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15 境界
音が途切れた一瞬。
ミナは舞台の端で、床に沿う黒い細い線を見る。
均一で、まっすぐで、
どこにも途切れていない。
ただそこにあるだけなのに、
そこだけが、舞台と切り分けられているみたいだった。
どこかへつながっている。
そういう形をしている。
“接続”
その言葉が浮かぶ。
すぐに消える。
次の瞬間には、音が戻る。
光も、動きも、元に戻る。
線だけが、さっきと同じ場所に残っている。
──
控室に戻る。
赤が小さく聞く。
「見た?」
ミナは頷く。
赤は「気にしなくていい」と言う。
それだけ。
説明も、補足もない。
それで終わるはずだった。
だが、ミナは気づく。
ただ見たのではなく、
最初から意味を分かっているような言い方だった。
ミナの中に、小さな違和感が残る。
どうでもいいはずのことが、
どうでもよくなくなる。
気にしなくていい、と言われたことで、
逆に、気になる。
あの線は、ただの線ではない。
ミナは、もう一度思い出す。
舞台の端にあった、黒い細い線。
どこかへつながっているように見えた。
けれど、それが何なのかはまだ分からない。




