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回帰解禁マザーズデイ・サムデイ!  作者: ハリエンジュ
第一話『ほうき星狙いのトリックスター』
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その1 奪い返して全てを還す

★回帰解禁マザーズデイ・サムデイ! 

第一話『ほうき星狙いのトリックスター』

その1 奪い返して全てを還す





 それでも、最後に勝つのはオレだ。



 最後に笑うのもオレだ。

 最後だけ、なんてケチなこたぁ言わねぇ。

 この世の全部、余すことなく。

 最初っから最後まで、笑い飛ばしてぶっ飛ばして、オレは楽しく生き抜いてやる。

 誰にも邪魔は、させやしない。

 世界が突然変わったとしても、一切の予告なく奇跡なんかが訪れたとしても。

 オレが起こす奇跡は、そいつらを凌駕してやる。



 ――何で、こういう価値観になったんだっけか。


 ああ、そうだ。

 オレはずっと、星を見ていた。

 手を伸ばしてた。広い夜空に、焦がれてた。


 何の前触れもなく降り注ぐ彗星が、昔は不吉の象徴だったと。いつの日か聞いた気がするから。

 例えば突然、あの落ちる星々が全てを壊そうとするのなら。


 ――抗って跳ね返してぶっ壊して、勝ってやりたいと、思ったんだ。





「まただ! またバッグパック盗賊団が出たぞ!」


「うちまで狙ってるなんて聞いてねえよ! 警備は何してるんだ!?」


「それが定期連絡が途絶え……っ、うわああああ!?」



 星が、煌めいていた。


 名前もわからねえ宝飾品で着飾った、お綺麗な身なりの奴らが、こぞって賭け事に溺れている。


 コインが舞う、コインが積もる。


 血筋も立場も、さぞかし誇れるもんだろう人間どもが蠢いて。


 きらきら、ぎらぎら、星が煌めいていた。


 オレの宿敵は、今日も輝き、世界を残らず照らそうとする。



 いいぜ、上等。

 オレは、お前らに勝つ為にこれまで生きてきた。


 光にはもっと強い煌めきを。

 影にはもっと深い黒を。

 栄光も後ろ暗さも、このオレが全部塗り潰す。


 

 乗り込むは自慢のメカ。

 オレが造り上げた、全世界の腰抜かし、度肝をぶち抜くカラクリ満載大戦車。


 街の暗部にこそこそ潜む、闇カジノ様のご大層な壁。

 そいつを丸ごとぶっ壊し、がんがん進み、邪魔だ邪魔だとスピード上げる。

 催涙効果のサービス付きの、淀んだ煙を撒き散らしつつ。


 そしたらどうだ。

 星々から涙が光り、また煌めいて。


 オレは愛用のゴーグルを着けたまま、得意の不敵な笑みを浮かべた。


 幼馴染には、腹が立つと言われた笑顔。

 子分には、好きだと言われた笑顔。


 これまた愛用の専用改造マシンガン二丁を掲げ、オレは高らかに宣言した。



「義賊・バッグパック盗賊団参上! このオレ、ハロルド=パンプキン団長自ら乗り込んできてやったんだ! オレらの背中の荷物、ガツンと重くさせてもらうぜ!!」



 マシンガンを乱射し、カジノの機器を破壊していく。


 コインが舞う、砂塵が舞う。

 お偉いさん方の汗や涙、諸々が舞う。


 最高だ。

 星が一斉にチカチカして、だけど誰もオレには敵わない。



 オレのマシンガンと、自動操作に切り替えた戦車はカジノの機器破壊を。

 オレについて来た子分どもは、カジノ利用者の捕縛と、後はちょいと探し物。


 大立ち回りを繰り広げていたら、まだ残っていたらしい警備員がオレ目掛けて切り掛かった。

 エモノを確認する暇はなかったが、ありゃ長剣の類だろう。

 ――が、遅い遅い。

 そんなんじゃ、オレの右腕にゃ勝てねえよ。


 オレを狙う剣の軌道がズレる。

 同時に警備員の巨体はバランスを崩し、そこを狙って数本のナイフが飛んだ。

 警備員の服を射抜いた鋭いナイフはお見事にも、壁にご丁寧に警備員を磔にする。


 気付けばオレの傍には女が居た。

 銀髪の艶やかな長い髪を靡かせた、褐色肌の、眼鏡をかけたタキシードバニー姿の女。

 ナイフを手にしゃがみこんでいた女の凛とした横顔が、煌めく星の中映える。

 女は視線だけ、オレによこした。


「ハロルド団長、お怪我はありませんか?」


「おかげさんで無傷だ、ジャンヌ。ついでに五体満足無病息災ってな」


 眼鏡の女――ジャンヌ=アップルビーはオレの右腕。

 義賊バッグパック盗賊団が誇る副団長。

 このオレ、ハロルド=パンプキンに絶っっ対の忠誠を誓ってくれる最高に頼れる子分。

 暗器の扱いや接近戦に長けたジャンヌは、武器や使用機械の関係で色々大振りになるオレの動きの、細かなカバーを常に優秀にこなしてくれる。

 さっきも恐らく、隠し武器を幾つか投げて警備員の長剣攻撃の軌道を操ってみせたんだろう。


「さて、ついでにお手柄だ、ジャンヌ」


「……え?」


 オレは磔にされた警備員の男に自己流戦車のアームを伸ばし、懐を容赦なく探る。

 戦車に内蔵された探知機は、ここだここだと騒いでいた。


 アームが男の懐から引き抜いたのは、カッと熱を持ちそうなほど眩く光る赤い石。


 こんなもんを持ってるってことは、警備員の装いは変装でこいつが元締めか、もしくはこいつが警備員の中で一番信用されていたのか。

 仮説は色々立てられる。

 だが当の本人が気をやっちまってるんじゃ確かめようがないし興味もない。


 この石が、オレの手の中にある。

 今はそれが全てだ。



「野郎ども! 今夜もオレの、オレたちの勝ちだ!!」



 オレが叫ぶと、子分どもが雄叫びを上げる。

 戦車を加速させて空に飛び出すと、ジャンヌが柱を転々と飛び移って追従する。


 夜の空気の下に出て、冷たい風が吹き抜けて。

 カジノに撒いた催涙剤がようやく曖昧になりそうな、真っ黒な夜空の下。

 やっとこさオレはゴーグルを外し、この手に握った赤い石を、かざして星明かりに照らして。

 盛大に、今夜を笑い飛ばしてやった。



 ハロルド=パンプキン。23歳。

 義賊のカシラ。

 ちなみに創設者だから初代団長。


 この世界、『エヴリデイ・ハロウィーン』のエネルギー核と言われる赤い石『カーネーション』を不当に独占、乱用する権力者どもからありったけ盗んで奪って、あちこちにばらまいて還す。


 そんな無法で無秩序で、だけどオレにとっての道を進む日々を送っていたりする。

 オレはそういう男だ。それが、ハロルド=パンプキンだ。



 今日も勝ったし明日も勝つ。

 毎秒オレは勝ち続ける。


 夜空に煌めく星々に、伸ばした片手の中指立てた、まだガキだったあの日から。

 この志だけはちっとも変わらず。


 誰より煌めき、誰よりも闇夜が似合う。

 そんな――そんな、ダークなヒーローで在る。


 これはそんなオレの物語であり、伝説にして伝承だ。


 さあ語り継げ、存分に。

 目に焼き付けて、忘れんな。

 さあ始まるぜ、準備はいいか?

 

 オレの闇が、世界を照らし尽くす。



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