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僕は御三家の最高傑作~現代社会の裏側で最強を極める~  作者: 藤水 肇


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8.襲撃の結末



後ろに下がり一旦距離を取る。もう1人いる。どこから出てきた。こいつ同様、妖力が“異質”すぎる。


こりゃ本格的に術式を使うしかないかな。


刺客の二つ目の術式が展開される。黒い陣が空中に浮かび、広間の天井一帯を覆う。重圧。空気が粘つく。

天城が息を呑む。


「……空間干渉系」


神代の顔から笑みが消える。


「ちょっと、これヤバくない?」


僕は静かに息を吐いた。


「……ああ。少しだけ、な」


刺客が低く笑う。


「御三家最高傑作とやら、その程度か」


――面倒だ。周囲を守りながら遊ぶには、少し強すぎる。仕方ない。


「おい」


僕は軽く首を鳴らす。


「僕に固有術式を出させるんだ。少しは粘れよ」


一歩、前に出る。術式の質を切り替え、今までの“抑制”を解く。その瞬間――広間の空気が沈んだ。床が軋み、シャンデリアの残骸が震え、派閥の子どもたちが無意識に膝をつく。天城の瞳が揺れる。


「……嘘」


神代が笑う。


「やっと本気?」


「まさか、ちょっと片鱗を見してあげるだけだよ」


僕は静かに妖力を身体に張り巡らせる。


「固有術式――」


空間が凍りつく。音が消える。色が薄れる。刺客の展開した黒陣が、まるで水面に石を落としたように波打った。


「《奔流支配》」


広間の空間が“僕のもの”になる。見えない圧力が天井から地面へと落ちる。空間干渉?笑わせるな。僕の術式は空間の流れを氾濫させそれを支配することで“空間そのもの”を従わせる。刺客の術式陣が砕け散る。

 

「なっ……!?」


重力が増す。いや違う。空気の流れを上空に集中させそれを刺客の真上から垂直に落とすことで立ち上がれなくする。刺客の膝が砕ける音がした。床に叩きつけられる。もう一人の刺客も同様に沈む。動けない。指一本、動かせない。


僕は歩く。圧倒的な静寂の中を。


「格が違う」


刺客の仮面に手をかける。


「子供の交流会を襲うなら、もう少しマシな人材を寄越しなよ。こんなんじゃデザートにもならないって」


仮面と共に頭を割る。完全制圧。術式を解除する。瞬間、空気が戻り重圧が消える。誰も声を出せない。


神代がぽつりと言い、その後に天城が続く。


「……反則でしょ、それ」


「……さすが現代最強」


賢斗が深く頭を垂れる。


「雅仁様、さすがでございます」


「大したことないよ」


木崎と結城の方を確認する。木崎は何もできなかったことを恥じているのか下を向いている。……やっと吠えるだけじゃなく実力差が分かったか。それより面白いのは結城の方だ。結城葵は膝をつき続けているのに対し結城晴翔は子鹿のように震えながらも立ち、結城葵よりも前にいた。


あいつの妖力量で耐えれたはずがない。おそらく首にかけてある特級クラスの妖力を纏ったネックレスのおかげなのだろう。すでにネックレスは妖力を纏っていない。使用に制限があるタイプか。


そんなことを考えていると広間の扉が開き、大人たちが流れ込んでくる。そしてそのまま交流会はお開きとなった。




帰りの車内で父と情報交換をする。


「遅かったじゃん。そっちも襲撃あったの?」


「いや、なかった。お前が術式を発動させるまで妖力を一切感じなかった。そのせいで遅れた」


「まじかよ。やばいじゃん。僕いなかったら多分ほとんど死んでたよ。あいつら従二階位レベルでしょ」


「ああ、そのようだな。だが結果的に助かった。今回はそれでよしとする。まあ、本部の結界はもっと強力なものにしなくてはならないがな」


「そうしてよー。あんな簡単に侵入されると心配になるよ。アレは特別だと思うけど」


「お前もそう思うか。アレらは今尋問を受けているはずだ。何か情報を引き出せればいいが……そういえば神代家と天城家はどうだった。中々の才女と聞いてはいるが」


「んー、将来に期待かな。でも2人とも三位階並の実力は持っていたと思うよ」


「そうか、ならどちらかをお前の妻に迎え入れても良さそうだな」


父の何気ない一言に、思わず眉をひそめる。


「は?」


「神代家か天城家。どちらも家格、実力ともに申し分ない。今回の件で貸しもできた。向こうからも打診がきている。悪い話ではあるまい」


車窓の外を流れる夜景を眺めながら、僕は小さく息を吐く。


「……僕まだ7歳なんだけど」

 

「御三家に“まだ”はない。それに婚約だけだ。すぐに結婚するわけではない」


即答だった。さすがに笑う。


「政略結婚ってやつ? 僕の意思は?」


「聞くだけは聞く」


「ほぼ決まってるじゃん」


父はわずかに口元を緩める。


「今回の襲撃。あれは偶発ではない。狙いは次世代の陰陽師の刈り取りだろう。」


「だろうね」


あの刺客の妖力。あの“異質”さ。あれは野良じゃない。あんな妖魔よりのやついるかよ。それに気配を悟られず広間に侵入したカラクリ。全てが謎すぎる。


車は静かに夜の高速を走っている。父の言葉が、頭の奥に引っかかっていた。


「次世代の刈り取り、ね」


「偶発ではない。計画的だ。問題は……誰が裏で糸を引いているかだ」


僕は窓に映る自分を見る。今日の刺客。そして、父ですら感知できなかった隠蔽。


「内部に手引きがいる可能性は?」


父の視線が一瞬だけ鋭くなる。


「その線も否定できん」


沈黙が落ちた。異能管理局の結界は七曜家全家で作った最高傑作だ。その結界を突破するには、内部構造を知っている必要がある。それも相当詳しく。


父の携帯が鳴り、父が携帯を取る。父の顔が険しくなる。……なんかあったっぽいな。


「……捕縛した二人のうち、一人は自壊した」


「は?」


通話を終えた父が言った言葉に僕は顔を上げる。


「術式の核を砕き、妖力を暴走させた。自決だ。残る一人も意識が不安定らしい」


ちっ。


「プロだね」


「ああ」


ただの刺客じゃない。尋問中に自決されないようにするのは基礎中の基礎だ。尋問官がそれを怠ったとは思えない。


訓練された、組織的な何かだ。僕は目を閉じる。――空間干渉系。あれほど練度の高い術式を若年層が使うわけがない。年齢は若く見えたが、肉体操作か擬装だろう。


「父さん」


「なんだ」


「これ、しばらく面白くなりそうだよ」


「……お前は少し緊張感を持て」


「あるよ。ちゃんと」


少しだけ。


 ===


結界内。封鎖された尋問室。拘束された最後の刺客が、薄く笑う。


「御三家の最高傑作……思ったより、幼いな。他の有力な家のガキも弱い……」


尋問官が術式を展開する。


「目的を話せ」


刺客は天井を見つめる。


「じきにわかる。我らの計画はもう、始まっている」


瞬間。刺客の胸元に刻まれた黒い紋様が淡く光る。


「――っ、術式反応!?」


空間が歪む。拘束術式が内側から裂ける。刺客の身体が霧のように崩れ、溶ける。残ったのは、焦げた床と――黒い欠片。それはゆっくりと形を変える。


「……回収完了」


どこからともなく響く声。結界内部に、微細な穴が開いていた。


 ===


僕は自室の縁側で寝転んでいた。昨日のことが頭を巡る。すると、風間が僕の部屋にノックをし声をかけてから入ってくる。


「雅仁様。至急、ご当主様の執務室へへ」


「んー?」


「昨夜、拘束していた刺客が消失しました」


僕は起き上がる。


「は?」


「結界内部から、です」


……はは。僕は小さく笑った。


「最高じゃん」


結界内部から消える?自壊でも転移でもない。結界そのものを“すり抜けた”。つまり……


「結界構造を理解してる奴がいる」

 

風間は黙る。僕は立ち上がる。


「父さん怒ってる?」


「……はい。かなりお怒りです。」


「だろうね」


空を見上げる。快晴。まるで昨日の惨劇が嘘みたいだ。でも世界の流れが、確実に変わり始めている。


 

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