悪役令嬢攻略対象に出会う
第二話楽しんでください
ある日、お父様に「大切なお客様をお迎えするから、おめかしをして待ちなさい」と言われ、私は応接室へ向かった。
そこに座っていたのは、まばゆい金髪に、すべてを見透かすような鋭い青の瞳を持つ美少年。
ゲーム『光の聖女』のメイン攻略対象であり、将来の私を破滅させる張本人――第一王子・レオンハルト殿下だった。
(ひええええ! 出たわね私の処刑フラグ!!)
内心で頭を抱えて絶叫する私を、レオンハルト殿下は冷ややかな目で見つめている。
彼は事前に『エルバート公爵家のラナは、わがままで傲慢な令嬢だ』という噂を聞いていたため、今日もどうせ、王子の地位目当てにベタベタとすり寄られるのだろうと、うんざりしていたのだ。
(落ち着いて私。ここで変に馴れ馴れしくして目をつけられたら終わりよ。とにかく粗相のないよう、完璧に丁寧に対応して、一刻も早くこの場から立ち去るのよ……!)
私は緊張でバクバク言う心臓を抑え、これ以上ないほど上品でおっとりとした微笑みを浮かべた。そして、完璧な所作で美しいカーテシー(淑女の礼)を決める。
「お初にお目にかかります、レオンハルト殿下。エルバート公爵が娘、ラナにございます。本日は我が家へお越しいただき、心より歓迎いたしますわ」
すり寄るどころか、非の打ち所がないほど礼儀正しく、お嬢様として完璧な挨拶。
レオンハルト殿下が「……あ、あぁ。よろしく、エルバート公爵令嬢」と少し面食らったように返事をする。
「殿下、お父様とのお大切なお話がおありでしょう。私のような若輩者が長居をしてはご不快にさせてしまいますわ。お二人がゆったりとお話しできるよう、私はこれにて失礼させていただきますね。どうぞ、我が家でのお時間を心ゆくまでお楽しみくださいませ」
私はレオンハルト殿下を気遣うような優しい笑みを浮かべ、流れるような動作で一歩下がった。
「それでは、失礼いたします」
そのまま、そっと、しかし大急ぎで応接室を退出した。
「ふぅぅぅーーーー!! 死ぬかと思った!!!」
扉が閉まった瞬間、私は壁に背中を預けて激しいため息をついた。
(よし! 粗相もしてないし、すり寄ってもない! 完璧に大人の対応でフェードアウトできたわ!)
一方、残された応接室の中。
レオンハルト殿下は、ラナが去った扉をぽかんと見つめたまま、激しい衝撃を受けていた。
(……噂と、全く違うではないか)
いつも自分に群がってくる令嬢たちのように、下心を持ってベタベタしてくることは一切なかった。それどころか、自分の立場や父との時間を最優先に気遣い、実に淑女らしく、引き際まで美しく身を引いたのだ。
(私に余計な気を遣わせまいと、あえてすぐに退室したのか。なんて聡明で、思いやりのある令嬢なんだ……)
本人が廊下で「よっしゃ、生存ルート一歩前進!」とガッツポーズをしているとも知らずに、レオンハルトの胸の中で、ラナへの好感度が爆上がりしていたのだった。
第二話どうでしたか?
攻略対象に出会ったラナこれから二人はどうなるのでしょう




