚がなくなったのか、ジイさんはその場に崩れ落ちる。
石が落ちたような、硬い音と共に。
「……おめでとう、若人よ。貴君の勝ちだ。貴君の言う通り――老いぼれは過去に、史に何も遺さず……潔く退場するとしよう」
失われていく色に縋ることもせず、ただ膝をついて、終末の『その時』を待つシュタインのジイさん。
オレは――そんなジイさんの心臓部に、銃口を突きつけた。ゼロ距離で。それで、どついた。
「……わりぃなジイさん。オレは年寄りを労れないわりーヤツなんだよ」
「ふっ……なんだ、その手で引導を渡してくれるのか? それもまた――」
「ちっげえよ。オレと一緒に来い、ジイさん」
「……ん?」
オレの誘いに、ジイさんは怪訝そうに顔を上げる。
ああ、いいじゃねえか。
全部諦めたようなつまんねえ笑顔よりは、そっちの表情の方がずっといい。
「オレと同化した仲のくせに、そんな簡単に諦める心持ちは気に食わねえな。……アンタはただの石になって終わるんじゃない。死体にでもなんねえ限り、オレはアンタを諦めない」
ぱき、ぱき、という音と共に、とうとう灰色以外の全ての色を失ったシュタインのジイさんの身体が変質していく。
人体の輪郭を捨て、手のひらサイズの石に変わっていく。
オレはそれを片手に乗せて、宣言した。
「石になったアンタを、オレがこれから引き連れ歩いてやる。アンタを起こす方法を探しながらな。……いつか叩き起こしてやるから、それまでに、アンタ自身のやりたいこと考えとけよ。マザーの言いなりだけなんて生き方、つまんねえだろ」
「何を……物好きな……」
「……本当はマザーの情報、さっさと詳しく聞いた方がいいんだろうけどな」
だけど、まあ。
オレの自我が、叫んでる。こうしたいと。
石ころになったジイさんに向かって、オレは笑った。
「戦うアンタを気に入っちまった。世界は化石にさせないし、あんたを過去のものにだってさせやしない。……今は安心して眠っとけよ、ジイさん。こちとら何人も手下抱えてっから、器には自信あんだ。今更アンタが仲間入りしたって、どうってことねえさ」
「……なぜ……なぜ、だ……?」
「あ? だってよ、ジイさん――」
先ほどの、シュタインのジイさんとの戦いを思い出す。
オレの笑みが、また深まる。
「……アンタ、オレとのケンカだって――マザーの命令抜きのことだって、ちゃんと楽しめただろ? このまま寝てエンディングなんざ、勿体ねえよ」
オレの言葉に、石ころと化したシュタインのジイさんは黙り込む。
そうこうしているうちに、暗闇が崩れていく。
同化が終わり、オレとジイさんのイマジナリー空間の熱い戦いも終わったってことか。
だけど、最後の最後。
暗闇が完全に崩れる直前。
「……ああ。楽し、かったなあ……」
ジイさんが短い眠りにつく直前の、穏やかな声が脳の奥に響いて。
そうだろう、とオレも呟き、消えていく暗闇を笑い飛ばした。
そして、気付けば背景は見知った故郷の街並み。
オレがジイさんを止めたからか、街の化石化現象は、綺麗さっぱり治っている。
だけど、オレの片手には大きな石ころ。
マザーとやらに創られたシュタインジイさんの、仮眠スタイルのような姿。
オレは手にした石ころを、ジイさんを、月明かりへとかざしてやる。
いつか、この石の中の中で眠るジイさんを叩き起こすのだと、誓いを込めて。
「……義賊・バッグパック盗賊団団長・ハロルド=パンプキン。悔しいことに、今はアンタに辛勝だ。オレの背中の荷物、ガツンと重くさせてもらったぜ――強く尊き、老戦士さんよ」
しばらく物言わぬだろう石ころに笑いかけ、月を、星々を、夜空をまっすぐに見上げ。
オレは今掴んだ勝利を祝い、未来に掴むであろう勝利に焦がれ――どうしようもない高揚感を持て余し、盛大にこの夜を、また笑い飛ばしたのだ。
◆




