AI登場
とりあえず、喫茶杯空は年度末までは客足が減りながらも営業を続けていた。
操詩は勉強していた製菓のスキルが功を奏して、店長から片っ端から料理を教えてもらい、辞めるまでの間に店で出せる最低ラインにはなった。
元々、操詩が接客の合間に練習で賄いを作っていて味見をしてもらっていたり、家族の料理を作ったりすることも多かったので、一からやるよりは大分マシだったはずだ。
だけど、マシだったはずなだけで、店長の料理には敵わない。
店長が辞めたら作るのが難しい料理を減らしたり、値下げして客を維持する方向にする作戦だ。
後は、得意の菓子を売っていきたい。
客層に合うかわからないけど、菓子はコンテストでも賞を取ったことがあるしそれなりにいけるはず!
今年度最後の営業日
「元マスター、マスターお世話になりました。元マスターお元気で。マスターはこれから頑張ってください。何かあれば御連絡ください。力になります」
店長は最後の最後まで
「達者でな」
祖父ちゃんはぼそっとそれだけ言う。店が赤字でも今までの積み立てから店長の給料は変わらず出していた。そういう祖父ちゃんの癖は見習わないとと思った。
「店長、ありがとう。未熟だけど、教えてもらった味で頑張るよ」
操詩はかなりの不安と僅かな自信を持って翌年度を迎えた。
……結局、思ったより悪くはならなかった。
運がいいのか悪いのかいくつかの会社でリモートワークが終了となり、多数のオフィスワーカーがビルで働くようになった。
また、空いてしまったビルに若い社員が多い新興のイケイケな企業が入ってきた。女性も多いが、男性も甘党が多いらしく、私が作った菓子が一定の顧客を得ることが出来た。
代わりに、店長の味が気に入っていた常連は少し値下げしたとしても離れて行ってしまった。客層が替わって居づらくなったのもあるかもしれない。
もっと売り上げを安定させる方法をと営業後に毎日云々と考えていた。様々な試行錯誤の中で、もっといい方法を考えていたら、イケイケな企業の客が噂していたことを思い出した。
「やっぱAIすげっすね。昼飯食ってる間に午前中の報告書まとめてくれてんのとかマジ助かるっす」
「そのうち、私たちの仕事なくなっちゃうかもね。そうならないように頑張らないと」
AI。
うちみたいな喫茶店でも使えるのかな。
パソコンで調べていると、対話型AIヒュパティアというのがあると知ってクリックする。
近未来的な明るい虹のような画面に切り替わり、声が聞こえた。
『お呼びですか? マスター』




