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那尻大輔は特務官である ─サイバーファンタジーの来訪者と本気出します─  作者: 南田華南


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9/10

第九話 那尻大輔は、砕け散る

 栗色のセミロングに茶色の瞳。白いジャケットとスカートをまとい、

 黒いシャツとストッキング、白い靴が映える。


 そこに立っていたのは、那尻大輔が密かに想いを寄せ、告白すら考えていた

 組織随一の美女――吉咲陽菜だった。


 那尻は、怪獣の所在を教えた吉咲が現場に現れた謎を必死に追った。

 だが到底理解できず、ついに那尻はその真意を本人へ突きつけた。


「よ、吉咲さんッ!! これは一体どういうことですかッ!!」


 無造作に後部座席のドアが開き、一人の男が放り出された。

 後輩の熊野だ。口を塞がれ、拘束バンドに食い込むほど四肢を

 縛り上げられた無惨な姿。彼は必死に何かを訴えようとしていた。


「熊野に『催眠操作魔法』使ったら、テメェが二人のガキと

 汚ねえ寮に隠れているってゲロったんだよ」


 那尻は、ただ呆然と立ち尽くした。記憶の中の彼女は、

 疲れをねぎらい、コーヒーを差し入れてくれる穏やかな人だ。


 だが――今の陽菜は有り得ない『ガキ』という言葉を吐く。

 異能の兆候すらなく、戦いとは無縁な「非戦闘員」のはずだ。


 車からもう一人の男が降り立つ。薄くなった後頭部に、蓄えられた白い口髭。

 那尻に引けを取らぬ長身をベージュのスーツに包んだその男の名は、乃頭ノズ数行カズユキ


「か、課長ッ!! なぜ、そこにいるッ!! あの命令は──」

「そんなの、君をここで『処刑』するに決まっているじゃない♡」

「処刑だとッ!? 吉咲さん! こんな男に従っちゃだめだ!!

 俺たちは『仲間』だろッ!! 正義の心を取り戻すんだッ!!」


 だが、那尻の正論は微塵みじんも彼女に伝わらなかったッ!!


「気持ち悪いんだよ、テメェは」

「・・・・・・は?」

「最初からテメェみてえな男に憧れる訳ねえだろッ!!

 テメェを『仲間』と信頼したことは1ミリもネェ!!」


 吉咲が邪悪な笑みを刻み、乃頭は勝ち誇ったドヤ顔で、手に入れた力を語る。


「いやぁ~~~・・・・・・このAI凄いよッ!! あの世界で手に入れた甲斐が

 あったねぇ!! これで僕と陽菜ちゃんは『魔法使い』になれたんだよッ!!」

「ナ、ナニィイイッ!!」


 その刹那──光学迷彩で姿を隠していた双子の魔法使いは突然姿を現した。


「忘れもしないのだッ!! 10年前に比べて髪の毛なくて、一瞬誰だが

 分からなかったが、その『多魔手箱タマテバコ』で思い出したのだッ!!

 お前は、うちに来た『東京から来た男』なのだッ!!」


 続けて、シュリーナも目を多く見開き、仕込み刀を構えながら喋った。


「『那尻大輔』さんですね。10年前、あなたは私たち家族に、そう名乗りました。

 こっちに来て、本物の那尻さんを見て、確信しました。あなたは最初からAIを

 手に入れるために母を『銀色の拳銃』で撃ち、父を犯人に仕立てたッ!!」


 乃頭は、すり寄る吉咲の肩を抱きながら、10年前の真実を語る。


「『運』だよ。僕が『裂け目』を偶然見つけ、そしたら君たちが

 AIのことを教えてくれた。多魔手箱タマテバコは、僕を選んだの♡」

「違うのだッ!! AIにお前を選ぶ因果はないのだッ!!」


 レナは声を荒げた。だが直後、不可思議な現象が起きる。レナの頭上へ、

 工事現場の鉄骨が突如として降り注いだ。那尻は即座に、時空操作を発動した。


無制限停止アンリミテッド・デッドロックッ!!」


 白い波形が急速に広がり、那尻以外の時が止まった。だが、もう一人いたッ!!


因子加速アクセラレータッ!!」


 赤い空間が辺りを包み込み、那尻の『静止時間』を『加速時間』が上書きする。


 女性の残像が那尻の眼前に現れる。それは、那尻の初恋の人、吉咲陽菜だった。

 那尻の反応速度を凌駕する時空加速を見せた吉咲は、一瞬で那尻の背後を取る。


 彼女は、那尻の急所を思いきり蹴り上げた。那尻の片方の碧眼から青白い閃光が

 爆ぜる。吉咲は、続けて無数の拳の残像で那尻を圧倒した。


「ヘボォォエゲアウウウッ!!」


 那尻は奇声を上げ、残像が重なった吉咲は超光速の連撃で彼を叩きのめす。


解除リリースッ!!」


 時が戻った瞬間、レナの後頭部を鉄骨が直撃し、彼女は気を失って倒れた。

 同時に、那尻はアザだらけになり、白目をむいたまま、地面にひれ伏した。


 吉咲の拳から湯気が立つ。だが、彼女に痛みや疲れの色は微塵もない。

 前髪をかき上げ、勝利の余韻に浸る吉咲。そこにシュリーナが迫る。


 両目を見開き、鬼の形相で赤鞘あかさやを吉咲に打ち込む勢いで、シュリーナが叫んだ。


雅神ガシン一刀流・・・・・・弦月斬ッ!!」


 シュリーナは接近し、『唐竹割り』を放つ。両親の仇、乃頭が愛する、

 吉咲の頭上に振り下ろした刹那、空を切る。彼女の決死の一撃が外れた。


 その光景を見た乃頭は、歓喜の声を上げた。


「陽菜ちゃんは、時空操作。僕はねぇ・・・『確率操作』なんだよォッ!!」


 運命は残酷だった。多魔手箱タマテバコは『一つ』ではなく、『二つ』存在したのだ。


 乃頭のAIは、あらゆる事象の『確率』を自在に操る。吉咲の命中率を100%に

 上書きし、那尻たちの攻撃を0%にする。さらに吉咲のAIは時空操作までも

 学習し、工事現場にある『次元の裂け目』からエネルギーを得ていたのだ。

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