17/36
16 知っている
静かな控室で、ミナは赤を見る。
「……さっきの」
赤が視線を向ける。
「見えた?」
ミナは頷く。
言葉が続かない。
何を聞けばいいのか、分からない。
赤は少しだけ間を置く。
考えているようで、
すでに決まっていることをなぞっているみたいだった。
「見なくていい」
「……でも」
「見ても、変わらない」
短く断定する。
その言い方には、迷いがない。
それは脅しではなく、
すでに知っていることを繰り返しているだけだった。
ミナは、その言葉の重さを測りきれない。
ただ分かる。
赤は、あの先を知っている。
見た先に何があるのか。
見ても変わらない理由も。
だから、見なくていいと言える。
ミナには、そこが見えない。
同じものを見ているのに、
見えている範囲が違う。
一瞬だけ名前が浮かぶ。アカネ。
すぐに、赤に戻る。




