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回帰解禁マザーズデイ・サムデイ!  作者: ハリエンジュ
第一話『ほうき星狙いのトリックスター』
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その2 義賊・バッグパック盗賊団!

★回帰解禁マザーズデイ・サムデイ! 

第一話『ほうき星狙いのトリックスター』

その2 義賊・バッグパック盗賊団!


teller(語り手):ハロルド=パンプキン





 大型機械(きかい)(てい)『グッドフェロー号』。


 列車に近い形をした、空・陸・海対応の万能移動メカ。

 それが、我らがバッグパック盗賊団の根城。

 オレのここ最近のお気に入りの改造戦車も、グッドフェロー号の格納庫に収納されている。


 オレたち義賊に休みなどなく。

 オレたち義賊に安寧、平穏、何も似合わず。

 オレは次なる戦いに備え、新たに自慢のド級にド派手なメカを万全な状態に仕上げるべく、工具が散らばる床に座って整備に没頭していた。

 昔から、やたらとこういう作業がオレには性に合っているのだ。



 ――魔法世界、『エヴリデイ・ハロウィーン』。


 魔導院に統治され、魔導士サマたちに仕える騎士が秩序と規律を守る世界。

 オレらに似合わねえ安寧や平穏は、騎士サマどもの領分だ。


 魔法が幅をきかせるこの世界の主なエネルギー核は、真紅の魔石『カーネーション』。


 この世界の多くの都市は、カーネーションを動力源にして機能している。

 そこまでの価値があるからこそ、偉ぶった勘違い野郎がたまに欲を出してカーネーションを無駄に所有したりと、問題を各地で起こしている。


 ってことで、オレらバッグパック盗賊団が義賊として頻繁にあちこちで茶々入れてやるわけだ。


 その手の欲深い星々――お偉いさんどもが、オレのターゲット。

 無駄にギラギラ煌めく奴らに一泡吹かせ、輝き奪い、真に世を照らすはオレら。

 そういう生き方をしているもんで、カーネーションとは何かとオレも縁が多い。



 ――とは言っても、オレ自身はカーネーション自体に頓着しているわけじゃない。

 別に使わなくても生きていける。

 機械いじりが好きなのだって、拠点や武器をわざわざ自力で造り上げてるのだって、既存のエネルギーに頼らずに生きる方法を試してみたいから。

 決められたもんに従うだけはつまらない。

 だったら全部、自分で創ってしまえばいい。

 オレだけのものを沢山増やせば、その分オレは自由だろう。


 だからオレには、カーネーションはそういう意味では必要ない。

 あくまで、世の中のあれこれ気に食わねえなあ、引っ掻き回してえなあ、って気分で義賊人生満喫中の身だ。


 どっちみち、オレの為であることは間違いない。

 オレはオレの為にしか動かない。


 そりゃそうだろ。

 オレのこの人生をこの視点で体験できるのは、どれだけ探してもオレだけなんだから。

 オレの意思をまず愛さなきゃ、何も始まらねえだろう。



 ――時に、カーネーション、とは。

 かつては花の名だったらしい。

 母親を想う意を込められた、赤い花。


 オレには、母親は居ない。

 正確には居るんだろうが、実の母親に育ててもらった記憶はない。

 もともと魔導院おひざもとの街外れの孤児院育ちだ。

 そこで共に育った同い年の幼馴染二人とは今も縁はあるが、そのうち一人とは未だによく喧嘩をする。

 昔は幼馴染三人で、よく星を見に行ったもんだが。


 だから、夜空の記憶は妙に焼きついている。

 星に手を伸ばしたのも。

 星に焦がれた末に反骨心が芽生えてこうなったのも。

 全部、あの頃の思い出があるから。


 母が居ない環境で生きてきて、母を想う気持ちをよくわかっていないからこそ、オレはカーネーションに頼る以外の道を見つけられたのかもしれない、とたまに思う。


 まあ、これはこれで良き人生。

 こういう風に生まれてこういう風に生きてきたんだから、最後まで笑って楽しめば勝ちだ。


 全部超える。

 全部凌駕する。

 全部掴み取って、全部勝つ。


 とことん欲張りに勝ち取っていく。

 そういう方針で、今日もオレは進み続ける。


 ハロルド=パンプキン。

 オレはオレの名前を、全世界に轟かせる。



「――団長」



 音もなく近付いたらしい。

 数歩後ろから声が聴こえた。


 気配を消すのが得意な、オレの右腕。

 オレが求める闇夜に上手く紛れそうな黒が主張するバニースーツの女。

 バッグパック盗賊団副団長・ジャンヌ=アップルビーがオレの傍に控えていた。


 作業は止めないまま、振り返らぬままにオレはジャンヌに問いかける。


「どうしたよ、ジャンヌ。なんか問題でも起きたか?」


「はい。……例の、騎士様がいらっしゃいました」


 はっや。

 思わず声に出しそうになった。


 丁度最後の調整部分のネジを締めるところだったので、ネジを強くきつく締めてから、オレは工具を放って立ち上がる。


 振り向けばジャンヌは思いの外近くにいて。

 オレを守るかのようにナイフを構え、周囲を警戒していた。


 気付けば機械艇内のあちこちから野太い悲鳴や、清々しいまでに設備が破壊され尽くしている騒音が聴こえた。


 はっや。

 だからはえーっての。

 報告来た時にはもう手遅れなやつじゃねえか。

 その役は昨夜オレがカジノでやったんだぞ。

 まだ昨夜だ昨夜。

 なんならまだ昼飯時にも至ってない。

 あの身体能力バグ野郎、騒ぎ聞きつけてすぐこっち来やがったな。



 オレがホルスターから二丁のマシンガンを取り出した時、すぐ前の壁が文字通り割れた。

 一閃の斬撃。

 それだけで、綺麗に壁が崩れ、光が差し込む。

 相変わらず、脆い部分を見抜くのが得意なやつだ。


 ジャンヌに目で合図すると、ジャンヌは一瞬戸惑った素振りを見せつつも大人しく後ろに下がる。

 この展開にはもう慣れた。

 オレもジャンヌも、のされて今頃目を回しているだろう部下どもも、こいつには慣れてる。慣れたくねえが。



「……ラスボスには早くねえか? もうちょい調子乗らせろよ、セレス」


「黙れ恥晒し。……騎士の誇りにかけて、貴様の頭を地に沈めてやる。覚悟しろ、ハロルド」

 


 剣一つで全てを切り開く、騎士団内でも若き実力者。

 次期・騎士団長補佐候補と名高い男。

 この世の規律と秩序を守る者。

 オレを罰するのが仕事の男。



 堅物筋力バグ騎士、セレスティン=イースターことセレス様のお出ましだ。


 ――ついでに情報を補足するなら。

 セレスは、オレの二人いる幼馴染のうちの一人である。

 最悪なことに、よく喧嘩する方の。



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