ふっ、アルセイアのママとしてなら仲良くしてやろうじゃないか
ご飯を食べて、雑談をした後に2人は帰って行った。
お土産をくれたので、私もお揃いの腕輪をプレゼントしたら喜んでくれた。2人のお揃いの指輪のオーダーを受けたので、次に会う時までに作っておこう。
そしてセイランとローザの長期休暇が終わったので、2人を帝国に帰した。
次はヴァン王国に行ってアルセイアを帝国に送るのだが……クルルとセイランの婚約を言わないといけないのでヴァン城の前に来ていた。
とりあえず、受付まで行くか……
「すみません、アルセイア王女は居ますか?」
「申し訳ありませんが、お答え出来ません。お引き取りを」
「そうですか……居たらルクナが来たと伝えて欲しいのですが……」
「お引き取りを」
「あの……」「お引き取りを」
門前払いだった。かなぴ。アルセイアの部屋は侍女が居る可能性があるから直接は行けないのよね。私の事嫌いだし……
にしても怖いお姉さんだったな。反ルクナ派とか居るのかしらね。
いやそもそもぐるぐる眼鏡にジャージで城に来る奴なんて入れたくねえわな。
最近お洒落がわからなくて、悩んだ末にジャージになってしまうからもうジャージ一択で良いやって思ってしまい、絶対不可侵の特権だって勝手に決めた私が悪いです、はい。
明日また来るかぁ……城への道の端っこを歩いていると、豪華な馬車がこっちに向かってきていた。
轢かれたら嫌なので、道から外れて馬車が通り過ぎるのを待った。
……止まったな。窓が開いて、こっちを覗き込む顔は見覚えがあるわね。
「……ルクナ? 久し振りね」
「お久し振りです王妃様」
「……帰り?」
「はい」
「……今、時間ある?」
「はい」
「……お茶、していかない?」
「良いですよ」
「ありがと……乗って行く?」
「いえ、歩きます」
……あら、王妃が降りて来て行きましょうという顔で少し微笑んだ。
最初の頃よりも柔らかい雰囲気になったから、こっちが素なのかしら? アルセイアとは固い話しかしないし、やっぱりまだわからんか。
「最近、どう?」
「個人事業主なので、毎日大変ですよ。まぁお蔭様で売上げは上がっていますが……あぁそうだ、最近ノースギアでも絶対不可侵認定されました」
「えぇっ!? ウォル・ノースマキナが居るのに?」
「はい。政治利用出来ないと判断されたのかは分かりませんが、帝国も近々私を絶対不可侵にするみたいですよ。これで晴れて母と同じ立場になります」
「その歳でそこまで登り詰めるなんて……ほんと、貴女を絶対不可侵にして良かったと思うわ」
「王妃様は流石ですね。私も絶対不可侵を取り消されないように頑張ります」
「取り消すなんてしないわ。ウォル・ノースマキナの娘の時点でヴァン王国で逆らえる者は居ない」
「あぁ……ヴァン王国はノースマキナ財団に恩がありますもんね」
ウォーエルが言っていたが、東の地域の災害の支援をしたらしく結構なお金を出したみたい。氷神巫女だから誰にも会わず、礼も受け取らなかった。貴族間ではどうやって礼をすれば良いか分からず、王に聞いてみたがヴァン王ですら会えなかった伝説の人物……てな感じの説明をされた。
最近普通に街を歩いているがなっ!
「そうだ、アルセイアは公務だから夕方まで居ないのよ」
「そうだったんですね。じゃあ夕方にまた来ます」
「あら、受付で聞かなかった?」
「いえ、この格好の女に教えると思います?」
「……それでよく来たわね。一応立場があるのだから普通の格好で来てよ」
「ジャージは絶対不可侵の特権ですよ。この妖精国産の生地でジャージを作らないとジャージにならないので……あっ、せっかくなので王妃様も着ますか?」
嫌そうな顔すんなよ。王妃だろ? 外では微笑みの鉄仮面被っておけよ。
アルセイアなんてピンクのジャージで過ごしてんだからさぁ……ライズから聞いたぞ、母親は娘のお下がりのジャージを着るって。
「私は王妃なの。引退するまでノーよ」
「そうですか……私はジャージで来て良いという事ですねっ」
「落差が激し過ぎなのよ。パーティーの時は誰よりも輝いているのに、日常生活だとクソダサいのどうにかならないの? 友達のブランドでも着なさいよ」
「あーこれセイランの服でしょーグニアのバッグでしょーとか言われたら恥ずかしくありません?」
「逆よ。自慢と宣伝になるでしょ。友達の為になるしそこで流行が生まれたりするじゃない」
「えーなりません。ノースギアでは私の着ている服とかめちゃくちゃ調べられるんですよ。雑貨屋さんで勝ったダサいチェックのシャツが流行った時はドン引きでした。ワゴンにあった50ゴルドのセール品ですよ?」
笑うなや。
なんかツボに入ったみたいで、城に入ってからも笑いを堪える姿はアルセイアっぽいなーなんて思ったり。
ほらっ、みんな見てんぞ。
せっかくなのでセール品のダサいシャツ達を見せてあげた。
我慢していた様子だったが、胸元に『君をゲッチュー』と書かれた服で崩れ落ちた。
「ぶふっ、くくっ……笑わせ、ないでよ……」
「私の友達もセンスが同じなのですが、同じの買っていました。もっと良いのありますよ、ほらっ」
「はぁ、はぁ、もうこれ以上見せないでっ、ぐっ、うぐっ、ぶはっ、あははっ! もう無理っ!」
「ふっ、王妃様を笑わせた私の勝ちですね」
私のとっておきのダサいシャツ……乳首の所にリボンが付いていて、『ファッション☆ウォーリアー』と書かれた蛍光ピンクのシャツだ。
これは私主催の第3回クソダサ王決定戦で優勝した時の服だ。予算2000ゴルドで市販品のクソコーディネートをしたのだが1回、2回とエリちゃんが優勝して3回目でやっと勝ち取った記念品。
因みにセイランはビリだったから普通にキレて、『元々ダサい奴に敵う訳ないじゃないっ!』なんて本当の事を言いやがったからエリちゃんと2人でガチ泣きして、第3回で閉幕した。
「はぁ、はぁ、こんなに笑ったの久し振りよ……涙出て来た。あっ、ちょっと待ってね。ねぇ、この子はルクナ・レド・ノースマキナといって私とアルセイアの大事なお客様だから通してあげてね」
「っ、はいっ! 申し訳ありません王妃様っ!」
「あぁ良いのよ、こんな服で城に来る変わり者だから仕方がないわ。名家のお嬢さんだけれど通さないのが正解よ。特に処罰も無いから今まで通りやりなさい」
「はいっ! ありがとうございます王妃様っ!」
「優しいですね、どうしたんですか?」
「失礼ね、誰彼構わず怒鳴るような女に見える?」
「ええまぁ、こんなダサい服で城に来る変わり者と言われたのでお返しです」
「誰がどう見ても変わり者じゃない。その変な眼鏡どうにからならない?」
「アズリーナ王女から貰ったので私の大事なものですよ。前にほら、アズリーナ王女が来た時に着けていたじゃないですか」
「あぁ……あの時、まじビビったわ。その内ノースギアに行くからルクナも居てね」
ビビったとか王妃も言うのね。
まぁアズ母の為なら同席しようではないか。アルセイアと仲良しなので、親同士も仲良くしてもらいたいものね。
晴れているから庭園でお茶会をする事になり、メイドさんにお土産の鬼饅頭を渡しておいた。
庭園だから誰か呼ぶつもりか? 前は専用のお茶会室だったが……まぁ良いけれど。
あっ、セイランママが良いなぁ……
「マーガレットさんは呼ばないのですか?」
「良いわねっ! お昼は? 夕方まで居たら良いじゃないっ」
「昼は各自で良いです? 一旦リューメイ魔導具店に行って来ても良いですかね。納品があるので」
「侍女達に運ばせるわよ?」
「ふぅん、これを運ばせられます?」
「ぅゎ……凄い……」
豪華な装飾品を並べて見せると、眼を輝かせて唸った。
上の世代は宝石やら豪華なものが好きだよねぇー。見せてほしいと言われたので、好きそうなものを並べていった。
「私の装飾品は特殊な効果があるので、探索者達にも人気なんですよ。これは宝石が付いていませんが、着け続けていれば徐々に解毒の効果があります」
「……今、買える?」
「王妃様が身に付けると出所を探られて私が個人取引をした事がバレるので、リューメイ魔導具店で買って下さい」
「どこに流れるか分からないじゃない」
「じゃあ一緒に行きます?」
「そうね。その途中でマーガレットを誘ってみるわ。他にはある?」
「はい、ウルさんに売り込もうと思って魔剣を作ってみたんですよ。試してみます?」
「…………魔剣?」
立ち上がって、細剣を取り出して王妃に柄を向けて差し出すと、王妃も立ち上がって細剣を受け取った。
使い方は簡単、魔力を通すだけ。
「柄に魔力を入れてみて下さい。魔力量は適当で良いです」
「わかった……っ! 氷の、剣……」
細剣から氷の刃が発生して、青白い長剣に早変わり。ふむ、絵になるな。
「氷の魔剣アイスエッジです。これは魔法使い用の護身武器で、戦士なら普通の剣を使った方が強度がありますね」
「迷宮産じゃ、ないの?」
「はい、同じのがあと5本あります。まぁ氷が弱点の魔物と戦うなら使えますがあくまで護身武器。強さ云々よりも注目すべきは格好良さです。氷の魔剣って格好良いからロマンって奴ですね」
「……欲しい。いくら?」
「まだ値段は決めていないので、リューメイ魔導具店でウルさんと決めようかなーって思っています。言っておきますが国とは取引しないので、リューメイ魔導具店で買って下さいね」
「わかっているわよ。あっ……雷の魔剣なんて無いわよね?」
「あぁありますよ。適性が高いと威力は増しますよね。はい、これです。危ないので私が使いますね」
「…………えっ……うそ……まっ、ちょっと待っていて!」
王妃が走り去っていった。
氷の魔剣返してよ。あんなの振り回して走んなや、ご乱心って言われんぞ。
とりあえずお茶を飲みながらぼーっと空を見上げていると、息を切らした王妃が戻ってきた。
手に持っているのは……ん? 古びた剣だが……
「あの、魔剣返してくれません?」
「これっ! これと一緒なのよっ! どういう事!? どうしてこの剣と同じなのっ!」
「ん? あーこれはアークイリア王女の剣ですか?」
「えぇっ! なんで知っているの!?」
「アークイリア王女は聖女ライザと友達で、師匠が一緒だったんですよ。これはその師匠が作った剣で、私はそれを作れるからどうせなら売ろうかなーって」
「…………」
「とりあえず氷の魔剣返してくれません? 一応売り物なので」
「……どうして、作れるの? おかしいわ……ヴァンもこの魔剣を研究して魔剣作りに挑戦していた……でも出来なかったの。アークイリア王女の日記には、友達が試しに魔剣を作ったなんてアホな事を言って渡してきた、と書かれていただけ……聖女ライザの子孫だとしても、再現なんて不可能よ」
「出来ますよ。私、ライザの記憶を持っているので」
「は?」
「私は妖精国のメティオール女王にライザの子孫だと認定して貰ってから帝国で発表したんですよ。ノースギアの家系なのに、誰もノースギアで聖女ライザの子孫だと言わなかったのは知らなかったからです。私が記憶を持っていたから、誰と結婚したとかアークイリア王女と友達だったとか師匠が誰かとか知っているんです」
「……貴女は、ライザの生まれ変わりなの?」
「いいえ、生まれ変わりだったら帝国になんて行きませんよ。せっかくなのでアークイリア王女の剣を見せて貰っても良いですか?」
納得いかないような顔で剣を渡してきたので、笑顔で返して受け取った。
……大事に使っていたのがわかる。柄の部分は血が滲んだ跡があり、少し魔力を通すとバチバチッと雷が発生した。千年も使える魔剣、か。メイラさんがいかに優れた鍛治士なのかがわかるよ。
「国宝だから丁寧に扱ってね」
「国宝……そうですか。アークイリア王女に免じて、雷の魔剣は売らないでおきます」
「絶対不可侵と言えど、魔剣が作れると知られたら大変よ。商人達がルクナを求めて何をするかわからない」
「ふふふ、ヴァン王国は魔物の氾濫と戦わなければならないので商売になりすよねぇ」
「……貴女の言った通りになったわ。あの土地はなんなの? 異常よ。調査しようにもいつ氾濫が起きるかわからない……よくあんな所で生き延びていたわね」
「私が住んでいた時は、氾濫なんて起きていませんでしたから」
ニヤニヤするとムスッとしながら手のひらを出してきたので、アークイリアの剣を返した。怒ったり笑ったり忙しい人ね。
私としてはしーらないっで済ませても良いのだが、アルセイアのママだから優しくしてあげようかしら。
「……正直、武器が足りない。氾濫が起きる度に死傷者も出ている。討伐者ギルドも大きな顔をし始めたわ」
「討伐者ギルドの氾濫アラームはエリスタ一族が作ったので、エリスタを追い出したヴァン王国に不信感を持つのは当然ですよ」
「……そうね。追い出したのはヴァンだもの……貴女は、これがしたかったの?」
「まぁそうですね。エリスタ一族がどれだけ凄い事をしていたのか、国に知らしめる事が目的でした。王族である王妃様が少しでも理解してくれただけで嬉しいものですね……旧エリスタを管理するブルース家はどうなっています?」
「……その事なんだけれど、相談に乗ってくれる?」
「えぇもちろん。ではお友達のマーガレットさんも居た方が良いのでは? 1人で抱えるにはとても重い事を言ってしまうかも知れませんよ」
「はぁ……末恐ろしい子よね。息子達なんか私と対峙するだけで黙ってしまうのに。さっさと納品に行きましょ」
「はい、モテる女ですから。せっかくなので手を繋いで行きますか?」
上目遣いで笑い掛けながら手を出すと、疲れた顔で手を握ってくれた。
ふふっ、絶対不可侵ルクナ・レド・ノースマキナと友好関係である事を国民に知らしめないとマズイ事態になると悟ってくれたわね。
話したい事が多いし、アルセイアとイチャラブしたいから泊まりたいなー。
願わくばミルル王女も一緒に……




