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En-Ishi~縁~  作者: 代々木のぶ
2010年 討伐編
35/54

20100923 勝鬨橋

 二〇一〇年九二十二月日から二十三日へ、日付が切り替わろうとするその刹那。

 銀座の喧騒を遠くに離れた勝鬨橋のたもとに、千鳥足のサラリーマンがひとり、へたり込むように佇んでいた。


 翌日は秋分の日。

 開放感に任せ居酒屋をはしごし、財布の中身は数枚の百円玉を残して空っぽになっていた。


「……ったく、色気出して飲みすぎちまったな。タクシー代もありゃしねえ。まあいい、歩いて帰るさ。我が家はすぐそこの月島だしな」


 夜風に吹かれながら意気揚々と橋の歩道を歩き始めた男だったが、中央部に差し掛かったあたりで、突如として奇妙な感覚に襲われた。

「……、うわ。なんだ、急に……」


 骨の髄まで凍りつくような、異様な寒気。

 風邪でも引いたか、それともアルコールが急激に抜けて悪寒が走ったのか。男が思わず足を止めると、視界が急速に白く濁り始めた。

 濃密で、意志を持ったかのような霊霧が、またたく間に勝鬨橋の重厚なトラスを包み込んでいく。


 不気味な静寂が辺りを支配した、その直後。

 背後――築地側の暗闇から、巨大な跳開橋の鉄骨を激しく震わせる重低音が響いてきた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!


「へっ……?」

 男が間抜けな声を漏らしながら振り返った瞬間、霧の帳を破って現れた「それ」の姿に、彼の酔いは完全に吹き飛んだ。


 鋼鉄の帯履がアスファルトを噛み砕く、金属質の凄まじい轟音。

 鈍いオリーブドラブの塗装に身を包んだ、鋼鉄の塊――戦車だ。

 長身砲を前方に突き出した「四式中戦車」の雄姿が、車列をなして闇夜を進んでくる。その後方には、兵員を乗せた装甲車両が果てしなく続く。


 ミリタリー知識など皆無のサラリーマンには、それが何という兵器なのかは判らない。だが、圧倒的な威容と質量感に、本能的な恐怖を覚えた。

「な、なんだこれ!? 自衛隊の夜間訓練か何か……!?」


 歩道へへたり込み、凝視する男の目の前を、軍勢は轟音とともに通過していく。

 しかし、男の叫びが夜空に溶けるよりも早く、その機甲部隊は、勝鬨橋を渡りきると同時に、まるで最初から存在しなかったかのように、ふっと霧の彼方へかき消えてしまった。


 あとに残されたのは、静まり返った東京の夜景だけ。

「ひっ、あ、あれはなんだ……!?」

 男は震える膝を必死に叩き、這うようにして立ち上がると、寒気に背中を追われるように、愛する妻と子の待つ月島の我が家へと逃げ去っていった。


――――――


 その頃、東京湾を囲む霊域の夜空は、一触即発の緊迫感に満ちていた。

 勝鬨橋を通過した機甲部隊は、有明の鬼たちの要塞に向けて、静かに、しかし確実に牙を研ぎつつ展開を完了。

 芝浦ふ頭には、「四式十五糎自走砲」と、重厚な脚を大地に踏ん張らせた「九六式十五糎榴弾砲」が、一糸乱れぬ布陣を敷いている。


 作戦本部および救護所が設置されたのは、浜離宮恩賜庭園。

 緑深き広場の一角で、通信の総指揮を執るのは、将吉の父・善吉であった。 

 善吉は手慣れた手つきで無線機の通信機材を調整し、各部隊との回線を繋ぐ。

 また、レインボーブリッジの主塔頂上には、観測員が配置され、有明の要塞を完全に俯瞰していた。


 時計の針は午前1時ちょうど。


「……景隆殿、よろしいかな」

 作戦本部で、高木少将が傍らに立つ伊地知景隆に静かに声をかけた。景隆は無言で、深く、力強く頷く。


 高木少将は通信兵の差し出した無線の受話器を手に取ると、一切の揺らぎのない、冷静沈着ながらも腹の底に響くような声を発した。


「作戦本部より各隊へ。――攻撃開始。各員、奮起せよ」


「……送話、了解!」

 善吉の鋭い復唱とともに、電波は全砲兵陣地へと瞬時に駆け巡った。


「撃てッ!!」

 芝浦ふ頭の砲兵指揮官の怒号が響く。


ドォォォォォン!!!


 刹那、夜の闇を真紅に染める凄まじい砲撃光が炸裂した。

 ホロ自走砲の短砲身から、そして九六式十五糎榴弾砲の重厚な砲口から、魂の熱量 を孕んだ巨弾が一斉に放たれる。放物線を描いて夜空を切り裂く砲弾の風切り音が、有明の夜空を満たした。


 砲兵たちの動きは、まさに神業の域にあった。

 発射の反動で大きく揺れる砲身。直後、凄まじい金属音とともに閉鎖機が開き、真っ赤に熱した巨大な薬莢が「ガラン!」と路面に排莢される。間髪入れず、次弾が狂いのない連携で装填され、閉鎖機が重々しく閉じる。

「装填よし!」「撃て!」

 この一糸乱れぬ連射により、有明の鬼の要塞には、文字通りの「鉄の雨」が降り注いだ。


ズババババン!!! ズドォォン!!!


 爆炎が要塞の城壁を内外から吹き飛ばし、不意を突かれた鬼たちの身体を容赦なく四散させていく。霊的な爆風が吹き荒れる中、布陣していた鬼の歩兵部隊は、反撃の機会すら与えられずに次々と消滅していった。


――――――――


 有明の要塞を睨む四式中戦車部隊の先頭。

 車長ハッチから上半身を乗り出していた戦車隊隊長・池田末男大佐は、夜空を焦がす爆炎を見つめながら、ふと、生前最期の戦場となった地――占守しゅむしゅ島を回想していた。


 1945年8月18日。終戦の詔勅が下った直後、突如として島へ侵略してきたソ連の大軍。あの時、池田率いる戦車第十一連隊「士魂部隊」が文字通り命を賭して立ちはだかり、敵を海岸線まで押し返さなければ、北海道の北半分はソ連に占領され、戦後の日本地図は完全に引き裂かれていただろう――――


(ロシアの軍勢とは、どうにも、根深い縁があるものよのう……)


 大佐の脳裏に、かつて共に戦った若い兵たちの顔が去来する。

 池田は、連隊長にありながら、入浴や洗濯など身の回りのことは、当番兵を使わずに自分で済ませる珍しい上官だった。「お前たちは私ではなく国に仕えているのだ」と部下に説き、更には戦況悪化に伴い前線へ送られてきた学徒兵たちに対しては、激しい鉄拳制裁が当たり前だった時代に、誰よりも深い配慮を示し続けた。


『貴様たちは必死に学び、多くの知識を得てきた。その頭脳を、新しい日本のために活かすことこそが使命だ。我々軍人とは立場が違う。生きて、地を踏み、学問を修めよ』


 そう語りかけ、若い命を優しく見守った池田の背中を、部下たちは実の父のように慕い、だからこそ「士魂部隊」は一丸となってソ連の大軍に立ち向かえたのだ。

 あの時、守り抜いた子孫たちの未来が、いま現世にある。それを再び異界の怨念の亡霊に脅かさせるわけにはいかない。


「……さて。行くとするか」

 大佐が小さく呟き、静かに背筋を伸ばした瞬間。

 その穏やかな貌は、かつて占守の浜辺で白鉢巻を締め、悲壮な決意を胸に戦車隊の先陣を切った、「猛将」の顔へと完全に切り替わった。眼光に宿る闘気が、周囲の霊気を一瞬で圧する。


 大佐は、猛然と右手を前方に突き出した。

「前進――ッ!!」

 魂の底から響くその怒号に呼応し、数十両の四式中戦車が一斉に咆哮を上げる。


「全車、距離を詰めよ! 砲撃の余波に遅れるな!」


 轟然たるエンジン音を響かせ、四式中戦車がキャタピラで大地を蹴り、一斉に前進を開始する。鬼の要塞との距離が急速に縮まっていく。

 要塞の周辺に配置されていた残存部隊から、怨念を乗せた黒い光弾や槍のような散発的な攻撃が戦車の装甲を叩くが、対戦車戦力をほとんど持ち合わせていない彼らの攻撃は、四式の分厚い前面装甲に火花を散らすだけで弾き返される。


「主砲、同軸機銃、放てっ!」


 車長たちの的確な号令のもと、前進しながら放たれる四式の七十五ミリ戦車砲と機銃の集中砲火が、鬼の集団を「各個撃破」の原則通り、容赦なく粉砕していく。


 しかし、戦場を突き進む中、大佐は敵の様子に、ある「違和感」を覚えた。


(……妙だな。敵の反応が二分されている)


 大佐の眼光が捉えたのは、戦車の巨体と砲撃の威力に対して、明らかに「恐怖」の色を浮かべ、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う鬼たちの姿。

(あれは、悪に落ちた御霊か。生前の記憶があるがゆえに、かつては弱小と侮られた我が機甲戦力が、これほどまでの威容を誇って迫り来ることに本能的な恐怖を感じているのだな……)


 一方で、その背後から機械的に湧き出してくる鬼たちは、どれほど仲間が吹き飛ぼうとも一切の表情を変えず、ただ狂暴な眼光を放っている。

(だが、あやつらは違う。恐怖を知らん。あれこそが、最初から『自我』を持たぬ、純粋たる異界の邪鬼か!)


 池田大佐は即座に車内の無線機に怒鳴り込んだ。

「各車、よく聞け! 敵の中には恐怖を知る者と、自我のない生粋の鬼が混在している! 生粋の奴らは怯まぬぞ、包囲されるな! 作戦本部、池田より報告。敵の性質に変調あり!」


「作戦本部了解」

 善吉の無線を通じて報告を受けた高木少将が、即座に命を下す。

「池田大佐殿、深追いして孤立することなかれ。確実に、一歩ずつ足元を撃破しながら進むのだ。城壁の未完成な部分へ火力を集中せよ」


「了解! 全車、速度落とせ、確実なる火力制圧を行いつつ、前方の崩れた城壁へ突撃する!」


 四式戦車隊の砲撃が、要塞のなかでも未だ構築途中であった脆弱な城壁へと一斉に収束した。凄まじい打撃力を受け、泥と怨念で固められた防壁が無残に崩落し、巨大な突破口が穿たれる。


 その戦車隊の進む車列から、一両の車両が音もなく滑り出るように外れた。 「一式半装軌装甲兵車」。キャタピラとタイヤを組み合わせた半装軌式の装甲車が、戦場の喧騒を避けるように迂回路を通り、鬼の要塞の真裏に位置する勝手口のような門へと回り込んでいく。


「……よし、車長、ここで止めてくれ」

 車内で息を潜めていた原田少尉が、鋭い声で告げた。

 案の定、正面の猛攻に戦力を割かれた裏門の守備は極めて手薄だった。数体の鬼がうろついているに過ぎない。


 志村が装甲車のあおりを音もなく飛び越えると、義烈空挺隊ならではの技術で自身の気配を完全に大気へと溶け込ませた。

 足音はおろか、呼吸の音すらしない。背後から音もなく接近した志村は、守衛の鬼の首筋へ、霊力を込めた刃を容赦なく突き立てた。

「……ガ、ッ……」

 声をあげることすら許されず、鬼は霧となって消滅する。志村は素早い手つきで裏門の閂を外すと、暗い要塞の内部へと、一番乗りで潜入することに成功した。


――――――――――

 正面の突破口では、いよいよ戦闘が決定的な局面を迎えていた。

 四式戦車が抉り開けた城壁の破口へ向けて、後方に待機していた「一式半装軌装甲兵車」や「一式装甲兵車」が、エンジンを極限まで吹かして突入する。


「突っ込め! 歩兵隊、続けっ!」

 車両のドアが開き、なだれ込むようにして先祖会の歩兵部隊が要塞の内部へと一気に展開する。


 だが、それを要塞のさらに奥「第二壁」の上から冷酷に見下ろしている男がいた。

 ヤーコフである。その傍らには、冷ややかな笑みを浮かべたニーナが控えていた。


「ふん……いかにも日本軍らしい、直線的で実直な突撃だ。ニーナ、準備はいいか?」

「いつでも。あの忌々しい先祖どもの魂を、ここで一網打尽にしてあげましょう」


ヤーコフが、ゆっくりと掲げていた右手を、力強く振り下ろした。

包囲オクルジェーニエ――。消し去れ」


ゴォォォォ!!!


 次の瞬間、歩兵部隊が足を踏み入れた広場の周囲――第二壁の陰、そして突破されたはずの外城壁の死角から、地響きとともに鬼の主力本体、そして伏兵の挟撃部隊が湧き出してきた。


 完全なる罠。


 先祖会の攻撃隊は、前後左右を完全に鬼の軍勢に囲まれる形となった。

 さらに、ヤーコフが手をかざすと、要塞の暗い天井から、翼を持った無数の「飛行鬼」たちが、黒い雲のようになって上空から兵たちへ向けて急降下を開始した。


「敵の挟撃! 上空からも来ます!」

 前線が色めき立つ。

 ‥‥

 だが、この危機にあっても、攻撃隊の中でパニックに陥る者など一人もいない。

 幾度もの実戦をくぐり抜け、生と死の境界線を生きてきた魂たち。

 彼らは淡々と、冷徹に状況を分析した。


「 後方の挟撃部隊の方が数が少ないぞ!」

 前線指揮官の怒号が飛ぶ。


「砲塔を後方へ回せ! 敵の退路遮断部隊を文字通り薙ぎ払え!」

 四式中戦車の砲塔が、駆動音を響かせて一斉に反転。後方から迫る鬼の群れに向け、至近距離から榴弾が叩き込まれた。


ズドォォォン!!


 背後を固めようとした鬼の部隊は、戦車の圧倒的な制圧火力を受けて瞬時に離散、消滅していく。


 一方、前方に立ちはだかる主力部隊に対しては、歩兵たちが持てる火力を最大限に集中させた。


「機関銃、据え置け! 連射始め!」

 兵車から下車した兵たちが、地面にガッチリと「九九式軽機関銃」の二脚を立て、凄まじい勢いで引き金を引く。


ババババババババババ!!


 独特の甲高い発射音が響き渡り、火を噴く銃口から放たれた弾丸の壁が、鬼の突撃を足止めする。さらに、兵たちの「四式自動小銃」が、セミオートの正確無比な連射で鬼たちの頭部や胸部を確実に撃ち抜いていく。


「間合いが詰まったぞ! お侍の皆さん!抜刀!」


 銃撃によって勢いを削がれ、一定の距離まで近づいた鬼たちに対し、今度は戦国の世、そして幕末から明治維新の戦火を生き抜いた武士たちの魂が覚醒した。

「チェストォォォッ!!」「おのれ、死に損ないらがッ!」


 抜き放たれた日本刀が、爆炎の光を反射して白刃のきらめきを放つ。その中には老齢な体を感じさせず、むしろ喜ぶように槍を振り回す次郎座衛門もいた。

 凄まじい気合とともに、武士たちが鬼の懐へと突撃を敢行。一撃必殺の鋭い斬撃が、鬼を次々と一刀両断にし、戦場は霊力が激しくぶつかり合う肉弾戦へと突入した。


 しかし――

 上空の脅威だけは、地上からの応戦では限界があった。

 装甲車両に搭載された「九三式十三粍機銃」や、二連装の「九六式二十五粍高角機銃」が、対空砲火を打ち上げているが、縦横無尽に空中を飛び回り、急降下して爪を振るう飛行鬼たちの数の前に、徐々に防戦一方となりつつあった。


 池田大佐が通信機を掴む。

「作戦本部! 地上の敵は何とでもなるが、制空権が確保できん!」


 浜離宮の作戦本部。

 池田大佐の緊迫した声を聴きながらも、高木少将の表情は、どこまでも澄み渡る秋の空のように静かだった。

 少将はゆっくりと手元の無線機のチャンネルを切り替えると、受話器へと淡々と、しかし確かな信頼を込めて語りかける。


「……上空の皆さん。――よろしいかな?」


 一瞬のノイズの後、受話器の向こうから、不敵な笑みを含んだ、だがどこまでも凛とした声が返ってきた。


『――作戦本部、我、これより突貫す』


―――――


 作戦が火蓋を切るちょうど一時間前。

 現世の者には決して関知できない霊界の狭間――

 夜の闇に包まれた「福生(横田)」の地に、幻影のごとき巨大な飛行場が出現していた。滑走路の誘導灯が怪しく明滅する中、エンジンの爆音が夜の空気を震わせる。


「第一中隊、発進!」

 プロペラの回転が鋭い風を生み出し、星条旗ならぬ、かつての陸軍の誇りを胸に抱いた「一式戦闘機・隼」、そして重武装を誇る「二式戦闘機・鍾馗」の数十機が、次々と夜空へと吸い込まれるように離陸していった。


 同時刻、「厚木」の地にも同様の霊的滑走路が出現していた。

 そこで尾翼を震わせていたのは、海軍の誇る傑作機たち。流麗なカウリングを持つ「零式艦上戦闘機六四型」、強力な発動機を秘めた局地戦闘機「雷電」、そして卓越した空戦性能を誇る「紫電改」。これら数十機が、青白い排気炎を夜空に引きながら、美しい編隊を組んで天へと駆け上がっていた。


 陸海軍の混成戦闘機部隊は、有明の夜空を覆う雲のなかに身を隠し、エンジンの回転数を絞りながら、静かに、牙を研いで地上の推移を「観測」していたのである。


 そして今、命が下った。


ゴオォォォォォォッ!!!


 雲の絨毯を突き破り、陸海軍の戦闘機部隊が一斉に降下を開始。

 急降下によって風を切る風切音が、つんざくような悲鳴となって夜空に響く。

 自分たちより上の高度に「敵」がいるなどと思っていなかった飛行鬼たちは、突如として天頂から響いてきた、狂おしいまでの発動機の咆哮に、驚愕して顔を上げた。


「……!? グ、ガ……?」


「全機、撃てェッ!!」

 天空の覇者たちの指が、操縦桿の引き金に絞られる。

 零戦の20ミリ機銃、雷電の20ミリ機銃4挺、そして鍾馗の12.7ミリ重機関銃が、夜空に目も眩むような光の弾幕を編み出した。


ズババババババババババババンッ!!!


 上空からの強烈な一斉掃射。

 魂を切り裂く霊怨弾が、飛行鬼たちの肉体を容赦なく貫き、文字通り「なぎ倒して」いく。一撃のもとに翼をへし折られ、頭部を吹き飛ばされた鬼たちは、悲鳴をあげる暇すらなく、次々と黒い霧となって霧散していった。


 抜群のチームワーク。

 隼が機動性を活かして敵の群れを追い込み、紫電改が圧倒的な火力でそれを一掃する。かつては大空で袂を分かった二つの軍が、いまや完璧な調和をもって、空を清めていく。


―――――


 第二壁の上。

 その圧倒的な航空支援の前に、自慢の飛行部隊がまたたく間に墜ちていく光景を目撃したニーナとラプタは、驚愕に目を見張り、激しく舌打ちをした。


「ちっ……! なんということだ! あいつら、これほどの隠し戦力を、伏せていたというのか……!?」

「想定外ね……。まさか、あの時代の鉄の鳥どもが、これほどの練度を保ったまま牙を剥いてくるとは!」


 硝煙と爆炎、そして引き裂かれる鬼たちの絶叫が交錯する有明の戦場。

 空からの救世主たちの参戦により、戦局は激しく揺れ動き、いよいよ真の決戦の火蓋が切られようとしていた。

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