その7 はにぃ・ばにぃ!
★回帰解禁マザーズデイ・サムデイ!
第一話『ほうき星狙いのトリックスター』
その7 はにぃ・ばにぃ!
teller:ロゼッタ=スターリング
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久々のハロとの再会にも驚いたし、変な戦車に乗るハメになって、ハロのやつは相変わらず機械弄り大好きなんだなあと安心やら呆れやらはあったけど、今のあたしにとって孤児院やエリ姉の安否の次に気にしてることは。
ちら、と隣に目をやる。
綺麗な長い銀髪、健康的な褐色肌……と、これまた違った印象を与える眼鏡、それと特徴的なタキシードバニー服を着たスタイルの良い女の子。
ハロとのやり取りを見るにこの子もハロが立ち上げた義賊集団の一員なんだろうけど……。
…………なんでバニーなんだろ。
美人ちゃんだから似合ってるけど。
じいっとあたしが見過ぎたのか、女の子が少し不思議そうに視線を向けてきたので、じろじろと失礼だったかと『ごめん』と謝る。
「ハロのやつ、アホだガキだってずっと思ってたのに……いつのまにこーんな可愛い子連れて歩くようになっちゃってたとはねー」
ハロをからかう目的で、ちょっと意地悪な声色でこんなことを言うと。
「か、可愛い……!?」
――過剰反応したのは、可愛い女の子のほうだった。
ぼんっと一瞬で真っ赤になっちゃってそれはもうめちゃくちゃ可愛いけど、ごめん、ほんとごめん、あなたをからかう気は全っ然なかった。
「おう、こいつはジャンヌ。オレの自慢の右腕だ」
当のハロはけろっと……って言うか自信満々にそんなことを言ってのける。
からかいたい相手にノーダメージだったもんだから、ちょっと消化不良。
ま、そうよね。ハロは昔っから妙な自分ルール中心で少年ハートのまま生きてたから、浮いた話なんて今まで一つも……。
……あれ。
意気揚々とした様子で戦車を運転するハロと、『右腕』発言を噛み締めるかのように、頬を少し染めてハロをじっ……と見つめる女の子――ジャンヌを、あたしは交互に見て。
……これ……あー、ジャンヌの方は……あー……!!
幼馴染の初めての『浮いた話』をたった今目の当たりにしたことや、ハロの性格を考えるとジャンヌに色々な同情心が込み上げてきたこと、などなどから。
あたしは、気付けばジャンヌの肩にぽん、と手を置いていた。
「……あたし、貴方のこと応援するわ……よろしくね、ジャンヌ。なんかあったらいつでもロゼッタお姉さんに言いなさい」
「……え? ……あ。挨拶が遅れました、申し訳ございません……ジャンヌ=アップルビーと申します、ロゼッタ様。私も団長に仕える身として貴方をお守り……」
「ハロに泣かされたらすぐ言ってね。ハロのやつ、新技の練習台としてタコ殴りにしてサンドバッグにしてやるから」
「!? そ、それはいけません……団長は、私がお守りします……それに……団長は私を泣かせたりなどしません。……素敵な御方、ですから」
かっわいっっ。
こんなに慕ってくれる女の子なかなかいないからハロ、大事にしなさい……と言ってやりたいけど、ハロに色恋の話は通用しないだろうし、ジャンヌの意外と初々しい態度を見ているとこの子の乙女心を大っぴらにすんのも気が引けるし……。
……やばい、もうハロをサンドバッグにしたくなってきた。
敵を見誤るな、あたし。今危ないのは街と孤児院、エリ姉。
……でも、まっすぐにハロを見つめるジャンヌの横顔があまりに微笑ましかったから。
ハロが気を配れないところくらいは、あたしがこの子を大事にしたいな、なんて。
そんなことを、自分勝手に思って。
やっぱり自分勝手に、この子のあらゆる味方でいようと誓った。
「ロゼッタお姉さんは貴方の味方だからね、ジャンヌ……!」
「ありがとうございます、ロゼッタ様……お優しい、のですね。それにとてもお美しいです。……私も、貴方の味方でありたいです」
そんな殊勝なことを言ってくれるジャンヌがまたもう可愛くて、『なんでアンタはこの子に惚れてないんだ、その目は節穴か』と運転中のハロの首根っこを掴んでやりたくて疼く両手を必死で、必死で抑えた。
ジャンヌこんなに可愛いんだから、ハロだってちょっとくらいドキドキしても……あ、無理か。無理だな。ハロだしな。
幼少期から地続きの、やんちゃまみれのエピソードが走馬灯のようにあたしの脳裏を過ぎり、あたしはついつい、なっがい溜息を吐き出すしかなかった。
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