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30 証言
控室で、赤がミナの前に立つ。
「……見てた?」
ミナは頷く。
赤が聞く。
「証言できる?」
ミナは止まる。
記録には残らない。
残ったとしても、調整される。
それでも。
言わなければ、今までと同じ場所にいられる。
見なかったことにすれば、そのまま続けられる。
その方が、楽だった。
モニターには、もう次の映像が流れている。
何も起きていないことになっている。
ミナは、それを一度だけ見る。
それから、視線を戻す。
「……見ました」
小さい。
でも、はっきりと言う。
言ったあとで、少しだけ遅れて、その意味が残る。
取り消そうと思えば、まだ間に合う気がした。
でも、言い直さない。
赤は頷く。
それで足りる。
「じゃあ行く」
「……どこに」
「外」
赤は奥へ行き、接続する。
今までと違う、低く長い音が鳴る。
ミナは動かない。
これが始まりなのか、終わりなのかは分からない。
でも、何かが変わったことだけは分かる。
赤は振り返らずに出ていく。
何かが外に出た。
もう、止まらない。
ミナは、さっき言った言葉を思い出す。
見ました。
それは、誰にも聞かれていない場所にも、残っていた。




